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カレーマン外伝 こだわりのカレーマン

宮﨑 克
カレーマン外伝 こだわりのカレーマン

「こだわりのカレーマン」


 

薬膳スパイス3倍! 赤のべっぴんカリー
● ビストロべっぴん舎 お茶の水

 

そのシャバシャバなカレーの美味しさに衝撃を受けた!!

 

「中学生の頃に親に『デリー』(銀座の老舗)に連れていってもらって、衝撃を受けたんです。そのシャバシャバなカレーの美味しさに『こんなのあるんだ!』って。
その後、都内のカレーをほぼ食べつくすほど、カレー好きになりました」
そう楽しそうに語るのは『ビストロべっぴん舎』の志賀弘唯さん。スタイリッシュで知的な感じのシェフだ。

 

大学卒業後、大手企業のサラリーマンになった志賀さんだったが、仕事関係の縁で老舗カレー店復活の手助けをしたという。そこで初めてキッチンに立ち、色々と学んでいくうちに自分でもカレーを作りたいと思うようになった。学生時代に抱いていた夢を思い出したのだ。 

 

 

「カレーだけだと営業的にキツイ」と思い、ワイン好きだったこともあって、脱サラしてまず始めたのが、ワインバー。知人の紹介で、板橋にある店を引き継いだ。
そこで試作カレーを作り始める。50種類ほど試作して、常連客に食べてもらい反応を確かめて、現在作っている4種類のカレーに辿り着く。

 

「本が好きだったこともあって、神保町には強い思い入れがありました」

 

志賀さんは、「神田カレーグランプリ」に出場したいという思いがあり、神保町で店舗を捜して5年がかりで現在の場所を見つけ、待望のカレーショップのオープンにこぎ着けた。そして見事オープン一年目で、グランプリの「マイスター賞」を受賞したのだった。

 

 

さて、店の看板メニュー「赤のべっぴん薬膳カレー」。これには三度驚いた!
「薬膳」=「体に良い」=「だが不味い」という先入観が僕にはあったのだが、
陽炎のように濃厚に匂い立つスパイスの香りに、まず鼻が驚く。恐る恐る一口食べてみると、これが旨い! 薬膳と名のつくもので旨いと感じたのは初めてでもういちど驚く。
ワインで煮込んだ野菜の旨味がスープに溶け込んで、薬膳スパイスとのハーモニーが抜群なのだ。食後、汗がダラダラと吹き出してきたのが、三度目の驚き!
薬膳スパイスの代謝促進作用によるものに違いない。このカレーには普通の三倍量のスパイスが入っていると聞いて、実感・納得した。

 

「この薬膳カレーには、嬉しいエピソードがあるんですよ」

 

ある時知人の女性が拒食症になって、仕事をしばらく休んだ。その間、銀座の漢方店に通って養生していた。その女性が「赤のべっぴん薬膳カレー」の匂いに「これ、私が処方してもらってる漢方胃腸薬と同じ匂いがする!」と驚いたという。

志賀さんが成分を調べたら、スパイスの7割ほどが漢方胃腸薬と一致した。
一年半後、彼女は復職を果たし、月に1、2度「赤のべっぴん薬膳カレー」をライス大盛りで食べにきてくれるようになったのだった。

 

『ビストロべっぴん舎』店主の 志賀弘唯 しがひろゆき さん

 

「こんなふうにお客さんの喜んでくれる反応が秘かな自信になりますね」

 

終始、楽しそうな笑顔で語り終えた志賀さん。
カレーは自由度の高い料理なので、作り手の個性が色濃く反映される。
人も羨む大手企業を脱サラして、少年時代の夢を果たした志賀さん。健康と旨さを両立させた「薬膳カレー」は、仕事と趣味を両立させた志賀さんの生き方そのもののようにも思えた。  

 

終わり

 

ビストロべっぴん舎 お茶の水本店

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