トップ  >  30歳で絵を描き始めた大阪の主婦が41歳でスピリッツデビューするまでの人生 ( 2013/10/05 )
週刊スピリッツ

2013.10.05

30歳で絵を描き始めた大阪の主婦が41歳でスピリッツデビューするまでの人生

週刊スピリッツ
お伝えしております「スピリッツ本気のショートGAGフェスタ」ですが、今回の執筆陣を見て、超豪華ラインナップの中にひとりだけ違和感を覚えた方、おそらく多いんじゃないでしょうか?

「るなツー!? 誰それ!?」と。

この方、商業誌では全くの無名ですが、大阪で開催される関西コミティアではオフィシャルポスターを作画するなど結構な人気を集め、今後間違いなくブレイクするであろう期待の新人さんです。何よりも面白いのはその経歴。なんと、初めて本格的にイラストを描いたのが30歳の時で、そこからなんとなく実力をつけ、39歳の時に「ガンガン」にスカウトされ、軽い気持ちで描いたネームが通って読切デビュー。弊社の携帯漫画誌「モバMAN」で単行本1巻分の初連載を持ったのが40歳の時。そして41歳の現在、ついに「スピリッツ」デビューも果たしてしまったという極めつけの遅咲き作家さんなのです。自ら「ただの大阪のおばちゃん」と称する平凡な主婦の身に、いったい何が起こったのでしょうか?


結婚を機にお絵かきソフトをいじってみたら面白かった

るなツー先生は1972年生まれ。高校時代は漫研に所属していましたが、自分では作品を描かず、先輩の作品にベタを塗ったり、消しゴムをかけたりしていたとのこと(当時、スクリーントーンは高校生にとってまだ高級品でした)。その後、大学~社会人時代は完全に漫画と縁のない日々を過ごし、30歳で結婚。旦那さんが同人誌を作っていて、それを手伝ううちに初めてお絵かきソフトをいじるようになったといいます。当時はPCによる作画がようやく一般的になり始めた頃で、るなツー先生は図らずもそんな時代の波に乗ったことになります。

その後、専業主婦の合間に絵の練習を始めた先生は旦那さんを追い越す勢いで急速に上達。また、このころPixivなどイラストをWEBにアップする環境が整いつつあったことで、「イラストをアップする→イラスト友達ができる→面白くてもっと練習する」という好循環が生まれました。やがて紙の同人誌を地元のイベントで売るようになり、内容も合同誌から個人誌へと、どんどん本格的になっていきます。


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初めて作成した個人誌の表紙。
しょっぱなから主婦の手すさびの域を超越しまくった技術。
本能で表紙をキャッチーにしてるのも素晴らしい。







意外!? 武者修行に最適な創作同人の世界

その後、同人誌を何冊か出していた、るなツー先生ですが、商業誌進出などは全く考えていなかったといいます。本人の中ではあくまでも、漫画は趣味の一環だったのです。

しかし、ここにひとつ、大変幸運な偶然がありました。るなツーさんが作品を発表してきたのは関西コミティアをはじめとする創作同人の即売会。参加された方ならお分かりになるかと思いますが、創作同人界ではパロディー禁止なので、コミケではしばしば見うけられる(パロディーの)元の作品のジャンル人気による恩恵はほとんどありません。売り上げは純粋に内容と表紙のイラストで決まります。

まず、表紙がキャッチーでないと立ち読みもしてもらえません。また、手に取ってもらっても内容が冗長だったり表紙との画力の落差が大きいと、すぐに放り出されてしまいます。お客さんの反応がダイレクトに伝わるため、「隣のテーブルには行列ができているのに自分の本は誰からも立ち読みしてもらえない」などという目に遭うと、嫌でも原因と対策を考えざるを得なくなるのです。のんびりやるのも醍醐味ですが、真剣に腕を磨こうとすると商業誌以上にシビアになってくる、そんな創作同人の世界で、るなツーさんは真面目に(でもプロになるつもりは一切なく)試行錯誤を繰り返し、知らず知らずのうちに実力を磨いていました。


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当時の同人誌より。白いのはご愛敬だが、画力、構成力ともに完成形に達している。誰からも教えられていないのにこのコマ割りができるのはただひたすら凄い。




39歳で商業デビュー。40歳で初連載!!

しかしそんな状況にも変化が訪れます。39歳の時、関西コミティアにスカウトに来ていた「ビッグガンガン」の編集者に声をかけられ、読切のネームを出してみないかと誘われたのです。軽い気持ちで提出したネームが通り、読切『ねこつなぎ』が掲載。さらに2012年夏の関西コミティアではスカウトに来ていた弊社の編集者(私のことです)に誘われていきなり携帯漫画誌「モバMAN」で単行本1巻分の連載デビュー。関西コミティアで養われた実力が爆発した瞬間でした。




そんな彼女のスピリッツ初登場作『のすたるちくたく』は11月11日発売のスピリッツ50号掲載のGAGフェスタ第2陣にて登場。同じく11月末には、初の単行本『女子のてにをは』の発売も控えております。

規格外の才能を持った超遅咲き新人の今後に、皆様どうかご注目ください!!





(この特集の幹事 スピリッツ編集部 有井大志)





↓以下、るなツー先生の「モバMAN」連載作『女子のてにをは』を、ほんの少しだけ公開!!


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女子のてにをは 1 るなツー

関連リンク
モバMAN


【初出:コミスン 2013.10.05】

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