2015.03.22
カレー沢薫・輝きかけの人生コラム「薫の小部屋」第12回更新!
今回のテーマは「漫画家であり続けるには」です。カレー沢先生の極意が...!
漫画家を目指す人も、目指さない人も必見です!
◆ ◆ ◆
このコラムが載るころには、新刊も無事発売し、結果によっては、私はもうこの世にいないかもしれない。と言いたいところだが、どんな結果であろうと恥も外聞もなく生きていると思う。
私は謙遜でもなんでもなく、単行本が売れている作家ではない。なので、今は単行本を出してもらえるだけでもありがたい。売れるかどうかは、もう二の次だ。
...と思えれば楽なのだが、未だに全然思えない。
本を出すたびに、「バカ売れするんじゃないか」と思うし、1巻が全然売れてなくても2巻でブレイクするかもしれないと期待するし、打ち切りを食らって終わった作品ですら、完結を機に評価されるかもしれない、と思っている。つまり全く諦めきれないのである。
そんな淡い期待と深い悲しみを味わうこと、すでに十数回。真面目な作家ならもう筆を折っているかもしれないが、自分は筆を折るくらいなら先に、担当の首を先に折ってやろうと思っている。
別に、八つ当たりで担当の首をボキボキしているわけではない。上手くいかなかったことを全部自分のせいだと思うと、精神的に参ってしまい次に進めなくなってしまう。よって建設的な意味で、自分以外のせいにするのも大切なのだ。
なので、私は本が売れなかった時は90%担当のせい、10%は「自然」など人の力ではどうにもならないもののせい、そして残りは自分が悪かったと思うようにしている。
作品自体も、手を抜いてはいけないが「命をかけて」描いてはいけない。もし、それがダメだったら「才能がないからやめよう」となってしまうからだ。後から見直して「まだ努力出来る余地があった」と思えるぐらいでいい。全身全霊をかけるのは、担当を殴るときだけで十分だ。
このように、漫画家とは体力的にもハードであるが、上手くいっていない時には精神的にもスーパーハードなので、保険に何個も入っておくべきなのである。(現在、私は「担当のせい保険」「運が悪かった保険」「世間の方が間違っている保険」に入っている)
人のせいにするから上手くいかないのだ、という意見もまっとうであるし、まっとうすぎてぶん殴ってやろうと思うが、長く描き続けるためには、まず心身の健康が大切であるし、そのためには逃げ場も必要なのだ。
そして、描き続けることで、漫画を作る能力と担当を殴る力が上がり、ヒットの道が開けると私は信じている。
「担当のせいの90%、「自然」などどうにもならないもののせい10%」
......あれ、先生、残りって...?
まぁ、いいですかね!
次回もお楽しみにー!!
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スピリッツ公式「スピネット」
モバMAN
【初出:コミスン 2015.03.22】
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