カレーマン外伝 こだわりのカレーマン
「こだわりのカレーマン」
スパイスカレー 黒毛和牛の牛すじカレー
SPICE SPACE UGAYA●浅草
浅草の観光スポット浅草寺から歩いて5、6分ほど。昔は観音裏と呼んだという奥浅草の一角に、『SPICE SPACE UGAYA』がある。
「スパイスを使っているモノしか出さない。それがウチの唯一のルール!」
そう断言するのは店主の宇賀村敏久さん。彼こそ、巧みなスパイスの使い手としてカレーマニアの間で評判のシェフ。「スパイスコーディネーター協会」の上級資格であるスパイスコーディネーターマスターの資格を持つ達人だ!
「あっ、でもスパイス料理以外は出さないといっても、ワサビも一応スパイスに含めてということで……」
そう照れたように宇賀村さんが訂正すると、厨房からクスッと奥さんの笑い声が聞こえてきた。高校からの付き合いの奥さんも、時に手伝いに入っている下町情緒の残るお店なのだ。
『SPICE SPACE UGAYA』店主の宇賀村敏久さん
浅草で靴屋の三代目として生まれた宇賀村さんは、30歳で父親の店を継ぐ予定だった。
若い頃は、バイトで寿司、居酒屋、割烹と和食の現場で働いた。大学卒業後は、デザイナーとなり、主にCG映像を創っていたという。さて、30歳になって実家を継ごうとするも、靴屋は赤字で断念することに。そこでデザイナーか料理人になるか迷ったが……
「好きなものしか続かないと思った」
そこで大好きだったカレーの道を選ぶ。デザイナーを細々と続けながら、スパイスの勉強に励み、2年かけてスパイスコーディネーターマスターの資格をとった。元来、凝り性なのだろう。その間にどっぷりスパイス沼にはまったのだ。
「大阪のスパイスカレーは衝撃! 発想が自由で驚きました!」
都内のカレーを、研究を兼ねて食べ歩いた宇賀村さんが、熱っぽく語る。
そもそも「スパイスカレー」とは、名前の示すようにスパイスの風味を強調した大阪発の創作カレーのこと。2017年に大阪で注目されると、翌年には全国に波及し、2019年には定番化。瞬く間にカレーの新分野として定着した。
その特徴としては、大阪ならではの自由奔放な発想に基づいている。
元々シェフが本業でないクリエイターの人たちが、パイオニア精神で好き勝手に自分好みのカレーを追及して、小さな店を出店した。そのため、食べ慣れた和出汁が使われているのが大きな特徴の一つ。また、栄養バランスの良い副菜の存在もかかせない。ワンプレートに副菜が一緒に盛られて、見た目が麗しく「インスタ映え」するビジュアルを持っている。これがSNSを通じて急速に普及した理由であろう。
「カレーは食べる薬膳。科学であり医学。作るのにロジカルと感性は必要」
「化学調味料は使わない。スパイスに薬効効果があるのに体に悪いものは使いたくない」
「使っているスパイスは30種類ほど。カレーごとにスパイスの種類・配合を変えてます」
スパイスを語りだすと宇賀村さんの話は止まらなかった。
論より証拠、開店当初から人気の黒毛和牛の牛すじカレーを食べてみた。
まず見た目が繊細で麗しく「インスタ映え」するルックスだ。
一口食べると、コク旨スパイシー! 和出汁を使っているので、トロ〜リした牛すじの旨味が口一杯に拡がり、スパイスの香りが鼻孔をくすぐる。これは旨い! 和のテイストがあるので、初めてでも食べやすい。まさに絶品スパイスカレーだ。
学生時代は和食の現場で働き、スパイスの勉強に励んだ元クリエイターの宇賀村さん。
彼にとって、このカレーは流行りでなどはなく、必然が生んだ完成形の一つにちがいない。
終わり
スパイスカレー 黒毛和牛の牛すじカレー
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