カレー沢薫・輝きかけの人生コラム「薫の小部屋」第24回更新！

週刊スピリッツ

今回のテーマは「2.5次元」です！
次元の狭間の男子を前に、カレー沢先生は...!?

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今回のテーマは「2.5次元」についてである。

2.5次元、とは、ちょっと奥行きが狭い人間の事ではない。文字通り、2次元と３次元の間だ。
そう聞いてまず想像されるのは、漫画などを原作にしたドラマ、ミュージカルや舞台であろう、私が去年はまったゲーム『刀剣乱舞』も舞台化され、大好評のようだ。
2.5次元は、漫画やゲームの原作ファンと俳優ファン両方が興味を持つだろうし、さらに原作ファンがそれをきっかけに俳優ファンになったり、俳優ファンが原作ファンになったりもするだろう。つまり、お互いのジャンル的にもウィン－ウィンの関係と言える。
だが中には「俳優ファンの、にわかが入ってきた」などと快く思わない人もいるようだ。しかし、何事も新規参入者がいないと廃れてしまう。
「茶道部員募集　初心者大歓迎」と言ったら、モヒカン肩パットの人間がジープで畳部屋に大挙してきた、ということもあるかもしれないが、最初は誰しもルールを知らないものなので、門戸を最初から閉ざしてはいけないと思う。「茶道はジープから降りてやるものだ」と教えてあげれば、きっと降りてくれる人の方が多いはずだ。降りない奴はもう黙って秘孔を突いて爆発させてやればいい。
私などは、ちっちゃな頃から２次元で、触るもの皆テカらせた、ベタベタハンドのオタ女なので、俳優には全く詳しくないのだが、自分の好きな漫画やゲームが舞台化されたと聞けばやはり見てみたいと思う。

しかし、世の中には私が想像しなかった「2.5次元」商品もあるようだ。
簡単に言うと、俳優が、2次元にいそうなキャラやシチュエーションを演じている、というものらしい。大事なことだから二度言うが「２次元のキャラ」ではなく「２次元にいそうなキャラ」である。つまり「ドラゴンボールの悟空」といったキャラではなく「ドSな先輩」や「キュートな小悪魔後輩」とか、乙女ゲーをやったら必ず一人はいそうなタイプを乙女ゲーにありそうなシナリオで演じているのだ。
人命より大事なことなので、三度言うが、俳優は特定のキャラクターを演じているわけでなく、あくまで、２次元にありがちな設定のキャラやシチュエーションを演じているのだ。
その俳優ファンが買うのはわかる。しかし、これを乙女ゲーファンが買うだろうか。仮にそれが2000円だったら、私はもうツェーセン出して、２次元のイケメンがわんさか出てくるソシャゲの11連ガチャを回す。もしくは、もうゲーマン奮発して、出張ホストに「刀剣乱舞の、へし切長谷部のなりきりプレイお願いします」と土下座する。
2次元と３次元の融合はいい。しかし、３次元様がお前ら２次元の所まで降りて来てやったぜ、みたいなのはダメだ。
オタクは決して３次元の代替えとして２次元を愛でているわけではない。「２次元に入れ込むのは３次元の異性に相手にされないからで、本当は３次元の方がいいんだろう？」みたいな物を出されると、瞬時にバイオゴリラと化し、あたりを血の海にするので注意が必要なのである。

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【初出:コミスン 2016.02.29】

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