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カレーマン外伝 こだわりのカレーマン

宮﨑 克
カレーマン外伝 こだわりのカレーマン

「こだわりのカレーマン」⑧


 

北インドの伝統的カレー ローガンジョシュ
●「アロマズ オブ インディア(AROMAS of INDIA)」神田須田町

 

忙しい日常に疲れると、ふと旅をしたくなる。

 

思い浮かべる旅先は、中国の万里の長城、エジプトのピラミッド、インドのガンジス川など、古代文明の聖地が多い。そういえば、三蔵法師と孫悟空の一行が目指した聖地は天竺(インド)だった。
同じ気持ちになったインド人は旅先としてどこを思い浮かべるのだろうか?

 

「じゃあ、1年だけ日本に行こうかな」

 

インドの首都デリーの高級ホテルでシェフをしていたアミットさんは、「日本で働かないかい?」と声をかけられて、旅行気分でOKしたという。
日常生活に不満があったわけじゃない。本格的な料理学校を卒業して、インドでも屈指の五つ星ホテルに就職。父親もシェフであり、望み通りの順風満帆な人生を送っていたのだが…
「若かったから、1年だけなら」と思ったという。
来日してみると驚きの連続だった。治安がいい、人が親切、なにより食べ物が旨い。

 

「ワタシ、食べることが好きだから!」

 

インド人は普通生魚を食べないが、アミットさんは刺身・寿司が大好き。トンカツも好物。
日本食の とりこ になった。
「サシミを食べるために小田原へ、ソバを食べるために山梨まで行った」
そう楽しそうに語るアミットさんは、食べ物の話になると止まらない。シェフは天職なのだろう。

 

「好きな街はアキバ(秋葉原)!」

 

もう一つの趣味はゲーム。日本の友だちは「オタクが多い」と言う。
ゲームの母国での休日は、ゲーム三昧、美食三昧だとのこと。
「(日本では)時間がファスト」と感じるアミットさん、「もう一年」「もう一年」と日本滞在が続く。
インド人の奥さんとも日本で出会った。結婚して家族はインドで暮らしている。
しかし、アミットさんは「もう一年」と日本での生活をやめない。

 

 

現在、アミットさんは「アロマズ オブ インディア(AROMAS of INDIA)」でシェフをしている。神田須田町にあるこの店は、北インド料理の人気店だ!
一口にインドといっても広いが、一般に日本人のイメージするインド料理は、北インド料理だ。
論より証拠、この店の「チキンバターマサラ」を食べてみるとそれがわかる。
これぞ、ザ・インドカレー! 誰も知っている旨辛のカレーだ! 
北インド料理の多くは、古代ムガール帝国の流れをくむ宮廷料理が元になっているという。
インドでも高級レストランにしかない希少食材を使った「ブラックチキンカレー」を食べてみたが、宮廷料理由来の珍しさだけじゃなく、とにかく旨かった。
だが、僕が一番心惹かれたのは「ローガンジョシュ」!

 

「『ローガンジョシュ』は500年前の味のままです」

 

そう説明するアミットさんの言葉にまず驚く。
ムガール帝国時代、皇帝が北の避暑地で食べた宮廷料理だそうで、体を温めるために脂肪分や油分がコッテリ入っている。
「これには、特にスペシャルなスパイス『ラタンジョット』を入れてます。たぶん日本ではウチの店でしか使ってないでしょう」
見た目は、どこか神秘的で香りもちょっと独特。食べてみるとそれほど辛くはない。
骨付きマトンを4時間以上トロトロに煮込んだという濃厚な味に感激した!

 

 

食べ終えて店を出た時、満腹感を超えた幸福感に満ちていた。たとえ舌だけとはいえ、500年と6000キロの時空を越えて北インドの宮廷まで旅したのだから。
だが、アミットさんの旅はまだ終わっていない。
「あと1年」「あと1年」を18回繰り返して、今年で来日18年目だという。

 

終わり

 

AROMAS of INDIA 神田須田町

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