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貧乏は「罪」なのか「罰」なのか? シュールでヒリヒリするアンハッピーエンド・コメディ『ちーちゃんはちょっと足りない』/【連載】深読み新刊紹介「読みコミ」(6)

2014.12.02

発売されたばかりの作品、いま注目したい作品、まだまだ押したい作品......
コミックを長く「店頭」からながめてきた視線で選ぶ、元・まんが専門店主の深読み新刊紹介。

読みコミ

第6回 『ちーちゃんはちょっと足りない』阿部共実(秋田書店刊)


2012年『空が灰色だから』(1~5完結・秋田書店)で注目を集めた作者の長編新作。ちーちゃんは外見も中身も小学生みたいな女子中学生。成績は悪いし言葉遣いもほころんでいるし判断力も幼いけど、存在そのものがプリミティブでカワイイ。学校では保護者みたいに接してくれる同級生の旭ちゃんや優等生の奥島くん、そして同じ団地に住む親友のナツがいて、家では高校生のお姉ちゃんがちーちゃんの面倒を見てくれる。ちーちゃんの日々の言動のほとんどはこの4人に影響されている。
ある日、ちーちゃんはクラスの女子が集めて保管していた現金3000円を盗み、うち1000円をナツにあげてしまう。ナツがリボンを買うお金を痛切に欲しがっていることを知ってしまったことと、お姉ちゃんの言葉「たまには何かナっちゃんに恩返ししなきゃね...」が耳に残っていたからだ。
このふたつの記憶がちーちゃんの頭の中で短絡する。ふたりの家庭はどちらも貧しい。貧乏は人の思考や反応をネガティブにさせる罠だ。ちーちゃんとナツはその罠にはまる。話は思いがけない方向へと転がり、共犯意識にさいなまれるナツの疑心暗鬼が膨らんでいく。
作者は登場人物それぞれの感情の奥まったところを鋭角的にえぐり、執拗に辿り、否定と肯定の落差をむき出しに描いてみせる。危ういバランスで安定していた主旋律がコード進行から外れてはまた戻っていく、そんな癖の強い楽曲を聴いているような感触。やさしさと残酷さがループして作り出す不穏な空気、そこに漂うある種のリアリティが読者の心を掴んで離さない。この作品でのちーちゃんは、良くもなく悪くもなく楽しかったり悲しかったりムカついたりする日常の薄皮を剥いで、この世界のネガを見せてくれる"巫女"のような存在にも見える。その意味では、主人公はナツなのかもしれない。
貧乏は"罪"なのか"罰"なのか?
外見や頭が良いわけでなく、性格が良いわけでなく、体力的に優れているわけでなく、将来性があるわけでなく、これからもあまり幸せではないかもしれない、そんな普通の存在に与えられたせつない時間が不安げに横たわる、ちょっとシュールでヒリヒリするアンハッピーエンド・コメディ。

ちーちゃんはちょっと足りない

『ちーちゃんはちょっと足りない』阿部共実(秋田書店)


(文・南端利晴)

【初出:コミスン 2014.12.02】

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月曜日の友達 1 阿部共実

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