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週刊スピリッツ

2023.10.23

第4回スピリッツ新人王結果発表!!!!

週刊スピリッツ

第380回~第385回スピリッツ賞に投稿された全作品の中で最も面白いマンガを描いた新人作家さんがついに決定! ノミネートされた6作品への特別審査員金城宗幸氏からのコメントを全文掲載!!


 

第380回(1月期)TOP賞

[猿を殺した] 小畠みきやす 東京都・24歳

金城氏講評

面白い。大好きです。「勝手に帳尻、あわせてんじゃねェッッ」このセリフが最高にキレてる。ちゃんと漫画に狂気を込められる作家さんだなと、感激しました。クライマックスの猿を殺しまくるシーン、脳汁出ました。最高最高。もうこの形の、どうしようもないカタルシスを描くのはお手のものだと思うので、次はこれを、どーやったら多くの人が「気持ちいい」と思えるフィクションに変換、昇華出来るかを考えてみて欲しい。誰かの人生に影響を与えてやるという、傲慢さと覚悟を持って、作品を描いて欲しい。あなたがすくい上げたヘドロのような素晴らしい狂気を、オーバーグラウンドで光らせるコトがプロの仕事に繋がっていくと思います。

 

第381回(2月期)TOP賞

[宇宙征服者才々] もるばるざーく 兵庫県・24歳

金城氏講評

お見事。漫画がめちゃくちゃ上手い。キャラものギャグ漫画かと思わせて、グッと泣かせにくる。面白かったです。完成度という意味では今回の中でNo. 1です。自分の絵がどうやったら活きるかを分かってる、高い表現力の作品でした。ただ、絵の破壊力がもう少し足りない。今後キャラもので突き進むなら、とにかく女の子を可愛く描けるとか、表情の発明とか、絵における特殊な武器が必要かも。ここから画力がどこまで伸ばせるかが勝負。漫画を描く能力、エンターテインメントの理解度は抜群に高いと感じるので、絵の可能性を誰かに委ねて、ネーム原作者の道を一考してみるのもアリかなと思いました。

 

第382回(3月期)TOP賞

[押入れ] 堀 大介 埼玉県・18歳

金城氏講評

女の子が可愛い。背景の描き込みに不思議な世界の説得力があって、ゲームの中に入った様な感覚にさせられました。おそらく、キャラクターは可愛い2Dなのに、描き込みが写実的で良い意味でアンバランスだったからかな。そこがとても魅力的でした。ただ、感じたかったハードルの怖さは無かったのが残念。もっとゾクゾクしたかった。人間のエグみや、世界の住人の怖さをもっと表現して欲しかった。絵も心理描写もここからまだまだ上手くなる余地を感じさせます。とにかく描きまくって、可愛い女の子もキャラも化け物も背景も、磨いて欲しい。表現の幅や、描きたいもの、描けるものがもっと広がるハズ。その上で、この作者の不思議な世界観の魅力に引きずり込むような作品を楽しみにしています。

 

第383回(4月期)TOP賞

[錨の日] 葉山 純 高知県・24歳

金城氏講評

アニメを観てる気分になりました。出力のレベルが高すぎる。これは凄い。キャラデザ、タッチの質感、空気感の演出、構図、構成、全てにおいてアニメーション的なアプローチで作られていて、一コマごとのクオリティが多彩で超優秀。その上でここから商品にしていく為に、特にキャラ表現の「漫画的」なアプローチを磨いて欲しいです。表現がアニメの文法なので、決めゴマのキャラ絵がどうしても動いてしまい、キャラクターが印象に残らないのが凄く惜しい。キャラデザや決めゴマをもっとゴリゴリに「漫画的」に、一発でそのキャラの魅力が分かるモノを目指してみて欲しい。アニメの動く画面の中に、漫画のキャラがいるような表現。アイコンとなるキャラ表現を発明出来れば、一気に大ヒットする可能性を秘めた作家だと感じました。

 

第384回(5月期)TOP賞

[ALO] 山本橘平 熊本県・21歳

金城氏講評

こりゃ熱い。少年漫画的な熱さが根底にある作品。崩れた表情、泣きの表情に熱さがあって、背景や船の描き込み方とも相まって、とても面白い画面になっています。構成もしっかりしていて上手い。そして、アロが可愛い。おっさんの絵が上手いのも高評価です。
ただ、ある種のファンタジーな設定だったので、これが現実の物語だとどんなモノが描けるのか、読んでみたいです。それと、おっさんじゃなく、若い男2人とか高校生男子2人とかの熱いバディものも読んでみたいと感じました。猫2匹とかでもいいかも。とにかく魅力的な熱さを持った作家さんだと思うので、それを多くの人に届ける「関係性」を描いていって欲しいです。

 

第385回(6月期)TOP賞

[少年のラブレター] 今橋 涼 京都府・20歳

金城氏講評

男の子の表情が、とにかく豊かで魅力的。森の中の背景の描き込みも、みてるだけで童心を刺激される。ワクワクする。一コマ一コマ、楽しんで漫画を描いている印象で、原石がギュッと詰まった作品だと感じました。細かい事は置いといて、ただただもっといっぱい漫画を描いていって欲しい。可能性を決めつけずに、いろんなジャンル、キャラクターに挑戦して欲しい。この作者はもっと絵が上手くなる。画力を上げると、描けることが爆発的に増える。その先に、何を描きたいのか。何を描けば読者に刺さるのか。プロとして描くものが見つかってくると思います。

 

金城宗幸氏が選ぶ第四回スピリッツ新人王は

[錨の日]

 

葉山純氏受賞コメント

金城先生、そして編集部の皆さま選定いただきありがとうございます。
まだまだ勉強不足ですが、いただいた講評を今後の作品づくりに活かせるよう励みたいです。作品が世に発表されるのがはじめてなので掲載の連絡をいただいた日から不安と緊張でソワソワしています。率直な感想が聞けたら嬉しいです。

新人王に選ばれた本作は月刊!スピリッツ1月号(11月27日発売)に掲載決定!!!!!!! 

特別審査員 金城宗幸氏総評

今回ノミネートされた6作品は、非常に多種多様な作品たちでした。それぞれに個性が全然違って、エネルギーがあって、面白さのベクトルも違うので、読んでてめちゃくちゃ楽しかったですが、めっちゃいろんな脳ミソ使って大変でした…! その中でも新人王に選ばせていただいた「錨の日」は、今回の中で最もヒットに近い作品だと感じました。全てにおいて表現力が高水準で、漫画というよりアニメに近い作品ですが、そこにあとは漫画的なアプローチを加えれば、そのまま売れちゃうんじゃないかと思えるぐらい、ワクワクさせてくれる作品でした。商業雑誌は売れなきゃ潰れるので、デビューや連載じゃなく、売れる商品に1番近いものを選んだつもりです。ただあくまでも現時点での評価なので、他の作家たちが一撃で一気に売れるかも知れません。それぐらい、何がきっかけか分からないのが漫画の面白いところだと思います。でも僕が思うのは、よく出来てまとまった作品より、何か一つでもブチ抜けてるものが読者の心を掴むという事です。新人の皆さんは、僕も含めたプロを一撃で一気になぎ倒して、面白い作品を描いてください。そしてスピリッツに莫大な利益をもたらして下さい。

 

今回ノミネートされた6作品に加え、金城宗幸氏が「新人作家に伝えたいこと」をテーマに語ったSPインタビューを公開中!

>>第四回スピリッツ新人王開催記念 金城宗幸氏ロングインタビュー 前編

>>第四回スピリッツ新人王開催記念 金城宗幸氏ロングインタビュー 後編