週刊スピリッツ
2018.11.01
祝・9年ぶり無職! カレー沢薫・輝きかけの人生コラム「薫の小部屋」第33回更新!
週刊スピリッツ
<【むしょく 無職】一定の職業のないこと。>
一般的に仕事をしていない人のこと「無職」と言いますが、広くは、学生や主婦を含むこともあり、使う人や場面によって異なります。
会社員からプロ無職になった、カレー沢的「無職とニート」論をどうぞ!
◆ ◆ ◆
今回のテーマは「無職とニート」だ。
「どっちも同じだろ」と思った奴、その通りだ、気に入った。家に来て妹をファックしていい。
だが、それは「仕事してる奴」の感覚だ。都会出身の奴が「一駅くらい歩けばいいじゃん」と、田舎の人間に言うくらい驕り高ぶっている。腐女子と夢女を「オタク同士なら仲良くできるでしょ」と同席させるくらい無神経だ。
つまり、仕事してない側としては、自分が無職か、それともニートかはとても重要なことなのである。
無職とニートの線引きは、実はとても簡単だ。「年齢」である。
34歳までの仕事してない奴は「ニート」で、それ以上は「無職」なのだ。
よって、私の歳で「ニート」を名乗ってしまうと、吹き出物を頑なにニキビと呼ぶ若ぶったババアと思われかねない。
「痛い無職」と思われないように、微妙な年齢の無職はそこに気を使わなければならないのだ。
自分で名乗る時はもちろん、相手に「ニートですか?」と言われた時も「やだ、ニートに見えます?」などと色めき立ってはいけない。ただの社交辞令だ。
さらに、「逆に無職とニート、どっちに見えます?」というクソ面倒くさい質問返しをするのも論外である。
むしろ、35歳以上になると迷わず「無職」と言えるので楽であり、逆に34歳以下の方がどう名乗るべきか迷う。
こう見えて私は無職になるのが9年ぶりで、前に無職になったのは20代半ばだった。
非常に難しい年齢である。20代前半なら「ニート」で十分だが、20代半ばで「ニート」を名乗ると「いつまでも女の子ぶってるなよ」と、同じような謎の怒りを買いそうな気がする。
また、「ニート」というのはチャラついた印象があり、「無職」と言った方が働かないことに対し真摯に向き合っている感じがする。
生まれながらの陰キャというのは、「あのチャラチャラした連中と自分は違う」という思いだけで自我を保っているのだ。
しかし、「ニート」と「無職」は内容は同じでも比重が違う。名乗った時に「重くなる周囲の空気」のキロ(kg)数が全然違うのだ。ニートの方が遥かに軽い。
「無職」と言うと、周りの空気が重くなり、自分もその重さに「自分の状況はそんなにやべぇのか」となってしまう。
よって、当時の私は「無職」と言いたいところを割と「ニート」と名乗っていた気がする。
若さゆえの弱さ、過ちである。
「自分を『ニート』と言っていた黒歴史」を経て今、「『無職』と堂々と名乗れる自分」がいるのだ。
『猫工船』第1集 試し読み
『ニコニコはんしょくアクマ』第1集 試し読み
『ヤリへん』第1集 試し読み
連載コラム「薫の小部屋」バックナンバー
今すぐ無料で試し読み!
猫工船 2 カレー沢薫
猫工船 1 カレー沢薫
ニコニコはんしょくアクマ 1 カレー沢薫
ヤリへん 1 カレー沢薫
関連リンク
スピリッツ公式
モバMAN
『猫工船』作品詳細ページ
『ニコニコはんしょくアクマ』作品詳細ページ
【初出:コミスン 2018.11.01】
カレー沢薫,スピリッツ,ニコニコはんしょくアクマ,モバMAN,性少年健全化少女マンガ計画,月刊!スピリッツ,無職,猫工船,薫の小部屋,連載