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週刊スピリッツ

2014.02.13

スピ×IKKIコラボイベントレポート! 連載作家が答えるみんなの疑問、完全公開!

週刊スピリッツ
2月2日(日)、COMITIA107会場内でのスピリッツ×IKKIコラボイベント、ご来場いただいた方、ありがとうございました。みなさん、楽しんでいただけたでしょうか?




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トークイベントは立ち見も出るにぎわい!








松田奈緒子先生の没ネームから『重版出来!』が出来るまでの転換点のお話、土屋雄民先生『黒鉄ボブスレー』のアツい取材のお話、『BABEL』重松成美先生の心意気たっぷりの持ち込みのお話、そして青野春秋先生と担当編集との不思議な距離感のお話。登壇作家&編集ともども緊張しまくりでしたが、ここでしか聞けないエピソードが飛び出る展開となりました。


Twitterで募集した質問に答えるコーナーでは、事前に登壇作家のみなさんに文章で回答をいただいていたのですが、時間の都合上すべてをご紹介することは出来ず......なので、こちらで完全版を公開しちゃいます!






Q&A




【回答】
松田奈緒子先生(『重版出来!』月刊!スピリッツ連載中)
土屋雄民(かつひと)先生(『黒鉄ボブスレー』週刊スピリッツ連載中)
重松成美先生(『BABEL』月刊IKKI連載中)
青野春秋先生(『スラップスティック』月刊IKKI連載中)






Q1:現連載作の編集担当は、何をしてくれる人ですか?どんな存在ですか?




【松田】
私にできないことを全部やってくださる方。ありがたいです。




【土屋】
漫画執筆に専念させてもらうため、取材の調整や費用の清算など、やりだしたら地味に時間の取られる事務的な処理をしていただいたりしています。
『黒鉄ボブスレー』は製造業というなかなか漫画にしにくいテーマなので、整合性や漫画的面白さを追求するためのサブブレーン的存在というのが僕の中では大きいです。また自身の社会性を保つ道標です。




【重松】
ネーム制作時に考えたことや仕込みが効いているか、編集の反応を見ています。自分ができていないと感じる所は、たいてい編集もひっかかります。うまくいっていないことはわかっても、どううまくいっていないのか掴めない時は、編集の反応や、適当にその辺の話をしつつ、問題点を明らかにします。
自分の考えや感覚だけでは、読者に伝えきれない可能性があるので、言葉遣いなどの擦り合わせをするために意見を聞きます。




【青野】
あんまり親しくないので......




Q2:「下描き→ペン入れ→仕上げ」で1ページ描き上げるのにどれくらい時間がかかってるんでしょうか?




【松田】
ネームは別で、アシさんが入ってくださって1ページ平均5時間くらい?




【土屋】
1ページ単位だとどれくらいかかっているか正確にわかりません。作業も分担していて複雑なので...全体的な原稿作業は20ページ前後でおよそ4日。単純計算すると、20ページを1日12時間作業で4日間。1ページ当たり2時間半弱。実際はもっと短いかも...でも僕含めて4人での作業なのでできています。アシスタントさん達のおかげです。




【重松】
作品ごとのタッチの差、さらに同じ作品でもその回の内容によって変わります。『BABEL』だと36ページで1週間くらい。




【青野】
1?2時間。




※こちらの質問は、トークイベントで作家のみなさん「うーん、わりと強引に答えたかも!」とおっしゃっていました。1ページどれくらい、って考えながら描いたりしないですものね。




Q3:打ち合わせをしていて、日にちが差し迫っているときなのに待てど暮らせどいい案が出ない時はどうしますか?逆に、話し合い中にこれはいいアイディア掴んだ!!となったらどんなリアクションし合いますか?




【松田】
アイデアは出ます。そこから生きたものにするのが大変です。
いい案が出た時は、お互いを誉めたたえ合います。




【土屋】
待ちます。担当さんと一緒に考えることもあります。時間はどんどん切迫していきます。いいネタ出たら、歩くのが早くなります。ちょっと興奮します。いいネタ出ても前後の展開とつなぎ合わせるのが大変で、いいネタにも将来性がないと。他にはとりあえず担当さんに投げて反応を見ます。推して落城しそうなら推します。でも担当さんのほうが一枚上手で負けることもあります。




【重松】
他のことをします(これは人それぞれだと思います)。話し合いの最中にも出ることはあります。その時は出た案をさらに展開してみます。




【青野】
打ち合わせしてません。




Q4:〆切までに作品を完成させるために、どのように制作ペースを管理していますか?日常的に使っているタスク管理術などありましたらご教授願います。




【松田】
〆切から逆算してアシさんに来ていただく予定を組み、ルーティンは睡眠時間と猫と遊ぶ時間を確保。詰まってきたら仕事場泊まり込み。




【土屋】
作業工程は主要人物が全て自分、背景はアシスタントさんへ全面的にお任せしています。
僕はどんどん人物の作画を進めてアシさんが手をつけられるコマを作り、それができたら入れて欲しい背景の指示と資料をお渡しして作画してもらいます。アシさんは「下描き→チェック(OKor直し指示)→OKならペン入れ→チェック→OKなら次の背景を指示」のひたすら繰り返しです。
画がある程度入ったら「ベタ→ホワイト→トーン」と仕上げです。これもアシスタントさんに全面的にお願いしています。その時、僕はなにをしているかというとペンでの細かい仕上げやトーンの指示書き。それも終わったらアシさんと同じようにベタトーン作業をします。みんなでひたすらトンネルを掘る作業です。
これを約4日間でやります。これだけ見ると自分はなにもやってないように見えますが、工事現場の監督のような感覚です。
質問に答えられているかわかりませんが、一人の作業をハッキリ分担してシンプルにしています。ベタの人はベタだけとか、進行状況で変わりますが......
ひとつの流れ作業をどんどん片付けていく形にした方が慣れるのもあって手が早くなります。
アシさんそれぞれに得意な背景、描いた経験のある背景を作ります。いざその背景が出てきた時に進んでその人へお任せします。勝手のわかる台所が一番使いやすい方式です。なんとなくですが新入社員に仕事を覚えてもらう感覚に似ている気がします。




【重松】
自分の気力と体力と気分の兼ね合いで原稿や、ネームを配分します。原稿の方が作業にかかる時間は見やすいです。
描いているとだんだんわかってくるので、自分の制作にかかる時間を意識していると、フィードバックしていけます。




【青野】
担当さんに締切りを聞いてそれに間に合うようにしてます。だいたい過ぎますが......




Q5:立体を意識するのが苦手なんですがどうすれば向上しますか?




【松田】
私も苦手です。




【土屋】
中身をイメージしながら描くと、多少形が粗くても肉が詰まってる感じがします。あとは観察しまくるしかありません。ついでにどのように動くかも見ておくと損はありません。漫画は静止画ですが、頭の中で動きがイメージできると躍動感が出ます。




【重松】
わたしも知りたいです。とはいえ、いろいろ見て、できれば触れてみたり、体験してみることは重要だと思います。




【青野】
意識したことないので......




Q6:このために生きて漫画描いてる、って理由はなんですか?




【松田】
好きだからです。売れなくなっても雑誌に載らなくなっても、漫画は描き続けます。




【土屋】
飯を食うためです。これに尽きます。気づいたらこれしかできること無かったんです。




【重松】
ひょんなことからこの世界に入ることができましたが、じつに愉快で素敵な才能や経験、そして人々と出会えています。とても充実していて、学びも多いです。まだまだ漫画の道は更なる深みがありそうで、興味は尽きません。




【青野】
好きなんです。






展示スペース「漫画ができるまで」。




20140215_comitia_2.jpg登壇作家さんの制作の裏側を、それぞれ担当編集が紹介しました。






20140215_comitia_3.jpg松田奈緒子先生のスピリッツ新連載没ネーム『火曜日はダメよ。』と『重版出来!』1話の比較。どちらも黒沢心が主人公ですが、全くキャラクターが違う!






20140215_comitia_5.jpg土屋雄民先生の週刊連載1週間のスケジュールと取材風景、ネーム。






20140215_comitia_5.jpg重松成美先生の、作品によって変化するタッチを比較。SFファンタジー『BABEL』と製本工房を舞台にした『白い本の物語』それぞれの複製原画。






20140215_comitia_6.jpg青野春秋先生の1か月のスケジュール。ネームを待つ担当のドキドキぶりが伝わるものでした。






20140215_comitia_7.jpg連載作家陣の複製原画も画材情報つきで展示。松本大洋先生の場合、モノクロ原稿はPigmaのミリペンと薄墨、カラーはアクリルガッシュ。




作家さんと作品によって「漫画ができるまで」は、いろいろ!ということをお伝え出来ていたらうれしいです。編集部にとっても、楽しい1日となりました。ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!






(スピリッツ&IKKI編集部)






関連リンク
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【初出:コミスン 2014.02.13】

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