トップ  >  書店員さんが作る「俺の棚」!『チェイサー』編 #俺の棚_チェイサー ( 2014/12/02 )
ビッグスペリオール

2014.12.02

書店員さんが作る「俺の棚」!『チェイサー』編 #俺の棚_チェイサー

ビッグスペリオール
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「この漫画、俺なら、私なら、こんな漫画と一緒にオススメする!」
「この漫画が好きな人はきっとコレも好きなはず!」
日々店頭でそんなことを考えながら棚を作っている書店員の皆さんが併読漫画を選ぶ――
"俺の棚"を妄想してもらいました!!





今回のテーマタイトルは、ビッグコミック スペリオールで連載中の『チェイサー』(コージィ城倉)。





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昭和30年代、当代一の売れっ子・手塚治虫に異常な対抗心を燃やす漫画家・海徳光市。手塚の一挙手一投足を追い続け、執拗に真似しようとする海徳を通して、漫画の神様の逸話を描き出す、異色の漫画家漫画!




このタイトルをテーマに棚をつくってくれたのは、芳林堂書店関内店の書店員Aさん。






芳林堂書店関内店:

神奈川県横浜市中区真砂町3-33 セルテ4F

営業時間 平日10:00~21:00/日祝10:00~20:00(不定休)
hhttp://www.horindo.co.jp/






実はAさん、初読で「これはすごい漫画が生まれた!」と感じ、2巻の発売時にはなんと自作の帯までつくって店頭展開したほど! そのときの写真がこちらです。





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そんなAさんは、『チェイサー』をテーマにどんな棚をつくってくれたのでしょうか?






■本当は熱い、文系の戦いを切り口に棚づくり!






手塚を「チェイス(追う)」する海徳の、時に涙ぐましいほどのドタバタした努力が必死すぎて笑えてくる漫画。だけど、その滑稽なほどの焦りは誰でも身に覚えがあるんです。戦後漫画・風俗史として読んでも興味深いし、徹底して手塚治虫が登場しないのも、ニヤリとさせられます。
そんな『チェイサー』を題材にした今回の棚のテーマは「何者かになろうと戦う文系の君へ」。山田芳裕さんの『へうげもの』文庫版9巻の解説で、山田五郎さんは古田織部たち数寄者の姿を「文化系男気」の世界と評しました。体育会系と同じように、文化系にも時に己の命やプライドを賭けた闘争があるのだと。その静かな戦いは、今までジャンプ的運動部マンガの陰に隠れがちでした。しかし、文系の《あなた》を奮い立たせ、勇気づける「文化系男気」マンガ(男子に限らない)は実は、沢山あるのです。今回はそんなマンガをセレクトしました。(Aさん)





『アオイホノオ』(島本和彦/小学館・ゲッサン)



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[あらすじ]

80年代初頭、漫画家を目指す(けど、ほとんど目指しているだけの漫画マニアの)大学生・焔燃を主人公にした、半自伝的(?)文化系青春グラフィティ。あだち充や高橋留美子ら、当時の新鋭作家たちや、大学時代の庵野秀明など実在の作家たちを、恐れを知らなかった大学時代の感性で評しまくるスリリングなぶっちゃけ感が持ち味。

[選書ポイント]

80年代を舞台に、漫画家志望の若者と一歩先を行くライバル(庵野氏ら)を主軸にした内容は、まさに『チェイサー』の弟的作品と言っていいと思います。読むとやたらと元気が出るので、クリエイティブな仕事につく人には是非読んで欲しい作品です。実写ドラマも最高でした!







『秋津』(室井大資/エンターブレイン・Fellows!)



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[あらすじ]

愛想を尽かした妻に出て行かれ、父ひとり子ひとりで暮らす漫画家・秋津薫。息子のためと言い張って(自分のために)ゲーム機を買ってきたり、すぐに拗ねて会話を拒絶したりする子どものような父・秋津と、そんな父を反面教師にしたのか、どこか大人びた息子・いらかの、ダメで強烈な日常コメディ。

[選書ポイント]

文系人間がダメになるとこうなります(笑)。ダメな父親にしてダメマンガ家の秋津の気持ち、すごくよく分かる。ストレスで疲れた時にオススメしたい一作。私も作中で描かれているように、『寄生獣様』を懐中電灯で照らしたい。







『花もて語れ』(片山ユキヲ/小学館・ビッグコミックスピリッツ)



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[あらすじ]

上京したばかりの新社会人・佐倉ハナは、ある日偶然、小説の朗読教室に足を運ぶことになる。黙読でなく、人に聞かせるために音読することで、表現者として小説に関わるとともに、イントネーションや演技によって小説の解釈にも踏み込むという、朗読というジャンルの奥深さを提示。演劇と評論のミックスともいえる、熱い文化系漫画。

[選書ポイント]

これこそ文系の戦いの真骨頂。マンガの表現の幅広さに唸らされる。朗読を通じて世界を塗り替えていく瞬間に、ぜひ立ち会って欲しい。読む時はハンカチをお忘れなく。嗚咽と号泣の嵐です。







『千歳ヲチコチ』(D・キッサン/一迅社・ゼロサムオンライン)



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[あらすじ]

『共鳴せよ!私立轟高校図書委員会』で図書委員会というカルチャーを題材にしたD・キッサンが贈る平安日常コメディ。快活でちょっと変わり者の姫君・チコと、どこか冷めた部分のある貴族・亨を中心に、平安時代の貴族たちの生活が描かれる。平安文化を基調にしつつ、セリフなどは現代のフレーズなども多く、予備知識なしでも作品に入りやすい。

[選書ポイント]

貴族文化花開いた平安時代に、貴族のお姫様なのに虫が好きで、立って、走るチコ。独特の感性を否定する事なく、温かく見守る周囲。ゆるふわ日常というには激しいギャグや小ネタも満載で毎回楽しいです。平安時代を新しい目で見られるので、歴史や文学が苦手な人や、女性にもオススメしたいですね。







『へうげもの』(山田芳裕/講談社・モーニング)



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[あらすじ]

千利休亡き後には「天下一」と言われるまでになった茶人・古田織部の生涯を描く、文化系戦国絵巻。武人社会での出世や処世と、自身が執念を燃やす「数寄」の世界の追求の狭間で奮闘する織部の姿は、戦国ものであると同時に、出世と趣味、信念、欲望の間で揺れ動く現代のサラリーマンものに通じる部分も。。

[選書ポイント]

戦国という時代に、なぜ「数寄」という文化が花開いたのか? 古田織部や千利休といったその立役者たちは己のプライドをかけ、新しい価値観を世間に認めさせようと戦った。織部の数寄に対する時に滑稽なまでの執着は、『チェイサー』の主人公・海徳の執着と根っこは同じではないでしょうか。何かを認めさせたい、伝えたい、という欲求に対する命がけの記録を、ぜひ読んで頂きたいです。








「文化系」に賭ける男(女)たちの熱い戦いを切り口にした今回の「俺の棚」、いかがだったでしょうか? 百人一首の世界を描いた『ちはやふる』(末次由紀/講談社・BE・LOVE)など、文化系スポ根と呼ばれるジャンルも増えていますが、今回の棚はさらに「生き様」的な部分にスポットが当たった「文化系の戦い」が描かれた作品が揃っています。熱くなるものから笑えるものまで、気になった作品を見つけてぜひ手に取ってみてください。




そして、今回もテーマになった『チェイサー』のコージィ城倉先生から描き下ろしイラストをいただいています!





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Twitterでは「自分なら『チェイサー』でこんな棚をつくる!」という投稿を募集しております。「#俺の棚_チェイサー」のハッシュタグといっしょにぜひぜひ呟いてみてください。






書店員の皆様へ

今回の企画でコージィ城倉先生が描き下ろしたイラストを使用したPOP台紙を、書店さん向けサイト「コミックえもん!オンライン」にて配布しております。ぜひダウンロードして『チェイサー』の展開用にお使いください。
POP台紙ダウンロードはこちらから








「俺の棚」バックナンバー






(テキスト:小林 聖)

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チェイサー 1 コージィ城倉
チェイサー 2 コージィ城倉

関連リンク
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【初出:コミスン 2014.12.02】

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