カレーマン外伝 こだわりのカレーマン
「こだわりのカレーマン」
一晩寝かせたカレーはなぜ美味しいのか!?
京風カレーおこしやす●神田須田町
「一晩寝かせたカレーは美味しい」
一般的にはそう信じられているが、なぜ一晩寝かせると美味しくなるのだろうか!?
そもそも本当に一晩寝かせたカレーは美味しいのだろうか!?
東京の路地裏に小京都がある。『京風カレー おこしやす』。
カレー激戦区・神田の須田町交差点付近の路地を入った先にある、京都の小洒落た割烹を思わせるこの店が、一晩寝かせた美味しいカレーを提供するという。
「おこしやすぅ」
柔らかな関西訛りで迎えてくれたのは、店主の鈴木哲也さん。その柔らかな口調には似ず、話は理路整然として面白い。
「高校卒業して印刷屋で働いている時、先輩が交通事故で死んでしまって。自分もいつ死ぬかわからないなら好きなことをしようかな〜って」
そう思い、オーストラリアに旅立った。「実家が寿司屋で一通りの事は出来て。高校の時はファミリーレストランのキッチンにいたんです」オーストラリアではジャパニーズ・レストランとフレンチ・レストランで働いた。オーストラリアで一年、カナダで一年過ごして帰国。
帰国後は、料亭・懐石料理屋・旅館などの様々なところで働いた。野菜ソムリエやスパイス・ハーブ等の免許を会得し、紆余曲折を経て、この店をオープンした。
「この店では、なぜカレーを一晩寝かせているんですか!?」
この疑問を鈴木哲也さんに問うと。
「一晩寝かせるには理由が二つあります」まず理由の一つは、「早起きするのが嫌だから」。
鈴木さんは、経験豊かな懐石料理の作り方でカレーを作っている。
「和食の手法で手間隙かけて作った野菜ソースに、カレースパイスで風味をつける感覚なんですよ。例えば、タマネギは一人前に一個使ってます。そのため、仕込みに非常に時間がかかるので、結果として一晩寝かせることになるんです」二つ目の理由は、実際に一晩寝かせると、具材に旨味が染み込み深みが出るから。
「尖っているのが丸ぁ〜るくなる感じで、スパイスと具が仲よくなるですよ」
そう語るまろよかな笑顔とは裏腹に、鈴木さんの語調は経験と自信に満ちていた。
鈴木さんの話で頭は納得したが、さて舌は──!?
「うん、旨い! 一晩寝かせたカレーだ」
一口食べて大きく頷いたのが「牛煮込みカレー」!
すき焼き用の牛肉を使っているというこの牛の深いコクと旨味は、まさに完熟の味わいを一口で実感できる。舌は理屈抜きに納得した!
『おこしやす』店主の鈴木哲也さん
「そしたら、牛肉を煮込んだ出汁をおかけしましょうか?」
牛煮込みカレーを半分食べたところで、鈴木さんが声をかけくれる。牛丼の汁だくの感覚で、もう一味楽しめるサービス。お好みでご飯に醤油をかけてもいいという。
この店の一晩寝かせたカレーは確かに美味しかった!
それはカレーを一晩寝かせたように、紆余曲折を経て様々な経験を身につけた丸ぁ〜るい店主が作る料理だからなのだろう。
終わり
京風カレーおこしやす
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