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ビッグスペリオール

2014.11.12

【動画】3DCG×漫画家の技!『機動戦士ガンダムサンダーボルト』の作画システムとは?/太田垣康男インタビュー(前編)

ビッグスペリオール
「ビッグコミックスペリオール」18号から新章がスタートし、これまでの隔号から毎号連載へとパワーアップした『機動戦士ガンダム サンダーボルト』。




過酷な戦闘が繰り広げられたサンダーボルト宙域から、一年戦争後の大気圏下に舞台を移してスタートした「新章」。これまでの展開で、連邦、ジオン、そして謎の集団「南洋同盟」の各陣営が出揃って、10月25日(金)発売の「スペリオール」22号掲載の巻中カラーからはいよいよ物語が本格始動――!!




コミスンでは『機動戦士サンダーボルト』の新展開にあたり、毎号連載に備えて大幅にパワーアップされたという太田垣康男先生の仕事場「スタジオ・トア」に潜入取材を敢行! これが、研ぎ澄まされたアナログの技と最新のデジタル技術が融合した、漫画制作の最前線だ......!






『サンダーボルト』新章の舞台は大気圏下へ......ペガサス級強襲揚陸艦スパルタン発進!!





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――「新章」スタートの「スペリオール」18号表紙から登場している「スパルタン」ですがペガサス級(『機動戦士ガンダム』に登場するホワイトベースの同型艦)は『サンダーボルト』では初登場ですよね。






そうですね。自分なりにホワイトベースのデザインをあまり大きく変えないようにしつつ、でも細部は全然違う、というのを目指しました。読者が見たときに、ペガサス級だとわかる形、でもよく見ると似ても似つかないというデザインにすることで、長年ガンダムファンをやっている人たちにもアピールできればいいなと思っています。




――シルエット的には『機動戦士ガンダム』に登場した元祖ホワイトベースに近いですが、かなり色々なアレンジが施されていて、後部エンジンなどはかなり違いますよね。






比べると違いがたくさんあって面白いと思いますよ。スパルタンのデザインはすごい頭を悩ませました。どうやったら現代的なデザインになるかと考えたときに、「羽」はまず無いじゃないですか。でもそれを無くすとホワイトベースに見えなくなっちゃう。これまでもOVAなどで、ペガサス級の艦がたくさんデザインされていますけれど、アニメーションの場合は色で統一感が出せるんです。漫画の場合はそれが使えないので、シルエットが似ていないと同じだと思ってもらえないんですよね。そこが一番ハードルを高く感じたところです。





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新たな主役艦スパルタンの雄姿!







――ペガサス級のアレンジは、シャープなものが多い印象ですが、スパルタンはかなり質実剛健な感じのデザインです。






これは要塞のイメージなんです。演出的に、アニメに出てきたホワイトベースみたいにゆっくり移動させたいんです。あまりハイスピードで飛んでいくとホワイトベースらしくないので、ゆっくり飛ぶ理由を考えたときに、これは要塞だから中心にドンと構えていればいいんだと。そのために、ちょっとやそっとの攻撃では倒れないくらいの頑丈な感じが欲しいと思って、それで城のような形になりました。




――「スパルタン」という艦名の由来は?






最初のイメージですね。自分でデザインしているときに、一番しっくり来た名前。それはこの艦のイメージそのものだし、今後のこの艦の活躍のしかたも象徴している名前なので。『サンダーボルト』は少年少女がほぼ出てこない話で、大人が乗っている艦、訓練された兵士が乗っている艦という印象を与えられるかなと。実際にどんな風に活躍するかは、ネームを描いてみないとわからないですけれど、うまく運用していきたいと思います。












従来のやり方では不可能だった『機動戦士ガンダムサンダーボルト』の作画






続々と登場するジオンのモビルスーツ......を始め、フルアーマーガンダムとサイコ・ザクの2大主役モビルスーツはもちろん、GMやボールといったお馴染みの量産メカや連邦・ジオン両陣営の宇宙戦艦など数々のメカニックが画面狭しと活躍してきた『機動戦士ガンダムサンダーボルト』。その重厚かつ緻密な作画での連載を可能にした太田垣氏のスタジオワークに迫る......!





――アナログで作画されていた『MOONLIGHT MILE』から一転、『機動戦士ガンダムサンダーボルト』では作中に登場するメカを3DCGで作られているとのことですが。






作画のスピードアップのために固定モデルは3DCGで作るようにしています。モビルスーツみたいに関節を動かしたり、芝居をつけないといけないものは、相変わらず手で描いているんですけれど、背中に装備する武器とか戦艦などに関しては、3DCGを作って、それを作画素材として使っています。




――太田垣先生がデジタル作画環境を使われるようになったのはいつごろからですか。






『サンダーボルト』の1回目からです。連載を始める前に1ヶ月ほどお休みをもらえたので、その間に突貫工事でComicStudioとLightwave3Dの使い方を覚えました。




――使い方を覚えるところから......!






ガンダムを描くにあたって、流石に何か工夫をしないと作画が間に合わないと思って。いくら好きでも限界があるじゃないですか。当時は、作画のスタッフもいなくて、私一人でほぼ描いていたので。自分でできる最短の方法を新しく編み出さないと、今までどおりのやり方では『サンダーボルト』の原稿は上がらないなと思ったのでデジタルを取り入れることにしました。




――3DCGはモデリングからレンダリングまでLightwave3Dですか?






Lightwave3Dでモデリングしたデータを、ComicStudioの3DLT機能でそのままレンダリングできるので、それを輪郭線として使っています。そのままでは漫画の絵にはならないので、そこからレタッチをして、トーンを貼りなおして、最終的に漫画の中で違和感の無いように仕上げます。




――数あるモデリングツールの中から、Lightwave3Dを選んだのはなぜですか。






色々ありすぎて、どれを選んだらいいのかわからなかったので、友人に聞いたらLightwave3Dを薦めてくれたので。今時の3DCGはもっと滑らかにできるぶん、PCのスペックも必要になってくるじゃないですか。うちのような低予算の環境でも快適に使えるものとなってくると、Lightwave3Dが一番安くて性能が安定しているかなと。特に、『サンダーボルト』に使うモデルは箱組みで十分だったので、カクカクしたものが作りやすいLightwave3Dがこの漫画には合うかなと。




――ポリゴンモデラーであるところがよかったと。3DCGの制作は、絵で描くのとはまた違って立体造形に近い作業ですよね。






プラモデルを作るみたいで、楽しくてついつい凝って作っちゃいます。本当はもっとテクスチャとかを貼ってCGっぽくしてもいいんですけれど、さすがに漫画でそこまでする必要はないので、やってないです。初期のモデルは全部自分で作っているので愛着がありますね。











――ムサイ艦の砲塔の様な可動部分にはボーンが入っていたりするんですか?






ボーンを入れて回転を制御できるようにしようとすると、短時間では作れなくなるので、ボーンまでは入れてません。本当にオブジェクトを作るだけで、ポリゴンで粘土細工みたいに作るだけなら2日で完成できるので。アニメーションを作るわけではないので、必要最低限のものしか作っていないんです。




――連邦のボールのようなメカも、背景であまり動かないようなものであれば、全部3DCGでやったほうが効率がよいということですね。






一応、軸は作ってあるので腕を動かしたりするくらいであれば、その都度、移動ツールや回転ツールでポリゴンごと動かして、それをレンダリングするという風にしていますね。アニメーションだったら逆にそのほうが手間なんでしょうけれど、漫画はひとコマずつなので、下準備でボーンまで入れると逆にめんどくさい。一応、勉強はしたので、ガンダムとかザクにボーンを仕込んでみたんですよ。「やったぞ!ボーン仕込めた!」ってすごい達成感はあったんですけれど、漫画じゃ使わねぇなと思って(笑)




――本気でモビルスーツを動かそうと思うとパーツの干渉なんかも気になってしまいますよね。止まっているからこそ絵的な嘘が効く部分もあったりして。






漫画の絵のポーズの自由度と比べると、モデリングで作ったものはひねりとかができないですからね。もっと腕のいいモデラーさんなら、そういう部分も表現できるんでしょうけど、さすがに2~3ヶ月の突貫工事で覚えたものなので、そこまではできないなと。




――2Dならではのケレン味の効いたパースをつけたいような時は、3Dモデルそのままでは使えませんよね?






そういう場合は、3DCGはあくまでアタリとして使うだけで、そこから描き起こしてしまいます。3DCGは、基本的には下描きの手間を省くことと、最短でできる作業効率を実現するために導入したので、手で描いたほうが速いときは手で描きます。




――複雑なメカのアタリを作画スタッフに渡せるのが最大のメリットだと。






これだけ複雑な形状になってくると、スタッフに下描きをさせるのは物凄く酷なんですよね。3DCGを使えば、画面の中で小さい絵であればペン入れまでは機械がしてくれるので、あとはレタッチをするだけでいい。見開きみたいな大きい絵で使うときは、3DCGを下描きに使えばデッサンの狂いはないですから、あとはタッチをつけて漫画の絵としてのリアリティを出していく作業になります。
もちろん、これを使えばリアルなものが描けるというわけではないので、長年漫画を描いてきた技術があった上で、利用することでより完成度があがるということですね。いまの読者は目が肥えていて、単にCGで作ったものをCGですよって出してしまうと興ざめしてしまうので、『サンダーボルト』に関しては、3DCGを使っていますけれど、いかに「手描き感」を出すかというところに手間をかけています。




――CGっぽさを出さないで、あくまで漫画の絵としてアウトプットするということですね。






2000年代に入ってから、いろいろな漫画家さんがCGを使って作品を作るようになってきたと思うんですけれど、正直、皆さんそこに食傷気味かなという印象があって。同じようなことをしても負けてしまうので、最先端の道具を使いながらも、漫画本来の手描き感というのが損なわれないようにするのが、一番心がけていることですね。




――これから先、新しいメカもどんどん登場すると思いますが、3DCGモデルの追加作業も太田垣先生がやられているんですか?






外注でモデラーさんに依頼したりもしています。デザイン画を描き起こして、ジオンの偵察機(ルッグン)とかドップのような共通イメージが持てるものだったら、モデラーさんに発注したり、スタッフにもLightwave3Dを教えているので、作中に登場するコアファイターなんかはスタッフがゼロから作りました。











――3Dモデルを作るときは、3面図を起こしてそこから作っているんですか?






スタッフにはまず3面図を描かせて、形を把握してもらった上でモデリングしてもらいます。自分で作る場合にはその手間がもったいないので直接作ってしまいます。Lightwave3Dは、絵を描いたり、ブロックを組む感覚で進めていけるので3DCGに慣れていない人でも入りやすいと思いますね。非常にシンプルなので、他の漫画家さんにもお勧めしたいくらいです。
いまは『サンダーボルト』の登場メカにLightwave3Dを使っているんですけれど、おそらく将来的には普通のホームドラマみたいな漫画を作る人も、背景なんかを3DCGでやるようになるんじゃないかと思いますね。






◆  ◆  ◆








太田垣康男先生のスタジオ・トア潜入インタビュー、前編では主にメカ作画での3DCGの活用についてお伺いしました。後編では漫画制作ツールComicStudioを使ったデジタル作画環境における、アナログ技術とデジタル技術の融合について、伺っていきます!(>>インタビュー後編へ





『機動戦士ガンダムサンダーボルト』は、「ビッグコミックスペリオール」(第2・第4金曜日発売)で毎号連載中!!




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新章が収録された単行本最新巻(第4集)は11月28日(金)ごろ発売予定!!






>>>インタビュー後編につづく>>>





(コミスン編集チーム・平岩真輔)

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機動戦士ガンダム サンダーボルト 1 太田垣康男/矢立肇/富野由悠季
機動戦士ガンダム サンダーボルト 2 太田垣康男/矢立肇/富野由悠季
機動戦士ガンダム サンダーボルト 3 太田垣康男/矢立肇/富野由悠季
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関連リンク
『機動戦士ガンダム サンダーボルト』特設ページ
スペリオール公式


【初出:コミスン 2014.11.12】

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