トップ  >  ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル 第10回青年漫画賞結果発表 ( 2024/03/19 )

2024.03.19

ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル 第10回青年漫画賞結果発表

賞金総額239万円!
ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル第10回青年漫画賞結果発表!!

「希望を失わないラスト」と絶賛の浦沢直樹賞ほか…

ゲスト審査員に浦沢直樹氏を迎え、大幅リニューアルした第10回青年漫画賞。
数多くの応募をいただきました。ありがとうございました! 編集部、審査員審査などを経て、浦沢直樹賞1作、編集長賞2作、入選1作、佳作1作が選ばれました!

 

【浦沢直樹賞 賞金100万円+掲載権】

[終末放送局]霜村ミウ(大阪府)

ビッグコミック7号203ページより緊急掲載!!!!!

ストーリー

終末世界でニュース番組を作る主人公。相棒は、撮影の間だけ正気に戻る心を病んでいる和田キャスター。誰かが見ていることを願いながら放送し続けていると…⁉

浦沢直樹氏評

朗らかな終末モノに反骨精神を感じる!
  素晴らしい。絵、シナリオ、構成力がしっかりしており、そして何よりキャラクターにブレがない。いくらでも暗くできる終末モノだが、それを朗らかに、明るいトーンでまとめたところに反骨精神を感じる。希望を失わないラストもよい。ひとつだけ注文があるとすれば、ネズミは一貫して冒頭のようにリアルな描き方にしてほしかった。

ビッグ&オリジナル編集部評

高評価の声多数‼
 「終末モノではありますが、見たことのない設定に感じられて、次作にも期待が持てました」「独自の世界観を描こうとする気概を感じました」「世界観もキャラクターも、もう少し整理できたら、グッと伸びると思います」

 

【ビッグコミック編集長賞 賞金50万円+掲載権】

[死神と話す女]達磨かえる元帥(大阪府)

ビッグコミック6月増刊号(5月17日発売号)に掲載予定!

ストーリー

行く先々で殺しに遭遇してしまう志木は、優れた推理力を持つ女子学生。ある夜に起こった殺人事件でも、その推理力で解決を試みるが…

ビッグコミック 村上正直編集長評

「読みやすさ」と一口に言っても、なかなか獲得できるものではありません。コマ割りやセリフ回しによってついつい、読者が漫画に“耳を傾けて”しまう…既にその才能を手に入れている作家だと感じました。そしてどこに連れて行かれるのか分からないままの読者を、いろいろ想像させながら最終地点まで導いていく。次に何を語ってくれるかに期待をこめて。

浦沢直樹氏評

 絵、シナリオ、構成力、ともに見事にプロ級の技量なのですが、いかんせん内容の着地が陰惨。賛否両論分かれるところだとは思いますが、これらをコントロールしてエンターテインメントとして成立させるのもプロに求められる技量。着地だけ変えて違う読後感になるような、改訂版を読んでみたいです。

 

【ビッグコミックオリジナル編集長賞 賞金50万円+掲載権】

[25 years old]村上香(東京都)

オリジナル5月増刊号(4月12日発売号)に掲載予定!

ストーリー

雨の降る日、10年ぶりに会った新田と石山。ふたりは25才。新田は「25になったら、脳の能力は低下する一方だ」と言い出し…

ビッグコミック 荻野克展編集長代理評

 得も言われぬ魅力が漂っています。冒頭から引き込まれます。これは漫画作品にとって非常に大切なことだと考えます。そして、短いページ数の中に、先をめくらせる緊迫感が充満しています。瑞々しい感性が感じられます。ラストに未完成な印象を感じるという評が多かったので、次作では終わり方により注力してほしいです。 

浦沢直樹氏評

 うーん、惜しい! 絵はとてもいい、構成力もある。しかし、この展開を望む人はほとんどいないでしょう。このあとどうなる? と思ったらここで“終わり”。’60~’70年代にはこういうのもアリだったかもしれないですが、漫画は進化しています。9ページ目以降、別バージョンを作ってみてほしい、マジで!

 

【入選 賞金20万円+掲載権】

[ハンゲショウ]雨野小夜(京都府)

ストーリー

仕事で失敗して、彼氏に八つ当たりして、現実逃避。生まれて初めて仕事をサボって、あてもなく電車に乗って、知らない駅に降りた先で出会ったのは…

ビッグ&オリジナル編集部評

「表情がよい。独特のリズムをこの先も大事にしてほしい」「独特の美学があり、力があると思います」「長いためか、ここぞの絵の使い所が分散されてて印象が散漫になってしまったと思いました」 

浦沢直樹氏評

 絵に対する興味がとても伝わってきます。そのため雰囲気がとてもよい。でもその雰囲気に読者より先に作者が溺れてはいけません。その雰囲気のよさに囚われるあまり、噓の話で読者を翻弄するという展開にしてしまったのかもしれませんが、この噓が実は噓ではなかったら、雰囲気モノでは終わらないすごいドラマになっていたのでは? と思えてなりません。残念!!

 

【佳作 賞金10万円+掲載権】

[境界線アルゴリズム]移世キリ(和歌山県)

ストーリー

妻に捨てられ、会社を首になった瀬戸は、酒を飲んだ勢いで、飛び降り自殺をする。数日経っても、成仏できず、〝幽霊〟になってしまい…

ビッグ&オリジナル編集部評

「後半からグッと絵が良くなる。伸び代に期待しています」「決めゼリフや見せゴマにもっと力がほしかった」 

浦沢直樹氏評

 絵は達者。すぐにメジャー界でやっていける絵だと思います。話もスムーズ。スムーズではあるのですが……。個人的にこの作品の死生観がどうも軽すぎるように感じます。死後がこんな感じなら死に対する恐怖などなくなってしまう。恐らく、この「死に対する恐怖」がないぶん、作者の思いが伝わってこないのでしょう。このような哲学を日々考えることも、漫画家への道のひとつだったりします。

 

【奨励賞 賞金3万円】

[ラヴィアンローズへようこそ]木村駿(宮城県)

浦沢直樹氏評

 この方の絵は描けば描くほどうまくなると思います。問題は人(キャラクター)の捉え方。花屋さんの女性が、冒頭と16ページあたりでは、とても同一人物とは思えません。これは作者にとって都合よくキャラクターを動かしているからに他なりません。人というのは頑固で、そう簡単に作者の思い通りには動きません。そこにドラマ作りの難しさや楽しさがあります。たくさん人を観察してみてください。

 

【奨励賞 賞金3万円】

[骨で茶を沸かす]川田ワカ(長野県)

浦沢直樹氏評

 ご本人がもっとうまくなりたい、と思われているなら、努力すればきっとうまくなるはず。問題はここに描かれている友達関係や、骨のお茶を飲むという行為を、作者が異常だと思っているのか、普通のことだと思っているのか。それ以上にこの話に対して、作者がどう思っているのかが伝わってこないということ。次回作はもっともっと、あなたの願いや思いを込めて描いてみては?

 

【奨励賞 賞金3万円】

[二人の写楽]梅本真竹(東京都)

浦沢直樹氏評

 意欲作であることは買います。しかし一番大事な二人の感情がちゃんと描かれていないため、彼らに思い入れができない。恋愛モノは特に、読者が主人公の感情に寄り添った時初めて成功すると思います。写楽という題材に気を取られすぎたかな? 短いページでも感情が伝わる構成力を身につける。これは漫画にとても大事なことです。

 

総評

「この成立感は新しい」と読者に思わせられるか。

浦沢直樹氏

 なかなか良作が揃ったと思います。絵の技量は皆さんそれぞれ高く、即プロでやっていけるような方も多かったです。
 ストーリーもいろいろな発想があり、冒頭から引き込まれる作品が多かったのですが、やはり難しいのが着地の仕方ですね。どんな突拍子もない作品でも、「成立している」と思わせるのが漫画家に求められる大事な技量であり、「この成立感は新しい」と思わせることが、これからの時代を切り拓く漫画家に求められるものではないでしょうか。
 通例なら暗く描かれがちな終末モノをキャラクターの力で朗らかに描いた『終末放送局』に何か力強い反骨精神を感じ、今回は浦沢直樹賞に推しました。
 今、この世界で起きていることを自分はどう捉えるのか考えながら日々漫画を描く。そんなことが漫画をよりふくよかなものにするのではないか、と思う、今日この頃です。

 

ウイークポイントを補完する特訓に励んでほしい。

ビッグコミックオリジナル 荻野克展編集長代理

 たくさんのご応募をありがとうございます。リニューアルした「青年漫画賞」は、おかげ様で大盛況となりました。賞を受賞された8作品は、いずれ劣らぬ個性派揃い。そして、惜しくも今回受賞を逃した作品の中にも、光る才能が数多くありました。今回受賞された皆さんは、漫画編集歴27年の私から見ても、太鼓判の実力派です。受賞作では、それぞれのストロングポイントを十二分に発揮されていると感じました。この先は、ぜひヒット連載を目指して、ウィークポイントを補完する特訓に励んでください。その際、担当編集者の指摘に耳を傾けていただくのも有効です。
我々編集部員は、才能の原石である皆さんと読者をつなぐ懸け橋となるために、全力で頑張ります。思う存分の力を発揮して、まだ見ぬ「新しい世界」で、思いっきり読者を楽しませてください。

 

担当編集の意見を参考に自分だけの「武器」探しを。

ビッグコミック 村上正直編集長

 さらなる才能との出会いを切望して、第10回を機に大リニューアルを敢行した「青年漫画賞」。期待以上の応募数と作品の質でした。リニューアル後第1回の審査委員長を引き受けていただいた(ありがとうございました!)浦沢先生の名を冠した「浦沢直樹賞」を受賞した『終末放送局』。その不思議なタッチと雰囲気の中、たった2人(と一匹)のキャラクターを生き生きと描いてみせて、納得の受賞です。また「ビッグコミック編集長賞」は迷いましたが、“語り”の力が抜きん出ていた『死神と話す女』を選ばせてもらいました。他の入賞作品もそれぞれ、期待値が上がる才能ばかりだったと思います。プロ漫画家を目指す上で自分の「武器」は何なのか…担当となった編集者の客観的な声も是非参考にしてもらい、さらなるステップアップを目指してください。最後に次回第11回にも更なる才能が集ってくれることを切に願ってます!

 


 

>>【第11回青年漫画賞は5月31日締め切りで応募スタート!