トップ  >  第1回スピリッツ新人王結果発表!!!! ( 2022/04/25 )
週刊スピリッツ

2022.04.25

第1回スピリッツ新人王結果発表!!!!

週刊スピリッツ

第362回~第367回スピリッツ賞に投稿された全作品の中で最も面白いマンガを描いた新人作家さんがついに決定! ノミネートされた6作品への特別審査員魚豊氏からのコメントを全文掲載!!


 

第362回(7月期)TOP賞

[僕のめがみ] 汐宮 雫 東京都・19歳

魚豊氏講評

甘酸っぱいなんて形容できない、辛酸の青春もあらゆる教室の片隅に存在してます。そういう物語好きです。前半パート、高峯さんの仕草、一挙手一投足に心揺るがされる感じもいいのですが、白眉なのは後半、高峯さんが櫛をはたき落とすところ。そのあと「いらないから」の表情。ベタで言えば、ここは挫折のシーンで、高峯さんの顔は醜悪なものであっていい筈。しかし本作ではそこになんと清々しさを感じる決意の顔。あの顔には拒絶/挫折を演出する側面がありながらも、達成感/清涼感があったのです。そこで気づかされました。高峯さんは高峯さんの物語がある。いや寧ろそれがカノンで、この話がスピンオフだった。あの表情は主役のそれで、彼女の戦い、覚悟。決別。そういう背景が見て取れるものでした。カタルシスシーンだったのです。
状況を一手に反転させる絵が描けるのは素晴らしいと思います。高峯さんは“漫画的舞台装置”から“生きた人間”になった。そして、そこからの、谷原さんから見た高峯さんの回想シーン、最高です。後半に山場が2つあると、面白さが一気に増大するので上手いなぁと思いました。谷原さんにはもう櫛は必要ない。そんな谷原さんを僕は立派だと言いたいです。

 

第363回(8月期)TOP賞

[ヘシオドスの結婚] カイタモノ 東京都・22歳

魚豊氏講評

王道な物語ながら、どこか漂う異質な感じが良かったです。コマ割りやアングルも絵柄がオーセンティックなように見えて、少し違うズレがある。その感じが豪商の息子でありながら飛べないヘシオドスさんを構造的に演出できている。
本作はとても優しさのある良い話で、そういうものも好きです。
が、食卓のシーンなどは、不思議な緊張感があり、この作者は本作以外にも、ガラッと違うサスペンスフルな物までかけるのではないか、という期待を持ちました。違和感、ズレ、みたいなものが出せる人は稀だと思うので大きな武器だと思います。私も見習いたいです。丁寧さと、それ故のある種ピリつきがある作品でした。

 

第364回(9月期)TOP賞

[さよならゆでたまご] 西川陽菜 広島県・19歳

魚豊氏講評

面白いです。とても余韻の残る作品でした。冒頭から、状況説明、キャラ立てがすっきりしてて読み筋を理解しやすいです。
情報のコントロールがうまいと思いました。また、物語にマッチしたイノセントな絵柄でとても好きです。友情パートのエスプリの効いた何気ない会話、飽きさせないカメラアングル、キャラの芝居(作画)どれもセンスに溢れてます。読み返すたびに、凡庸な語彙ですが、何気ない日常をとても愛おしく思えるような作りになっていました、それがこの作品のテーマの一つである、“世界の価値”そのものを十分に表現してる。凄いと思いました。そして終盤、そこからの反転、エンターテインメント的にも作品的にも一気に面白み、深みの出る展開で良かったです。
あのシークエンスは妙にリアリティーを纏ってて、良いです。ラスト、「まずい」というネガティブなセリフで、北山さんとの思い出を特別なものにするというポジティブな意味を演出するアンビバレントさ、グッときました。友達といたから輝く時間がある、報われる失敗がある、美味いと感じる飯がある。しかし友達がいるから、別れもある。タイトル、とても上手くてオシャレだと思います。

 

第365回(10月期)TOP賞

[唇に紅を] 風谷レオナ 兵庫県・21歳

魚豊氏講評

エレクトラコンプレックスの話を書こうと思うのが凄いです。というか初めて読みました。既視感のないものを作る、また作ろうとする心意気はとても素晴らしいし、僭越ながらシンパシーを感じました。
また、戯画的な調味料としてのタブーではなく、こういう生々しいタブーは、私だったら描けないので、勇気と度胸がある方なのだと思いました。その勇気のある人はなんでも描けるので強いです。
更に“そういう話”だと明かされるネタバラシの前に、既に何かこの親子に不穏な空気が漂っていて、初見では「もしかして演出がズレてるのかな?」と思いきや、それこそ手の内だったというオチ。まんまと踊らされました。
怪しげな演出がうまいです。ミスリードは大きなエンタメ要素だと思うので、今後ますますそれが磨かれ、読者に致命傷を与える鋭利さを持つだろうと、胸熱でした。

 

第366回(11月期)TOP賞

[悪食・EAT・YOU] 原作:朝倉 R 沖縄県・21歳 作画:ポテトルス 和歌山県・23歳

魚豊氏講評

少年漫画風の入りから、後半のドライブが素晴らしい。シンプルに全く予想外の展開だったので、いい意味で驚かされました。
序盤の状況説明/設定のある種の紋切り感は、後半の意外性を効果的にするのに一役も二役も買ってると思います。関係の反転に一種のカタルシスが宿ると思いますが、まさにそれがあります。そしてその際、出し惜しみのない2ページの使い方が見事です。
ここで私なら凡庸に“溜め”を作ってしまいそうですが、それを避ける勇気。この決断のおかげでグルーブ感、スピード感が生まれる。テンポというのは面白さを構成する重要な要素です。このテンポで演出が出来た事は自信になるレベルです。
作画も丁寧で、そのお陰もあってとても読みやすかったです。27pもちゃんと怖い絵になっていて、上手くて凄いです。“線”に熱心さと丁寧さを感じました。

 

第367回(12月期)TOP賞

[名前を呼んで] 川松冬花 東京都・30歳

魚豊氏講評

アバンがいいです。一コマ目、一言目のセリフで掴まれる。テンポが優れてます。またそれに共通することと思いますが、とにかく“間”の使い方が上手く、感情に乗り易かったです。タメと解放がよく意識されてると思います。
話自体は相当残酷というか、悲しいのですが、そこまでグロテスクさを感じさせない軽やかな演出や絵柄がとてもいいです。こんなあらすじなのに友情、青春を感じて、ベタにいいなぁという読み味でした。あと表情最高です。「息子の俺を忘れちゃった」はあの1コマだけで成立してるくらいドープな表情だと思います。あとこのセリフ自体もとても良いです、この外し感というか、プリミティヴな言葉選びが、フラジャイルな石崎さんの本音を純度100%で出力してる気がします。このコマがなくても物語は全然成立してますが、このコマがあるのでこの漫画は思い出に残ります。それは名シーンというやつで、そういうコマが作れるのは凄いです。また最後の展開も、そう簡単にいかない人生や人間の複雑さを感じ、良かったです。キャラの髪型も好きです。

 

魚豊氏が選ぶ第一回スピリッツ新人王は 西川陽菜氏に決定!!!

 

[さよならゆでたまご]

 

西川陽菜氏受賞コメント

選定いただき恐縮です。ありがとうございます。魚豊先生に作品を読んで頂けたということが何より嬉しいです。この作品を描くにあたり、エピソードや人物のモデルとなった家族や友人に改めて感謝を伝えたいと思います。

 

特別審査員 魚豊氏総評

全体的に、親(メンター)からの過度な期待、失望、無理解みたいなモチーフが登場する作品が多く。というか全ての作品にその要素があり、興味深かったです。
毒親というのが一つの時代、現代的なテーマなのかもしれないですね。また、必要とされる、役に立つ、人からどう受け取られるか。みたいなテーマも多かったです。ソレもコレも、知覚過敏なSNS時代意識の表れか、はたまた全然関係なく単純に舞台装置としての使いやすさとして起用されてるのか。おそらく後者な気もしますが、こういうのを知る、考えるきっかけになるのはありがたいです。
また、どの作家さんも将来性のある武器を感じ、ワクテカです。自分の長所に自覚的であると諸々役にたつと思います。
更に全作に独自性があり驚きました。それさえあればそれで良いと思います。そんな中でも受賞作の『さよならゆでたまご』はセンス抜群で完成度の高さを感じました。作中だけで閉じず、読んだ後も余韻が残る、そんな開かれた物語には力があります。この作品はそれがあるし、この作家さんはゆくゆくはもっと高みへ行くのではないかと思いました。凄いです。色々と偉そうにすいません、何かと学びの多い機会でした、皆様には私の感想なんてフルシカトかまして次作を描いていただければ何よりです。

 

今回ノミネートされた6作品に加え、魚豊氏が「新人作家に伝えたいこと」をテーマに語ったSPインタビューを公開中!

 

>>第一回スピリッツ新人王開催記念 魚豊氏ロングインタビュー 前編

>>第一回スピリッツ新人王開催記念 魚豊氏ロングインタビュー 後編