トップ  >  「ジャケ萌え!」4冊目 【ベイブリッジ・スタジオに聞いてみました!】佐藤千恵さん編 ( 2016/01/05 )

2016.01.05

「ジャケ萌え!」4冊目 【ベイブリッジ・スタジオに聞いてみました!】佐藤千恵さん編

jaketmoet_title.png

読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画が「ジャケ萌え!」です。

20151225_jacketmoet_1.png

ベイブリッジ・スタジオ

1988年設立。コミック、雑誌、書籍、CD、DVD/Blu-ray、グッズ、宣伝物など多岐に渡るデザインを、総勢25名のデザイナーが手がけている



デザイナーの日常や裏側など、気になるあれこれを聞いてみる「ベイブリッジ・スタジオに聞いてみました!」シリーズ2回目は、佐藤千恵さん。
佐藤さんが装丁を担当した『ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田!』は、ライオンなのに気弱な新入社員・ライオン田と、彼を囲む人々のコメディです。

佐藤さんに、作品の魅力と装丁についてお聞きしました!

20160105_jacketmoet_1.jpg

『ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田!』石神しし



20160105_jacketmoet_2.jpg

ライオン田くんのたてがみ、モフりてぇ



――作品を読んで思ったことは?



一言でいうと、なごみます。
タイトルをみたらすごいギャグ漫画と思いきや、ライオン田くんのかわいさにやられました。

――ライオン田くん×やわらかな色のカバーが印象的ですね。



ゆるかわいさを目指しました。そしてこの面白いタイトルが目立つように......。
かわいさがほしかったので、手描きロゴ+まるっこいロゴにしました。
作家さんや担当さんとも打ち合わせをして、1巻目はライオン田くんのオドオドした雰囲気が出るように引きめで、2巻目はモフモフ感がでるようにアップめにしました。

――もしもライオン田くんが後輩デザイナーとして入社してきたら、佐藤さんはどう思いますか?



ぜひ、もふもふさせていただきたい! そしてたくさんご飯をおごりたいです(笑)

――今後の目標があれば教えてください!



紙や、加工についてもう少し勉強しなきゃなと思っています。
そしてもっと色々な作品の装丁に携わりたいです。

――仕事をする上で大切にしていることは何ですか。



打ち合わせをする時に担当さんと、どういう方向で売りたいか、この作家さんの打ち出すべきポイントはどこかなど、細かく話すようにしています。それが担当さん、作家さんたちとピタッと「これ!」ってなった時が楽しいです。
私自身、コミックスを毎月たくさん買うので、やっぱりすてきな装丁をされるデザイナーさんに憧れます。
私もそういう装丁ができるように努めたいです。


★ジャケ萌えMEMO★


この作品の装丁でポイントとなるのは、やはりタイトル! 佐藤さんもタイトルを目立つようにしたかったと答えているように、タイトルそのものが魅力的だとイメージも膨らませやすくなるのではないでしょうか。
パッと見は「ライオン田!」が目立つのですが、実は「ほんとに」の数をカウントしやすいデザインになっているのがイカした演出です!




ここからは、前回に引き続き若手デザイナーの方々にお答えいただいたアンケートをご紹介。「マンガのデザイナーさんは普段一体どんなことを考え、感じているのかしら...」の疑問に答えてもらいました!

[4]デザイナーの楽しさは何だと思いますか?


・自分が担当したものが実際店頭にならんでいたり、いろんな人の目に触れるところです。「それ、私がやったんだ!」って心の中で思います(笑)
・自分が作ったものをたくさんの人に見てもらえる所でしょうか。出来上がって店頭に自分が関わったコミックスや雑誌を見たときの達成感は計り知れません......。



自分が作ったものが大勢の人に見られる重みもありますが、一方で人に見てもらえる喜びも。このお仕事ならではのやりがいです!


・どうやったらかっこよく可愛く見えるか、とか読みやすいかなど考えながらデザインをして、デザインができた時に感じる「やりがい」が「達成感」だと思います。
・作家さんの原画が見れるところと、あとやっぱり物をかっこよく見せる方法を考えたり、思いついたりした時、実際にモノになった時の感動はやっぱり代え難いものがあると思います。



自分が求めた形になった! それ以上のものに仕上がった! という手応え。きっと、スポーツにも似た爽快な瞬間です。

20160105_jacketmoet_3.jpg

作業机はパーテーションで仕切られています。壁面にメモを貼れたり便利そう



[5]もし「好きな漫画家の単行本を担当していいよ!」と言われたら、誰の名前を挙げますか?


・高橋留美子さんの昔の作品の完全版。昔自分が夢中になった漫画のリメイク版をやってみたいです。


・志村貴子先生......♥


・弐瓶勉先生です!


・山下和美先生


・もけおさんという漫画家さんです!pixivのwebコミックで連載されている方ですがコミティアなど参加されていた頃から絵も話も可愛くて大好きな方です。



自分の人生に影響を与えた漫画家の名前を挙げる人もいれば、その魅力を活動初期から知っていた作家の名前を挙げる人も。どちらもすごく見てみたい。

[6]「予算は無限大!」 どんな紙を使って、どんな印刷/加工をしてみたい?


・金の箔押しは絶対やります。小口染めをして、表紙を切り抜き加工して本体表紙のイラストを見えるようにして、本文も週刊誌のように紙替えしてインクもページによって(例えば扉は蛍光オレンジつかったり)変えたいです。あとトレペ帯もかわいいな~と思ったので帯はトレペにしたいです。モリモリ装丁したいです。



小口染めは個人的に好きな加工のひとつ。モノとしての本の存在感がぐんと上がって引き締まるというか。金の箔押しも豪華さがアップしてわくわくしますよね!

・高い和紙を使った装丁とかやってみたいです。
・箔押し、エンボス、UV加工。製本がしたいです。ハードカバーのちょっと背伸びしたやつ。NTスフールみたいに手触りが不思議な紙でも何か作ってみたいですね。名刺とか。



思い返せば、和紙を使った装丁はこれまでお目にかかったことがないです。いつかそういった装丁の本にも出会いたい......。

[7]ベイブリッジ・スタジオの選考で印象に残っていることは?


・面接で「千葉に住んでいる」と答えたら、「家からディズニーランドまでどのくらいで行けるの?」と聞かれたのがすごく印象に残っています。



ベイブリッジ・スタジオの採用ではディズニーまでどれくらいの時間で行けるかが重視されます(されません)。


・SNS上で募集しているのを見つけて。質疑応答で「お酒はのまれますか?」と聞かれて「過去にお酒でトラブルがあったのかな......」と深読みしてしまい、どう答えれば正解なのかと悩んだ記憶があります。お酒、大好きです。



面接だと何でも勘ぐってしまう気持ち、わかります。たぶん本当は深い意味なんて無くて、なんとなく聞かれただけなんですよね~。


・デザイナー求人サイトで見つけました。面接選考時に隣に座った面接官の1人を見て「涼しげで美人な方だなぁ~! 緊張する~!」と思っていたら、入社してからその方が自分の上司である事に驚きました(この情報は上司本人に一度もお話しておりません)。



【重要情報】ベイブリッジ・スタジオには涼しげな美人デザイナーがいる。

[8]好きなものについて、なんでもいいので教えてください。


・今年の夏に初めて夏フェスに行ってから、邦楽ロックを以前にも増して聴くようになり、中でも04 Limited Sazabys、go!go!Vanillas、Shiggy Jr.に最近はハマってます! 04 Limited Sazabysでオススメの曲は「swim」で、三ツ矢サイダーやポカリスエットのCMに流れていそうな印象。ボーカルのハイトーンボイスが特徴でこれがまた良い! go!go!Vanillasの「エマ」は朝の通勤に聴いてたい一曲!PVの女の子が可愛い。ついでに言うとボーカルの顔が好みど真ん中(NICO Touches the Wallsのボーカルに似てる)。Shiggy Jr.は「サマータイムラブ」がとにかくオススメ!ボーカルの池田ちゃんの声がもうべらぼうに可愛い!(川俣注:すみません! 以降は省略しました!!! 本当にごめんなさい)



この文章から伝わるでしょうか......熱量が!


・一卵性双生児のキャラクターが好きです。篠原千絵先生の『海の闇、月の影』が双子を好きになったきっかけでした。最近だとヤーノシュ・サース監督の『悪童日記』が衝撃でした。原作が持つ世界観と双子の再現力が凄かったです。



双子だからこそ描ける独特の対立や家族愛があると思います。子どもの頃は『ミラクル☆ガールズ』を読んで双子に憧れ、『海の闇、月の影』を読んで「いいことばっかじゃないんだな...」と思った記憶が。


・学生のときからずっと声優さんが大好きです(俗にいう声優オタク)! なかでも、『ガンダム00』を見てから神谷浩史さんがずっと好きで、昔はよくイベントにも行っていました(遠い目)。神谷さんの人柄やお芝居など全てが尊敬に値するものばかりです......。夏にやっていた『監獄学園』のアニメの神谷さんがそれはもう最高で「やっぱツッコミ役に適任なのは阪口大輔さんと神谷さんだわ~~~!!」と心底思ったものです......(恍惚)。流行廃りや入れ替わりの激しい業界なためか、生き残るためにプロ意識が高い方が多いという点でも、声優業界は追いかけるのには魅力的です。



TVシリーズの『監獄学園』は声優のお芝居もアニメーションも原作の良さが全て画面に描かれていて最高でしたね!! 毎回とにかく笑ってました。神谷浩史さんは何を演じても素晴らしいです。浪川大輔さんも素敵な役者ですが、あの作品ではほとんどゲホゲホ言っているのみだったのが「役者の無駄遣い」でした。もちろん褒め言葉です!


・ここ半年くらい毎日吉本新喜劇を見ているのですが、まだ生の新喜劇を見たことがないので、いつか生の新喜劇が見たいです。



お仕事も忙しいかと思いますが、まとまった休暇がとれるよう応援しています! 吉本新喜劇休暇がとれますように......!


★ジャケ萌えMEMO★


正直、このアンケートを実施した時は「みなさん忙しいから回答が集まらないかもなぁ......」なんて心配していました。
が! たくさんの興味深い回答、ありがとうございます!




回答を見ていると、みなさん公私ともに「漫画やアニメが好き」。この仕事をしていれば、キツいことや思うようにいかないことも多いはず。けれどそこで「漫画もアニメももう見たくない」とはならず、好きな気持ちを持ち続けたままお仕事をしている。そんなみなさんに萌えました!
次回は、中堅デザイナーのみなさんの回答をご紹介します!

「ジャケ萌え!」4冊目 【ベイブリッジ・スタジオに聞いてみました!】
[黒木香編][佐藤千恵編][吉村勲編][小林美樹代編][伊波光司編]



(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/



「ジャケ萌え!」バックナンバー



「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】
 『白暮のクロニクル』編 『重版出来!』編 『機動戦士ガンダムサンダーボルト』編 インタビュー編

「ジャケ萌え!」2冊目『わたしの宇宙』【chutte】【前編】【後編】

「ジャケ萌え!」1冊目『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』【cozfish/祖父江慎・鯉沼恵一】【前編】【後編】

今すぐ無料で試し読み!
ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田 1 石神しし
ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田 2 石神しし

関連リンク
やわらかスピリッツ
『んとにほんとにほんとにほんとにライオン田』

【初出:コミスン 2016.01.05】

ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田!,やわらかスピリッツ,ジャケ萌え,ベイブリッジ・スタジオ,佐藤千恵,石神しし,連載