2022.10.24
第2回スピリッツ新人王結果発表!!!!
第368回~第373回スピリッツ賞に投稿された全作品の中で最も面白いマンガを描いた新人作家さんがついに決定! ノミネートされた6作品への特別審査員・大童澄瞳氏からのコメントを全文掲載!!
第368回(1月期)TOP賞
[モルグ] 十五征 東京都・24歳
大童氏講評
サイコスリラーなストーリーを簡潔にまとめ上げている。扱う内容には惹かれるものがあり、グロテスクとはいえ見られないほどではない。ハイテンポで進んでいくためキャラクターの心情も二極でスイッチされる印象があり、より丁寧に描かれたら更に読者がのめり込める作品になるだろう。作品の性質上、写実性を身に着けるとよい。写実的な絵にしろという意味ではなく、写実的な絵を心得ている事はこの作者の表現を強化し強みになると感じた。
第369回(2月期)TOP賞
[楽園、それから] 山下かぼ 東京都・21歳
大童氏講評
情景や人物のポーズ等どれをとっても絵が上手い。ストーリー上適切な画を選択できるようになると、さらに空気感で物語を伝えることができるだろう。フキダシの処理などからも目指す表現が垣間見えるが、初見の読者には誰のセリフかわかりづらいという欠点がある。表情も全体的に抑えめの作風と見受けられるので、作者のやり方を殺さずに演出について再考し「伝わる事」を強化するとよい。
第370回(3月期)TOP賞
[デストロイヤー引退] 熱焼江うお 北海道・33歳
大童氏講評
シンプルな画面を崩さずに描き込まれたディティールはよい作家性だ。揺らぎがある絵もフォルムと量を捉えていてめちゃくちゃ上手いが、オブジェクトにメリハリがあると読みやすいとは思う。多くを語らずとも一発でわかるシチュエーションに、展開のセオリーを断ち切る独特のテンポ。爽快さも兼ね備えており高評価。
第371回(4月期)TOP賞
[マーメイの星] となん 大阪府・20歳
大童氏講評
会話やモノローグが表現の核を担っているが画の選択は綺麗にはまっている為、単調に感じさせない作りとなっている。主人公を取り巻く問題は読者に違和感なくすんなり入ってくるが、シチュエーションが類似する名作がある為とも思える。ロケーションが少なく世界が狭く感じる為、労力は必要だが登場人物が生活する環境や土地をもっと描写すると、世界観がより伝わる。
第372回(5月期)TOP賞
[BARK] みくろ陶 東京都・26歳
大童氏講評
状況が物語化していく過程を描けており、ストーリーやキャラクターは全体的に平凡ではあるが、すんなり入ってくる。表情を描くのが上手く、キャラクターの素直な描き分け力は強みだと感じる。モブ・脇役の言動はストーリーの為に都合よく設計されている感が否めないので、主人公に限らず全てのキャラクターの言動がどのような背景から生まれたものなのか掘り下げ作り上げるとよい。
第373回(6月期)TOP賞
[冷たい、頬] んもんも良男 富山県・21歳
大童氏講評
展開のペース配分が巧みで読ませる力が高い。モノローグも多いが心情を場面の設計や表情、ポーズなどでも的確に描写しておりモノローグはノイズではない。読後の満足感はあるが物語の解決が主人公の心情中心に描かれており、ストーリーに影響を与える登場人物の人生がどのようなものなのかは引っかかりだ。
大童澄瞳氏が選ぶ第二回スピリッツ新人王は
[デストロイヤー引退]
熱焼江うお氏受賞コメント
選んでいただいてありがとうございます。信じがたいですが嬉しいです。友人たちからの結婚・出産報告がラストスパートを迎えている中、泣きながら描いてよかったです。ネームを読んで感想くれたみなさんに深く感謝します。
特別審査員 大童澄瞳氏総評
漫画の賞レースは「漫画が描ける」という所がスタートラインだが、そもそもその漫画を描く能力を持っている事が凄い。この『スピリッツ新人王』でもそれを実感した。漫画家も漫画表現については常に手探りの人生だと思うが、私はその分なるべくチャレンジャーの目指している漫画表現を汲み取った上で審査するよう心掛けた。6作品を読んで感じた一番単純な感想は「暗い設定が多いな~」というもので元も子もない。さて、完璧な作品はこの世に存在しないわけだが、例えば審査員や編集者に「セリフに難しい言葉が多用されて難解すぎる」と言われた時に、素直にセリフを平易な言葉に置き換えるのか、それとも背景にイメージを挿入することで難しい言葉を使いながらも読者にすぐ伝わる表現をするのか、言葉を解説してくれるキャラクターを登場させるのか、連載を目指す雑誌を変えるのか等、色々な解決策が存在している。チャレンジャーにはその事を忘れないで貰いたい。審査員や編集者は今手元にある原稿だけで判断する事が大半で、あなたの作家性や曲げたくない表現がどこにあるかをしばしば誤解する。審査員や編集者が感じる作品の読みづらさや疑問点は今後対峙する読者と比較的共有しやすい感覚であり読者代表としてそこを指摘する事はできるが、その修正指示はあくまでも一案であり最終的には作家自身が解決する事となる。評価を受けてそれをどう生かすかはチャレンジャー次第だ。審査員を引き受け作品をジャッジするということは、チャレンジャーの未来を左右する大きな罪を背負う事だと思っているが、私は未熟でもそれを甘んじて受け入れようと思う。どうか今後も創作と成長を見せてほしい。
今回ノミネートされた6作品に加え、大童澄瞳氏が「新人作家に伝えたいこと」をテーマに語ったSPインタビューを公開中!