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原案者・夏原武氏による 連載コラム 【『正直不動産』取材こぼれ話】

夏原武
原案者・夏原武氏による 連載コラム 【『正直不動産』取材こぼれ話】

【『正直不動産』取材こぼれ話 第3回】

今回は、現場の声をいろいろと伝えたいと思っている。作品とは少し違う意見も出てくるが、「現場はこうなっている/こう考えている」を知ってもらいたい。


 

[手数料あれこれ]

 不動産仲介は賃貸・売買ともに手数料ビジネスだ。本編作品中でもたびたび触れているわけだが、手数料には上限がある。賃貸の場合は家賃1か月分が上限で主に借り主が全額払っている。法的には貸し主・借り主双方から合計1か月分をもらうことになっているのだが、その説明はほとんどない。なぜか。
「貸し主が払うことはまずないよね。法的に言えば、片方が納得すれば全額払ってもらっていいって立て付けなんだけど、貸し主にそんな話したら逃げちゃうよ(他の仲介業者に取られる)。説明なあ、基本はしないし、文句言う客もいないね。まあ、例の判決があってから、言う人もいるらしいね。うちは直接出会ってないけど、知り合いのとこではあったみたいだよ。どうしたかって? そりゃあ、簡単よ。1か月払えないなら、うちでは仲介できません、で終わり」(都内・独立系不動産)

 

 本編作品でも取り上げた話なのだが、こればかりは法律だからでは通らないところがある。なぜなら、貸すかどうかは最終的に貸し主の意思によるからだ。手数料を負担させるような借り主には貸したくない、と言われてしまえば、仲介業者としてはそれを受け入れるしかないのが現状なのである。その背景にあるのは、要するに「合意があれば」という例外規定が国交省の告示にあるからだと筆者は思っている。つまり、半分ずつですよ、という決まりだけなら、一方的な負担にはならないわけで、これは決め事に最初から抜け道があることになるのだ。

 

 「まあ、俺の考えだけど、手数料1か月も渋るような借り主は、家賃トラブル起こすんじゃないかな、と思っちゃうんだよね。うちが管理を請け負ってないとしてもだよ、仲介した客が家賃滞納なんか起こせば、貸し主との関係は絶対的に悪くなるからね。借りるときにいろいろ注文つけて少しでも安くあげようっていう客よりも、契約をスムーズに進めてくれる人のが信用できるわけ」(都下・中規模不動産)

 

 安く済むにこしたことはない、と筆者も思うが、気に入った物件であればスムーズに契約したいと思うのも普通のことだろう。「手数料って半分ずつにはならないですかね?」程度を質問してみるのはいいが、無理だったらさっと引いたほうが契約自体はスムーズに進むのもまた現実なのだ。

 

※ ※ ※ 

 

 一方、売買を見てみると物件金額によって変わるのだが、基本的には「物件価格3%+6万+消費税」が仲介手数料になる(400万円以上の物件)。この手数料は売却・購入双方にかかるので、一つの業者が売買を担当すれば、最大で「物件価格6%+12万円+消費税」となる。大手を含め、両方を得るのが成功であり、「両手」と呼ばれている。

 

 「手数料を上限まで求める、両手でやるっていうと、あんたがたは凄く悪いことみたいに言うけどさ、はっきり言って、これやらないと不動産屋は持たないんだよ。世間で思ってるよりずっと利が薄い商売なんだよ。まあ、大手なら本当は下げてもいけるんじゃないかな、とも思えるけど、中小は無理だよ。細かなことは言わないけど、固定費もかかるわけだし。ただ、AD物件(広告料付き物件)でも手数料がっちり取ってるのはどうかと思うけどね。手数料安くやるには、そういう別の収入がないとね。担当者ボーナスなんてのもそういう流れだよ。手数料としては上限超えできないけど、別名目ならできるわけだからさ」(都内・中堅不動産)

 

 本編作品では両手取引やAD物件については、基本としてその問題を指摘している。それは、あくまでも消費者目線、消費者にプラスになることを前提にしているからだ。だが、現実は現実として受け止める必要もあるわけだ(だから裏話に書いている)。

 

 理想を言えば手数料は自由化されるべきだと考えている。そのほうが業界は健全化されていくだろう。

 

※ ※ ※ 

 

[物件の見せ方]

 悪いモノから見せておけば、普通のモノも良く見える。複数の物件を客に見せる時の基本だという。売りたい物件を最初に見せるのではなく、最後に見せることによって、よりいいものという印象を与えられるという「伝統的手法」でもある。

 

 「そりゃ、賃貸だって売買だってさ、見せ方は大切だよ。漫然と似たような物件見せてくとね、考えます、になっちゃうこと多いんだから。借りるも買うも人は迷う訳よ。探せばもっといい物件あるんじゃないか、誰だってそう思うよ。だけどさ、案内したってこっちには一円も入らないわけ。実績あげなきゃ、干上がっちゃうじゃない。決めさせるためにはあの手この手をやるんだよ」(都内・営業マン)

 

 こういう話は深く聞くことが難しい。「あの手この手」は、その人の独自ノウハウであることも多く、第三者、まして筆者のような立場の人間に話すのは「百害あって一利なし」なのだ。
「悪い物件から見せてく? ん、そういうのは昔からあるよね。やってる人はいるでしょ。内見中に電話かけて急がせる? それも昔からある手口だよね~。詐欺師もよくやるよね。枠が埋まりました、みたいに。不動産で言えばさ、一般媒介の(一般媒介契約を結んでいる)物件はいろんな業者が動いてるわけだから、申し込みが間に合わない可能性はあるよね。だって、こっちが押さえてる物件じゃないわけだから。逆に専属専任の(専属専任媒介契約を結んでいる)物件なら、そういうことは起きない。起きないけど、さくっと契約しないとこっちが困る。実は、焦らせるというか、はめ込むというか、決めさせるのは後者なのよ。だから一般媒介の物件なんてのは、すでに決まってるのに案内したり、ポータル載せたりってのが起きちゃうんだよね。おとり物件なんて言われるけど、まあ、簡単に言えば本当に扱いたい物件の引き立て役ってとこだよ」(同)

 

 おとり物件というのは、本来は「好条件・割安」といった物件で、すでに契約が終わっているものを、あたかも未契約のように思わせて客寄せのために使われる物件を言う。しかし、この営業マンが言うように、「引き立て物件」もあるわけだ。

 

 特定の業者しか扱えない物件というのは、よその業者で決まっちゃいました、ということは起きないが、逆に言えば「なんとかして決めてくれ」と業者が思いがちになる、とも言えるわけだ。

 

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