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週刊スピリッツ

2013.11.20

36年の人生で一度も自炊したことが無い中年ライターが、料理漫画の再現に挑戦!! 『くーねるまるた』の白飯(後編)

週刊スピリッツ

人生で初めて作ったごはんを使って、お茶碗のご飯粒を数えてみた   今週のスピリッツ51号『くーねるまるた』をお読みになられたでしょうか? ポルトガルから来た食いしんぼー娘・マルタさんが「お茶碗1杯のごはんに、何粒のお米が入っているのか?」を疑問に思って、1粒1粒ていねいに数えていきます。最終的に、お茶碗1杯に入っていた米粒は、なんと3673個! それを彼女は3時間もかけて、全部数え上げたのでした。     くーねる2_s     イラスト2


流暢な日本語で、お茶碗のご飯粒を「3673」と数え上げたマルタさん。


  では、実際にお茶碗1杯のご飯粒を数えてみるとどうなるのか? マルタさんの数と一致するのでしょうか? 36年間、一度も自炊したことのないライターが、生まれて初めて炊いたお米を使って、本当に1粒1粒ご飯粒を数えてみました!   お茶碗1杯のご飯粒は、いったい何粒なのか? 前編の「36年の人生で一度も自炊したことが無い中年ライターが、料理漫画の再現に挑戦!! 『くーねるまるた』の白飯(前編)」では、試行錯誤のあげく何とかご飯を炊くことに成功したボク。 とりあえず改めて、自己紹介! ライター・石川キンテツ(36歳)。一人暮らし、独身。 このサイト「コミスン」に参加しているスピリッツ編集部のA氏から、「マルタさんのように、お茶碗のご飯粒を数えてほしい」との依頼を軽いノリで受けたのが運の尽き。雑談の中で、これまでの人生で、一度も自炊をしたことがないことを話したら、いつのまにか企画が脱線! ご飯粒を数える前に、炊飯器をなぜか自腹で購入し、ご飯を炊くまでの物語――を書くことになってしまったのだ。 さて今回は、ようやくお茶碗のご飯粒を数える企画にチャレンジ。はたして、漫画と同じ結果になるのか? それとも...。   お茶碗1杯は約150グラム。いったい何粒あるのか? まずは最初に、お茶碗1杯分を計量! というのも、お茶碗でも大きさによっては、ご飯の入る容量が全然違ってくる。そうなると、米粒の数も変わってしまうからだ。 ネットで調べると、平均的なお茶碗1杯は150グラムくらい。マルタさんのお茶碗も普通の大きさに見えるので、自分のお茶碗にも150グラムのご飯を炊飯器から入れてみた。   1画像 計量機_s 


お茶碗の重さが160グラムなので、ご飯の重さは310-160で150グラムになる。


    お茶碗1杯のご飯粒カウントスタート!     2画像 茶碗&味噌汁の器_s 


右のごはんを1粒ずつ左の器に入れて数えていくマルタ作戦! さて、その結果は?


      後編イラスト1_s 


好奇心から、ご飯粒を数えはじめてしまったマルタさん。


  お茶碗に150グラムのご飯が入ったところで、さっそく米粒のカウントをスタート! マルタさんの方法にならい、箸でご飯をすくって、1粒ずつ味噌汁の器に置いてこうとしたのだが...。いやはや、これがホントにもう大変。まず、箸に乗ったご飯のかたまりは、まだホカホカのため、ぬめり気があって、1粒1粒をはがし取るのが難しい。左手の指で1粒だけ取ろうとしても、2粒や3粒一緒にくっついてしまうのだ。     3画像 お茶碗&ご飯のついた 


上の漫画と同じ方法で、ご飯粒を数えていったのだが...


  それでも、なんとか1粒ずつ米粒をはがして、味噌汁の器に置こうとすると、今度は指にくっついて離れない。恐るべき粘着力。もう、こうなったら器に貼っていく感じで1粒ずつ数えていく。 夜の11時過ぎから始めて、30分くらい経っても、まだ50粒くらいしか左の器に移せない状況。 日付が変わって、夜中の0時30分。ようやく100個まで数えることができた。 100粒を数えるのに要した時間は、1時間以上! しかも、途中で電話やメールが来たりすると、「あれ53まで数えたっけ? う~ん、54だったけな?」みたいな感じで数が分からなくなったりして...。結局、器に乗っている米を1から数え直さないといけない事態が何度も発生する。1粒目から最後まで数え上げたマルタさんは、相当な集中力の持ち主だ。       後編イラスト2_s 


100粒まで、余裕で数えてしまうマルタさん。


  4画像 器_s100粒 


たった100粒で音を上げるライター・石川キンテツ


  てか、上の写真を見てほしい。これで100粒なのである。マルタさんが数えたお茶碗1杯の量は計3600粒以上。1時間で、このくらいしか数えられないと36時間以上かかってしまう計算だ。 もう、無理だ~! 甘いと思われそうだが、これだけでも相当な労力を使っているのは、やった者しか分からないだろう。いや、ホントに!     作戦変更! 黒いボードに米粒を貼りつける。   時刻は、夜中の1時前。このままでは絶対に終わらない。単に指先だけを使う単純作業に見えるかもしれないが、体力も集中力もハンパなく必要とする。しかも、自分は12時間後には別の仕事があるので、それまでには終わらせないといけないのだ。 マルタさんは手先が器用だが、自分は不器用。同じ方法では分が悪い。もうこうなったら奥の手だ。念のためホームセンターで買っておいた、黒いボードの上に乗せる作戦に変更! たぶん、こっちの方がやりやすいはず。   5画像 ご飯150個_s 


黒いボードの上に、ご飯を乗せていく。最初からこっちにすれば良かった。


  マルタさんのやり方は、あっさりあきらめ、今度はテーブルに、黒いボードを置いて、その上にご飯を乗せていった。1ラインの米粒を30個に決めておけば、途中で数を間違えることもない。とはいえ、米粒のベトベトしたぬめりは相変わらずだ。箸で一掴みした中から1粒ずつ取るのは至難の業。 それでも何とか頑張って、まず1時間で150個まで数え上げた。さっきよりは若干スピードアップ。しかし、お茶碗を見ると全く減ってる気配が無い。あ~...「絶望」とは、きっとこのことを言うのだろう。 時計は夜中の2時を指している。ご飯粒を数えはじめてから約3時間だ。マルタさんは、3時間で約3600個を数え終わっているのに自分は150個という現実。これ、本当に終わる時が来るのだろうか? 一回、A氏に相談して、できなかった場合の落としどころを決めようと決意。間接的にでも、無理そうなことを伝えなければ死んでしまいそう。あわよくば、「できるところまでで、いいですよ~」なんて言ってもらえないかな...。   とりあえず、途中経過の報告としてA氏に、3時間でこれだけしか出来ていないことと、上の150個まで並べたボードの写メを添付してメールをした。 そしたら、たちまち電話がかかってきた。 「写メ、見ましたよ~! これ見栄え的に面白いじゃないですか~! 最高!! ぜひ頑張ってください!」 あ...ありがたき激励のお言葉(泣)。 こっちが、「3時間で、まだこれだけですよ。ちょっと無理じゃないですかね~」と振っても、「いやいや、何千個も並べたら、すごいことになりますよ!」と聞く耳を持ってくれない。 A氏の辞書に「ギブアップ」という言葉はない様子。自分としては米粒1000個くらいまでは何とかするつもりだったが、実際やっている身として完成の絵が全く見えてこないのである。 ライターになって、初めてくらいのものすごい試練がやってきたようだ...。     米粒300個!     6画像 米粒300個_s   それから約40分後、300個まで達成! お茶碗を見ても、まだまだ減っている気配がない。いったい何粒入っているのだろう。もう、いちいち考えないで、やっていくしかない。ただ、黒いボードに慣れてきて、少しずつカウントが早くなっていったのがせめてもの救い。 もう、この頃には頭の中でZARDの「負けないで」が流れ始めてきた。まだまだ序盤なのに、脳や体はゴール直前の構えなのか。       米粒500個!     7画像 米粒500個_s   午前3時半くらい。ご飯が多少、乾燥してきて、こっちを悩ませていたぬめりや粘着力が減って来た。1時間で約200個ペース。でも、お茶碗を見ても、希望の光は見えてこない。       米粒1000個!   8画像1000個_s   1000個達成~! 外が少し明るいと思ったら朝の6時。それでも、お茶碗を見るとやるせない気分になってくる。あ、そういえば、自分の人生で、「1」から「1000」まで数えたのも初めてなことに気付く。 子供の時、「数字を何個まで数えられるか?」...みたいなことをよくやっていたけれど、たいてい「600」か「700」くらいで飽きてやめていた。まさか、36歳にもなって、こんな形で「1000」まで数えるなんて、小学生の頃の自分が知ったら驚くだろう。     米粒1500個!   9画像 米粒1500個_s   黒いボードも2枚目。時計を見ると朝の8時半くらい。もう、何のためにやっているのか...自分との葛藤が始まる。1500個なのに、お茶碗のご飯が、まだ半分以上残っている気がしてならない。ボクはどこまで頑張ればいいのだろう。 ご飯も、仏壇のお供えみたく、上の方がカピカピ固くなってきた。これは、時間との闘いになってくるのかもしれない。急がねば...と頭で思っても、体がついていかない。写真の構図もなんかヘン。でも、これでも精一杯頑張って撮った1枚だ。     米粒2000個!   10画像 米粒2000個_s   ついに2000個の大台突破! 黒いボードをタテにしないと写真が取れなくなってきた。お茶碗を見ると半分以上はいっている気がする。時刻は午前11時半。もう頭の中は、無我の境地! 1500個から2000個までの間の記憶がほとんどない。煩悩が消え、まるで悟りを開いたような感じ。 午後1時から別の仕事の打ち合わせが入っていたので、12時にいったん中断。まさか、こんなに時間がかかるなんて...始める前は思ってもみなかった。一応、お茶碗にサランラップをして、なるべく米粒が固まらない対策をして家を出る。     米粒2500個     11画像 米粒 2500個_s       午後3時過ぎに帰宅。フラフラなのは言うまでもない。午後5時、2500個に到達する。黒いボードも3枚目。今日2度目の「負けないで」が頭の中をグルグル流れる。ん~、しかしお茶碗の量を見ると、まだ武道館は見えてこない...。     米粒3000個!     12画像 米粒3000個_s     午後7時くらい、ついに3000個! お茶碗は残りわずか。やっと希望が見えてきた~! 砂漠で、オアシスが近くに見えてきたような感覚。今日3度目の「負けないで」が頭を駆け巡る。今回はアップテンポ♪ わずかながら元気も出てきた! あと少し!     いよいよ残り1個~!           13画像 残り1個_s     よ~~~~~し! ご飯粒が、ついに、ついに残り1個だ~! ゴール目前! ご飯粒を数えはじめてから、これまでの出来事が走馬灯のように蘇ってくる。         そして完成の瞬間!     14画像 完成の瞬間_s   最後の1個の米粒を置くライター・キンテツ(右上の指)。この1個は人間にとっては小さな1個だが、このサイト的には大きな1個だ~! 天国のA氏も、きっとこの様子を見て喜んでくれていることだろう(生きてます)。     完成! お茶碗1杯の合計は3132個!   15画像 完成後1_s       16画像 完成後2_s     17画像 完成後3_s       午後9時。お昼に1回外に出た時間を除くと、約18時間でお茶碗一杯分のご飯粒3132個を数え切った! マルタさんのお茶碗では3673個だったけど、米の品質や炊き方によっても、これくらいの誤差は普通に出るようだ。 それにしても何という絶景! う~ん、ファンタスティック!  我ながらすごい。たぶん、俺はまだ本気出してないだけだったのだ。お父さん、お母さん、やっぱボクはやれば出来る子だったようです! おめでとう自分~!     最後はおかゆで締め!     後編イラスト3_s 


作中では使用したご飯はお茶漬けにして食べていましたが...


    実験に使用したご飯粒、もっと短い時間で数え終えている作中では「お茶漬けにして美味しくいただいた」とあるものの、こちらはガビガビになってて、お茶をかけただけではとても食べられなさそう。A氏に連絡して指示を仰いだところ「お粥にならできませんか?」とのことだったので、たっぷりの熱湯に何時間も漬け込んで水を吸わせたあと、炊飯器で多めの水と一緒に煮込んだらどうにか食べられるものになった。戦国時代の干し飯(ほしいい)ってこんな感じだったんだろうか? でも確かに達成感につつまれて、美味しかった!   18画像 おかゆ_s


意外と料理で失敗することはなかった。


    <ライター/石川キンテツ>         マルタ3巻書影 


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関連リンク
くーねるまるた 3


【初出:コミスン 2013.11.20】

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