トップ  >  第1回 スペリオール 新人作家大賞結果発表!! ( 2025/05/23 )
ビッグスペリオール

2025.05.23

第1回 スペリオール 新人作家大賞結果発表!!

ビッグスペリオール

第1回スペリオール新人作家大賞 結果発表

大賞出る!! 佳作5作!奨励賞2作! 努力賞4作!逸材溢れる大豊作回に!!

審査員┃押見修造氏

 

大賞 賞金100万円+本誌掲載+連載権(単行本1巻分保証)+単行本化権獲得!!

本誌12号掲載!!(5/23発売)

『さとみくん/りゆにおん』

国木田くにお 22歳

■ストーリー

漫画家志望の栖沢は、中学時代に「陽キャ」な里見くんと友達になり、彼の一言で本格的に漫画を描き続けた。しかし、成人式で再会した里見くんはなんだか不穏な様子で……。二人の友情と無常を描く青春譚。

⚫︎押見修造氏講評

面白かった。人の心の、自分で制御できない恥部・秘部を描くことに長けている人だと思います。里見くんのノート、その後のキレ方はとても良かった。一歩引いた、客観的な視点のバランスも独特の味になっている。同時に少しもどかしさもある。最後、もう少し余韻があっても良いのでは、と思いました。もしくは逆に46ページでブツッと切った方が。

 

佳作 賞金20万円+本誌電子版掲載

『セルロイド』

生稲明日香 17歳

■ストーリー

リサイクルショップで働く主人公は、いつも仮面をつけて顔を隠している。それは、かつて顔についてのいじめを受けた、から……? シンプルな筆致で描かれる叙情譚。

⚫︎押見修造氏講評

漫画としてはまだ上手ではない(何が描いてあるか、喋っているのが誰か、などがわかりにくいという意味で)ですが、ラストの笑顔一発で持っていかれました。独特の凄みと殺気がある。それは表現したいことを持っているからでしょう。主人公が改心したり成長したりせず終わっていくのが良かった。重要なシーンはもっと大ゴマを使ってもいいのではないでしょうか。

 

佳作 賞金20万円+本誌電子版掲載

『海の君』

おくやままるか 22歳

■ストーリー

同級生たちを「下民」と見下す、ななまがり君。ただ、理想とする「彼女」だけは違うと思っていた。しかしある日、そんな彼女の見てはいけない場所を目撃してしまったななまがり君は……。情感あふれる、夏の日の恋のワンシーン。

⚫︎押見修造氏講評

絵は抜群です。めちゃくちゃ上手い。鉛筆の使い方がとても良くて嫉妬しました。絵の力だけで読ませられました。一方、ストーリーはちょっと弱い。色々な「ヘン」さで魅力をもたせてありますが、作者は「天然」ではない。「天然」ではない人が、この絵で何を描くか、というのが大事なことだと思います。もっと「ヘン」に頼らないものも読んでみたいです。

 

佳作 賞金20万円+本誌電子版掲載

『Q』

GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE 26歳

■ストーリー

漫画のヒーロー「Qマン」が大好きな高校生のユキ。ある日、実写版「Qマン」に出演する俳優が殺傷事件を起こし、「Qマン」は世間から非難され……。

⚫︎押見修造氏講評

魅力あるいい絵だと思いました。かっこよく、かわいく、表現力がある。ストーリーはかなり力技ですが、絵の勢いと合わさって独特の説得力があると思います。が、ちょっと物足りない。武器が少し足りないと思いました。もっと突き抜けたビジュアルショック、読者の無意識に直接突き刺すような、何かもっと。それが足されると、突き抜けるような気がしました。

 

佳作 賞金20万円+本誌電子版掲載

『ケーブル人間』

杉谷ユカリ 30歳

■ストーリー

周囲の人間がケーブルの化け物に見えてしまう女子高生・針。それが遠因となり学校でも家庭でもうまく生きられない。唯一、ネットで仲良くなった友人とオフ会へ行くが……。

⚫︎押見修造氏講評

面白く読めました。絵とセリフで人物を浮かび上がらせていて、いいなと思いました。ケーブル人間のビジュアルも面白い。ただ何かもどかしく感じるのは、演出的に強調されているところと、本質的に重要なところがちょっとズレているのではないかと。鬼塚さんが人間の姿に見えるところが、私は一番のクライマックスだと思いました。でもあまり重要に描かれていません。そこがバチッとはまったらもっと面白く感じるかもしれません。

 

佳作 賞金20万円+本誌電子版掲載

『スズキ・イン・ゾンビーランド』

守口リョウ 25歳

■ストーリー

お金に困って、最底辺バイトであるゾンビ駆除で働くことになったスズキ。先輩のモズと初めての駆除に向かうが、行った先には大量のゾンビが待ち受けていて……⁉︎

⚫︎押見修造氏講評

絵の技術があり、丁寧に描いてある。見開きや大ゴマの使い方やリズムが上手だなと思いました。ですがゾンビ物として新しいところはあまりない、と感じてしまいました。ゾンビが好きなのか、ホラーが好きなのか、キャラを描きたいのか? 「漫画として成立している」その先の特異なものが読みたいです。

 

奨励賞 賞金10万円

『ニューライフ』

溝口回

⚫︎押見修造氏講評

ディティールがよく考えられていて面白かった。リアリティー、説得力がありました。絵もバランスが良く、演出もタイト。読みやすいのですが、かなりギュッと詰め込まれているので、もう少しページを使ってゆったり描いても良いかもと思いました。この方ならではの味、ひっかかりがあればもっと良かった。

 

奨励賞 賞金10万円

『死ぬのが怖い!』

横山陸渡 23歳

⚫︎押見修造氏講評

絵がとてもいい。線が軽くてかわいい。車や深夜の道、山の中の川、など情景の描き方がいいです。人物の造形もいい。ただ、作品自体の意味、テーマというか、が薄い。主人公の「死ぬのが怖い」という恐怖についてはあまり掘り下げず、友情の話であり、ちょっとした非日常への冒険譚でもあり、子供時代への郷愁も混じって、どれにも焦点を結ばない。それならそれで、日記のような描き方もあると思いますがそうでもないので、読者としては混乱してしまいます。そのあたりが整理されたら、とても良くなるんじゃないかと思いました。

 

努力賞 賞金1万円

『ペンさきリンク。』

芝井和慶 24歳

『老人の見た夢』

かくの虎彦 63歳

『その星の恩愛』

立草柚陽 22歳

『サンパチと太陽』

田中ひと 27歳

 

編集長総評

第1回ビッグコミックスペリオール新人作家大賞は大賞作が出るとともに佳作5作、奨励賞2作、努力賞4作と大豊作となりました。
力作ぞろいの僅差で審査に苦労しましたが、新連載権付きの大賞作は国木田くにおさん『さとみくん/りゆにおん』となりました。審査員の押見さんが、登場人物にこの一作では表現しきれていない何かを感じると期待感を示されたのが印象的でした(インタビューページをぜひご一読ください)。
人間の描き方に伸びしろや奥行きを感じたということだと解釈しましたが、作家の才能に賭けて連載デビューしてもらう賞の趣旨に合致するものです。各作品の講評は記事をご覧頂き、また多くの投稿者の皆様に担当がついたと思いますので感想を直接聞いて頂けたらと思います。散歩して、コンビニ弁当を食べて、夜お酒を飲んで今日も何も描けなかったと思いながら1日が終わる。デビュー前、押見さんもそんな日々の中から自作を描いていったそうですが、逆にそんな日々だったからこそ、自分と向き合い人間について掘り下げることができたのではないかとも思います。
何もない1日だからこそ、身近に起きた自分の感情を捉えやすい。日常を大切にして頂きたいと思います。そんな日々を自力で作品に繋げられる方もいれば、どうすれば作品に繋がっていくのかが見えない方もいると思います。そんな時はぜひ編集部への持ち込みを(自力で大丈夫な方は迷わず投稿を!)。
編集者との対話、打ち合わせによって描きたいものへの理解が深まり作品に繋がることがあります。スペリオールは丁寧に作家と向き合い、その方らしい作品に繋げたいという編集者が一番いる編集部だと自負しております。第2回もたくさんのご応募をお待ちしております。

 


>>第1回 スペリオール 新人作家 大賞 審査後インタビュー 押見修造氏