トップ  >  装丁から見るマンガの魅力!「ジャケ萌え!」6冊目/ジェニアロイド小林満さん・その3『ダンス・ダンス・ダンスール』 ( 2016/09/10 )

2016.09.10

装丁から見るマンガの魅力!「ジャケ萌え!」6冊目/ジェニアロイド小林満さん・その3『ダンス・ダンス・ダンスール』

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「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画「ジャケ萌え!」。今回のシリーズでは、ジェニアロイド 小林満さんのデザインワークを通して、小林さんのデザインにあるパワーとは何か? を探っていきます。




いま、一番アツいバレエ漫画である『ダンス・ダンス・ダンスール』。汗! きらめき! まさに青春! 作品を構成する要素がすべてカバーに詰め込まれています。シンプルながら物語のすべてが表れた装丁を、小林さんはどのように考え作っていったのでしょうか。





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ダンス・ダンス・ダンスール



幼い頃に姉の影響でバレエに魅了された村尾潤平。しかし、父の死により「男らしくならねば」とバレエを諦めてしまう...。ところが中学2年生になった潤平のクラスに転校してきた美少女・五代都が、彼に「一緒にバレエやろうよ!」と誘い...。潤平の中の星が再び爆ぜる!




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──最初の段階でどのようなデザインにしようと考えましたか?






ジョージ朝倉作品のなかでも、これまでにないくらい王道な作品なんですよ。彼女のそれまでの作風のイメージを一新するような作品。だから僕もそれに応えるべくストレートでわかりやすいデザインにしました。内容もデザインもまさに熱血少年漫画。




──表紙を見ていると熱血であると同時に、星モチーフがいきてキラキラしてきます。すごくまばゆい感じ。






作中でも装丁でも随所に星モチーフが登場しますが、星は主人公・村尾潤平の才能を象徴しているのではないかと思うんです。もしかしたら誰にも伝わってないかもしれないけど(笑)、僕はそう考えています。




星は、フランス語で「エトワール」といいます。バレエ団の階級制で最も高い位のことをプリンシパルといいますが、パリ・オペラ座ではプリンシパルのことを「エトワール」っていうんですよ。作中の星にはそういう花形ダンサーとしての意味もこめられているんじゃないかなと。





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第1集カバーの提出案。最終的に現行のものに落ち着いた







──恋にバレエに、一度夢を手放そうとした少年が再び戻ってライバルと共に成長していく。まさに少年漫画ですよね。






最初は『ダンス・ダンス・ダンスール』というタイトルではなく、作中にも登場する言葉ですが『爆ぜる星』だったんです。でも、これまでの作品イメージとはガラリと雰囲気を変えたいということで今のタイトルになったそうです。とにかく直に読者の心に届くように......という想いがこめられています。装丁もそのお手伝いができるようなものにしました。





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こちらはお蔵入りになったロゴ案






──これまで小林さんのお話を伺っていて、どれも根本にあるのはやはり"直球勝負"なのだと改めて感じました。






タイトルも、装丁も、ストーリーも全部まっすぐな作品です。僕も難解なことは何ひとつしていません。基本的に、デザインはシェイプしていくことだと思っていますから。そう思うようになったのは、過去に写真集のデザインをした時のカメラマンの何気ない一言がきっかけかもしれません。




「自分の撮った写真はファインダーの中で完璧に成立してるんだけど、その写真が本にレイアウトされると、フィルムと本はサイズ比率が違うからトリミングされちゃって、おまけにごちゃごちゃ文字も入ったりして、自信のあった写真のはずが、すごくヘタに見えてしまう時がある。逆に、イマイチだと思っていた写真がすごく良くなって嬉しくなる時もある。写真を生かすのも殺すのもデザイナー次第だよね?」って。




それを聞いて、ああ! まったくそのとおり、責任重大だと思いました! それからもうあまりゴチャゴチャ考えず、シンプルにまずメインビジュアルを活かすことを第一に考えるようになって、そうすると余計なデザインがそぎ落とされていくんです。マンガの装丁も同様に、この単行本のサイズに作家さんのイラストをどう落とし込んで、どうタイトルを入れて成立させるか? ホントそれだけの考え方でデザインしています。






ジャケ萌えMEMO

小林さんの話には「直球」「まっすぐ」「シンプル」など、共通のキーワードがあります。その裏には、過去のお仕事から得たことが大きく影響していたのです。「とにかく多くの読者に届くように」という作者の想いも、その漫画がどのような作品なのかも全てひっくるめてミニマムにした上でお届けする。小林さんの職人技を垣間見ました!







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『ダンス・ダンス・ダンスール』第3集は9月12日発売!







「ジャケ萌え!」6冊目 [その1][その2][その3][その4][その5]




(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/








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「ジャケ萌え!」5冊目『しまなみ誰そ彼』【その1】 【その2】 【その3】

「ジャケ萌え!」4冊目 【ベイブリッジ・スタジオに聞いてみました!】
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「ジャケ萌え!」1冊目『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』【cozfish/祖父江慎・鯉沼恵一】
 【前編】 【後編】





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ダンス・ダンス・ダンスール 1 ジョージ朝倉
ダンス・ダンス・ダンスール 2 ジョージ朝倉

関連リンク
作品詳細『ダンス・ダンス・ダンスール』
スピリッツ公式「スピネット」


【初出:コミスン 2016.09.10】

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