2026.09.07
第421回スピリッツ賞 結果発表!

デビューに一番近い新人賞!!
佳作1本&奨励賞1本&努力賞3本の豊作!

【佳作】賞金30万円
『手配犯への贖罪』
新井コウセイ┃福岡県・26歳
あらすじ
スーパーの店長・誠は、老いた母親の治療費捻出に苦慮していた。ある日、実母を殺害した指名手配犯・池井ユウトそっくりの青年が面接に。子どものような字で書かれた履歴書の名前は「石井」。誠は報奨金目当てに石井を雇い、証拠を探る。その過程で彼の壮絶な人生を知った誠の選択は――!?
賞担当より
人間の弱さと真心の両方が、誠実に描かれていました。インプット量の多さを感じさせる構成力と演出の手数、小物や電子機器の画面に至るまで丁寧な作画が、作品の核をしっかりと支えています。「誠」という主人公の名づけも心憎いですね。「親の大切さ」に言及する以上、名前はとりわけ重要なアイテム。石井の本名・「ユウト」にも思いを巡らせながら読みました。

【奨励賞】賞金10万円
『最奥、つまり―』
瓦斯┃東京都・25歳
あらすじ
人を食うバケモノとして村人に忌避される存在“それ”がいる小屋へ、村から「退治」の依頼を受けた狐面の男がやってくる。逃げもせず刺客を迎えた“それ”の傍らには、ある男の亡骸があった。バケモノと男が交わした、人知れぬ愛の形とは……?
賞担当より
抑制的な心情描写でありながら、男の抱える孤独と、バケモノの中に見出した救いが伝わりました。線が美しいため、長い黒髪を操るバケモノというモチーフの選定は秀逸。絵だけでなく、絞り込まれたセリフも作り手の美意識をよく反映していました。

【努力賞】賞金3万円
『やまんばの川』
新橋咲季┃茨城県・22歳
『変わらない』
チョコワールド┃福岡県・21歳

『カダル=ファ=セプト攻略戦』
ハム山方人┃神奈川県・29歳
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総 評
今月もたくさんのご応募ありがとうございました! 今回の応募作は、表情や、目つきや、間の取り方……そういった「人の実在感」を感じられる作品が多く、読み応えがありました。セリフやストーリー以外からも何かが伝わってくる、「このキャラクターは何を感じているんだろう」と身を乗り出したくなるような描写は簡単なことではないと思います。物語の完成度も優れていた『手配犯への贖罪』。人間関係や世界の空気が原稿全体に乗っているような『最奥、つまりー』『やまんばの川』『変わらない』。とにかくキャラクターがイキイキ動いている『カダル=ファ=セプト攻略戦』など力作揃いに感じました。
大コンテンツ時代と言われ、漫画界にもハイレベルな作品が溢れる昨今。その中を一歩抜け出す作品は何を持っているんだろう…と時折考えます。キャラクターの魅力、斬新な設定、読みやすさ、運……色々あると思うのですが、少なくとも「作り手の勇気」は必須条件ではないかと思います。ひとつ間違えれば誰にも伝わらない可能性がある、それでも作り手に確信がある何か…それを伝えようとすることは、凄く“怖い”ことで。でも真に読者に届くのはそれを「なんとしても伝えたい」と挑んでいるその姿でもあります。その勇気が、具体的なストーリー云々だけでなく表情・目つき・間(他にもたくさんありそうです)のような、抽象的な部分にも「面白さ」として表れてくる。それが「この人が描く世界を信じてみたい。もっと見たい」と心を動かし、読者と作品を結びつける最後のカギのような気がします。
今月はそんな勇気が香る作品が読めて、嬉しかったです。来月もまた楽しみにしています。
(スピリッツ賞講評担当B)
