2013.11.28
独占公開!! 人気デザイン事務所の舞台裏全部見せます!!
このカバーデザインがどうやって出来上がるのか見てみましょう。
単行本のデザイン作業、全部見せます! 前回の記事では、41歳にして初単行本を出す、るなツー先生がカバーイラストを完成させるまでに、デザイナーさんや編集者とどんなやり取りをして、どんな試行錯誤を繰り返すのかレポートしました。今回は、その後の単行本作業、カバーデザインや帯のコピーを検討する過程で、デザイナーさんがどのようなお仕事をしてくださるのか、見てみましょう。
前回は、このイラストが出来上がるまでをお見せしましたね。
帯や裏表紙のコピーを考えよう!
カバーイラストが出来上がると、編集者はデザイナーさんに会う前にまず、帯のキャッチコピーや表4(裏表紙)の内容紹介文などを書きます。弱い媒体の新人の1巻目、帯のコピーをどうするかは重要です。少しでも手に取ってもらう可能性を高くするために、るなツーさんの経歴をある程度前面に出すという事はあらかじめ決めていましたが、帯でどの程度大きく扱うのかは迷いどころでした。帯全面に太めの書体でドカンと打つのか、細めの手書き風書体でさりげなく入れるのか、あるいは、表1(いわゆる表紙の事です)側には普通の内容紹介コピーを入れて、経歴の事は表4側に書くべきなのか? あまりにも経歴を大きく打ちすぎると「作家の経歴を利用している」とかいらぬ反発を買いそうです。それに、押し付けがましいと、かえってお客さんが離れていくかもしれません。かといって、コピーを控えめに打ちすぎても、店頭で気付いてもらえない可能性があります。迷ったのでモバMANの編集長やスピリッツの同僚など、いろいろな人に意見を聞いてみましたが、皆、意見はまちまちでした。モバMANの編集長は「表1には普通のコピーを入れて経歴は表4に書くべき」という意見。こういう場合、編集部によっては編集長の意見が自動的に決定案になる事もあるのですが、ウチはリベラル(笑)な編集部なので「最終的にはお前とデザイナーさんで話し合って決めろ」という事になりました。権限を最大限委譲していただいて、ホント有り難い限りです。
結局、依頼の約束の日までに考えがまとまらなかったので、大々的にコピーを打ち出したものと控えめなもの、2通りのラフを書いてデザイナーさんの事務所に向かいました。B事務所のKさん...いや、単行本には実名が書いてあるのでこちらも伏せ字はやめますが、ベイブリッジスタジオの黒木さんにご相談したところ「全面的に打っちゃっていいんじゃないですか?」とのご意見。なるほど、心強いご意見で、私の心も決まりました。その他、全体的なデザインの方向性やイメージをご相談して、バトンは黒木さんに手渡されます。
デザイン案を見ていろいろ迷おう!
依頼から1週間強、黒木さんからデザイン案が届きました。事務所によっても流儀は異なりますが、1巻の場合はだいたい3〜4通りのデザイン案を出していただいて検討するのが相場だと思います。また、カバー、表1が確定しないと目次や総扉、帯などの方向性が決められないので、まずはカバー、表1だけを検討します。
この場合は、以下の4案が届きました。
どれも素晴らしい出来ですが、ひとつに決めなければいけません。一番王道のデザインはAですが、普通な気もします。Bはおそらく一番絵が上手に見えるパターンでしょう。Cは、最初見た時は正直「ないかな?」と思っていました。人物が中央から外れていて、顔が一部切れているのも相まって、安定感がないように思ったのです。Dはややロゴが読みにくいですが、中央に顔があり、バックも白っぽく加工してあって人物が浮き出しています。正直、最初はこれが一番気に入っていました。 ところで、カバーデザインを考える時は帯をつけてどうなるのか、を考えないといけません。今回も、帯を想定したデザイン案があわせて送られてきていました。 いかがでしょうか? 帯を入れてみただけで、全体のバランスが微妙に変わってきた事がおわかりいただけるかと思います。Bは、中途半端に足元が切られている気がして、自分の中で帯のない時よりも優先順位が下がりました。 逆にCは、帯を入れた方が安定感が増して、グッとよくなった気がします(あくまでも自分の中で)。 さらに、1巻目のデザインを検討する時はプリントアウトを実物大に引き延ばして切り見本を作ってみるという事も行います。こんな感じです。 不思議なもので、こうしてみると一層Cのデザインが魅力的に見えてきました。逆にAやBは絵が小さくてパンチに欠けるような気がします。 ここで、るなツー先生にもデータを転送して意見を求めました。先生は「やはり、自分の絵は寄り気味にして顔を大きく見せた方がいいと思う」とのご意見。候補はCかDに絞られました。 さらに、机の上に上記の切り見本を並べてスピリッツ編集部員の意見を聞いたところ、なんと全員が初見でCを指差すという事態に。タイトルの入れ方はCがカッコいいもんなー、という事で、カバーデザインはCで行く事になりました。検討した結果を黒木さんに伝えて、背や表4のデザインに入っていただきます。全体の方向性が見えているので、ここからはスムーズに作業が進みました。 こちらが、カバー全体の展開図。 こちらが我々が「表紙」と呼ぶもの。いわゆる「カバー下」です。 コピーの入れ方をあれこれ迷っていた帯も完成しました。 これにてカバー、表紙、帯の3点セットが完成です。デザイナーの黒木さんから確定したデータをいただき、共同印刷さんに入稿すれば1週間ほどで「色校正」が出てきますので、担当者、編集長、デザイナーさんの3人で(場合によっては作家さんも)確認して責了すれば、カバー周りの単行本作業は終了です。 以上のような工程が、店頭に並ぶほぼ全ての単行本で行われている訳です。何となく、で単行本を選んでいたあなたも、「このデザインはどういう意図か」「自分だったらどうデザインするか」「最近は、どういうデザインがはやっているのか」「頭にこびりついて離れない帯のキャッチコピーはないか」などに注目すると、内容だけじゃない新しい楽しみ方が見えてくるかもしれませんよ...... (担当:モバMAN編集部・有井大志) 超注目の『女子のてにをは』1集は、11月29日(金)発売!!
【初出:コミスン 2013.11.28】
るなツー,モバMAN,女子のてにをは