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2024.09.05

ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル 第11回青年漫画賞結果発表

 

松本大洋氏「台詞に重量があり、心に響く」と激賞の受賞作ほか…

ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル第11回青年漫画賞結果発表!!

ゲスト審査員に松本大洋氏を迎えた今回も数多くのご応募、ありがとうございました!
編集部、審査員審査などを経て、松本大洋賞1作、編集長賞2作、入選1作が選ばれました!

 

松本大洋賞│賞金100万円+掲載権
ビッグコミックオリジナル18号にて掲載!!!

『野球で話せ』中原とほる

ストーリー
プロ野球チームの東京タイタンズは、新人テストで有望な若手選手を見つける。代理人の叔父が「契約金はゼロで1年契約。あとは自由の身にしてほしい」と驚きの条件を言い出して…

 

清潔さのある画面、台詞に重量…
とても好きな漫画

松本氏

軽さと清潔感のある画面、チャーミングさと不思議さのある絵で、キャラクターやモブの描き方などにもとても魅力を感じました。
 セリフにも重量があり、読んでいて心に響くものが多くありました。
 言葉でうまく話せない主人公のキャラクターが魅力的だったので、終盤、野球で覚醒し弾けたあと普通に話すようになった姿に、少し寂しさを感じましたが…
 細かい部分の不安定さも含め、個人的にとても好きな漫画でした。

 

高評価の声多数‼

ビッグ&オリジナル編集部

「実直な物語で読まされました」「よくあるテーマなのにしっかりしていて面白かった」

 

ビッグコミック編集長賞│賞金50万円+掲載権
ビッグコミック19号(9月25日発売)に掲載!

『オカダとオガタ』雨野小夜

ストーリー
就職活動に悩む美大生・岡田。プロ野球チームから戦力外通告を受けた緒方。挫折をそれぞれ経験した二人は、自分の夢を叶えるべく、歩き始め…

 

ビッグコミック 村上正直編集長

『オカダとオガタ』の雨野小夜さんは前回第10回で、入選を受賞された方です。ともすれば雰囲気頼りの印象が強かった前作に比べて、その進歩は“一読瞭然”だったように思います。言わなくていい一言をついつい口にしてしまう男と、いちいち気にしなけりゃいいのについついカチンときてしまう女…そんな読者の身の回りのどこにでもいそうな2人の主人公たちが実に生き生きと漫画の中で息をしていました。だからこそ、2人の関係性のちょっとした変化に心が動くのです。ここからさらなる進化を期待しています。

 

松本氏

全体を通して技量に安定感があり、安心して読める作品でした。
 差し迫る時間と追いかけたい夢の狭間で、余裕のなさから相手の言動に神経質になってしまう様子など、揺れ動く心の描写も丁寧に描かれていると感じました。それ故にエンディングは、二人がテストと面接をうけるシーンで思い切ってバッサリ終わらせてしまっても余韻が残って良かったかもしれません。
 独特の、昭和を感じさせる世界観のある絵で、真っ暗な夜の公園や、ピイッと素振りをする場面がカッコよかったです。

 

 

ビッグコミックオリジナル編集長賞│賞金50万円+掲載権
ビッグコミックブロスに掲載!

『美しきかなヴェネツィア』葉山ヤスヒコ

ストーリー
12世紀後半のヴェネツィア。ガラス細工で有名な職人・アマデオは老眼のため、ここ最近、作品を作れなくなっていた。その男の元に旅人が訪れて…

 

ビッグコミックオリジナル 荻野克展編集長代理

 読切において最も大切なことの一つである「キャラクターの心情の変化」をとても見事に力強く表現されています。人の胸を打つ真摯な作風に魅力を感じました。また、ともすれば描写が難しい外国世界を、実に自然に上手に描き、読者を引き込むことができています。そして絵柄やコマ割りに非常に読みやすさがあると感じられます。読みやすさは漫画表現において、特に重要な技術ですので大切になさってください。その上で、次回作ではページを絞った作品に期待したいと思います。

 

松本氏

 さわやかなキャラクターの絵柄にヴェネツィアの風景が美しく馴染んでいました。よく調べられて外国の歴史物の作品が描かれていたと思います。
 人物のアップの表情を描いた大ゴマが多く、スムーズに読みやすい分、やや抑揚が希薄になってしまう印象を受けました。
 このページ数を割くならば、もう少し人物のバックボーンについて地道な描写を積み重ねて描いていくと物語により説得力が生まれてくるのかなと思います。

 

入選│賞金20万円+掲載権
ビッグコミックブロスに掲載!

 

 

『エレベーターにて』カゲワサビ

ストーリー
ホストにハマってるアリスは、その帰りのエレベーターで、アニメTシャツを着た汗だくのキモ男と一緒になる。突然、故障して、閉じ込められ…

 

ビッグ&オリジナル編集部

「好意的に見られるキャラを描けるのは長所」「面白いが全体的に軽すぎる印象。もう少しドラマがほしい」

 

松本氏

 絵も筋書きもキャラクターも可愛いらしく素直にまとまっていて、読後感の優しい印象の作品でした。ただ作者の達者さが少し作品の個性を消しているような印象も受けました。
ワサビさんの中にある独自性のようなものが、もう少し見られると良いのかなと思います。

 

第11回青年漫画賞結果発表!!!

総 評

物語の幕引きに課題を残すも、レベルの高さに驚き!

松本氏

どの作品からも熱意が感じられて、とても楽しく読ませていただきました。僕自身がデビュー前に送った投稿作品と比較すると、みなさんのレベルの高さに驚きます。 ただ、前回担当された浦沢先生も言及されたように、今回も物語の幕引きに課題を残す作品が多いように感じました。
 16ページくらいの短いページ内で、物語を展開・着地させ描ききる練習を重ねることも、エピソードの取捨選択や見せ方の感触をつかむ練習になるのではないかなと思います。
 個人的には『野球で話せ』の個性がとても好きでした。可愛らしくお洒落な絵柄に、ストーリーや展開も不思議な構成ながら読みやすかったです。キャラクターから発せられる台詞ひとつひとつに説得力と重さを感じ、心に残りました。

 

「物語」と「キャラ」がうまく絡み合っているかどうか

ビッグコミック 村上正直編集長

 たくさんのご応募ありがとうございました。リニューアル後第2回となる今回も楽しく読ませていただきました。選出された作品は、いずれも「物語」と「キャラクター」がうまく絡み合っていることが共通点かと思われます。この人物だったら、こんなことを「言いそう」「考えそう」「行動にうつしそう」という前提を読者と共有できているからこそ、そのキャラの「変化」や「進化」あるいは「突破」が生き生きと伝わっていると感じます。あなたのキャラクターで貴方の物語を語ってください。
「ビッグコミック」は、ともすればベテランの先生ばかりの雑誌…という印象が強いかもしれませんが、本気で新しい才能を熱望しております。年齢やこれまでのキャリア(雑誌デビューの有無、同人活動の経験等)は関係ありません。あなたのキャラクターとの出会いをお待ちしております。

 

読者を揺さぶるのは「人間による人間ドラマ」

ビッグコミックオリジナル 荻野克展編集長代理

 リニューアル後、第2回目となる「第11回ビッグコミック&ビッグコミックオリジナル青年漫画賞」も、おかげ様で力作揃いのご応募となりました。全体を通して、骨太な人間ドラマを正面から描こうという、意欲にあふれた作品が多かったという印象を受けました。大変素晴らしいことだと思います。「絵柄」「物語」「セリフ」「世界観」…
読者が「漫画」に対して面白いと感じるポイントは種々ありますが、読者を根幹から揺さぶる核は、やはりなんといっても「人間による人間ドラマ」です。その際、作者の皆様方の「人間を見つめる目」「社会に感じる想い」が大きな鍵となることは間違いありません。今回は、特にその点において期待を感じる作家さんの受賞が多かったと感じます。読者はまだ見ぬ感動を楽しみに待っています。次回第12回青年漫画賞でも沢山のご応募をお待ちしております!

 


 

>>【第12回青年漫画賞は11月30日締切で応募スタート!】