原案者・夏原武氏による 連載コラム 【『正直不動産』取材こぼれ話】
【『正直不動産』取材こぼれ話 第7回】
お寺の多い町は…
先日、吉祥寺の某不動産会社を取材した時のこと。多くの賃貸物件がある町で、親子二代にわたって不動産業を続けている社長は、実に温厚な方で、いろいろなことを教えてくれた。
中で、ああ吉祥寺ならではだな、と思ったことがある。
それは、大規模な地主さんがいることだ。戦後の農地改革により小作農から地主となった人だ。広い土地を宅地へと転用し、多くの賃貸物件を所有している。名前を聞けばすぐに分かるほどの存在だという。
そして、もうひとつ。寺が多いこと、そして寺が所有している不動産が多いことだ。お寺さんが多いところは、他にもいろいろある。
例えば浅草。浅草寺の周りをぐるりと取り囲んでいる、商店(仲店ではなく、雷門あたりから)が入っている不動産はほとんどが浅草寺の所有なのである。浅草の夜が早いのは、深夜営業を浅草寺が認めないからだ、という説があったりする。
吉祥寺にしても、お寺さん所有の不動産の場合は、固定されていることが多く、変化・変更が起きにくいらしい。また景観条例もあって高い建物は建てられない。そのために、若い人たちに人気の町ではあるものの、収容可能人数がなかなか増えず、ファミリーになると離れる人も珍しくないのだとか。
まさに不動産は周辺環境に大きく左右されることがよく分かった。
まだまだ続く海外からの投資
某日、またまた親しくしている不動産会社社長と会食した時のこと。同席した社員は在日韓国人の方だった。その方が同席したのは、同社が海外投資家を呼び込むことを考えているからだ。
中国人投資家によるタワーマンション購入などは、結構知られている。基本的に自国よりも安い価格でいい物件が購入できるのが最大の理由になっている。
これは韓国も同じこと。ソウル中心部にあるカンナムやカンプクのマンション価格の高騰は凄まじい。最上位地区と言われるアックジョンになると、10億円20億円の物件は珍しくもない。もはや、ちょっと高収入程度では手が出ない。
それ以外でもソウル中心地区なら2億3億は当たり前。たとえば、東京の湾岸地区、林立するタワーマンションであれば1億前後で入手することも可能だ。自国の半額から3分の1なのだから魅力的なことは間違いない。
コロナが落ち着いたことで、行き場を失っていた海外投資家のマネーが、日本の不動産へと再度(あるいは継続して)向けられているということになる。結果として日本人が購入することが難しくなる可能性もあり、頭の痛いところではある。
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