トップ  >  【ファン待望】『水族カンパニー!』単行本第2集発売記念! 作者・イシイ渡氏インタビュー!! 第2集は「人間ドラマ」と「もふもふ」推し♡【3月12日頃発売】 ( 2018/03/12 )
月刊!スピリッツ

2018.03.12

【ファン待望】『水族カンパニー!』単行本第2集発売記念! 作者・イシイ渡氏インタビュー!! 第2集は「人間ドラマ」と「もふもふ」推し♡【3月12日頃発売】

月刊!スピリッツ
「月刊!スピリッツ」にて好評連載中! 海の島水族館の新米トレーナー・七瀬と、イルカを偏愛する獣医・海崎の凸凹コンビが、色々な海獣たちのトラブルを解決する"水族館お仕事コメディー"『水族カンパニー!』、待望の単行本第2集が3月12日(月)頃ついに発売です!!




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単行本第1集発売時にはSNS等でも話題となり、全国の海獣好き、水族館好きの読者ならびに書店員の皆さんから沢山の支持の声が寄せられた本作。単行本第2集発売を記念して、コミスンでは作者・イシイ渡氏のインタビューを掲載!!

水族館での取材エピソードや、twitterで公開したおまけ漫画のこと、読者からの応援の声の数々まで、じっくり語っていただきました!!





『水族カンパニー!』イシイ渡インタビュー






――「イシイ渡」というのはご夫婦での共同ペンネームということですが、一緒に作品を作られるようになったのはいつ頃からなんですか?






イシイ渡(I) デビュー当時は私ひとりで、イシイモモコ名義で女性誌に4コマ漫画を連載していたんですけれど、アイデアを出す手伝いとかはしてもらっていたんです。それでストーリーものの読切を描くことになった時に、話を考えてもらって。




イシイ渡(W) それからだんだん加わるようになって、青年誌に持ち込む様になってからは二人で組んでやっています。




――どのような分担で制作されているんですか?






(W) 最初に私がプロットを書いて、それを基に一緒にネームを作って、作画からは(I)が進めていく感じでやっています。




――青年誌に持ち込みをされるようになって、初めて掲載されたのが「月刊!スピリッツ」2016年2月号での読切『海獣さんがっ!!!』になるわけですが、水族館ネタで漫画を描こうと思われたのはなぜですか?






(I) 結婚して神奈川に引っ越したのをきっかけに、新江ノ島水族館に行って、そこで観たイルカショーにドはまりしたんです。完全に恋に落ちたみたいに。




(W) えのすい(新江ノ島水族館)のイルカショーが、それまで自分たちのイメージしていたイルカショーとまったく違っていて。




(I) イルカ1頭1頭のキャラクターを紹介してくれたりとか、飼育員さんとイルカの関係を教えてくれたりする様なショーは観たことがなくて。それでイルカがすごくかわいいなと思って。




(W) 海獣にも、人間みたいに性格が色々あるのが面白いと思って、そこから水族館にハマって色々な水族館に足を運ぶようになりました。




(I) 神奈川には、えのすい以外にも八景島シーパラダイスとか、油壷マリンパークとか、海獣がたくさんいる水族館があって、それでいっそう水族館にハマるという。




――引っ越しして水族館にハマったことが、そのまま作品に繋がったんですね。






(I) 最初は、すごく水族館が好きで、ひとりで行っちゃうスーツ姿の男性がいたら面白いんじゃないかと思って。『孤独のグルメ』の水族館バージョンみたいなイメージから始まったんです。




――それが海崎のキャラクターの原型になるわけですね。ひとり水族館というのはなかなかハードルが高そうな......。






(W) 好きな方はけっこう一人でも行くみたいで、twitterのフォロワーさんにも一人で行ってるとか、毎日行ってるという人がいらっしゃいますよ。




――ツワモノがいっぱいいるんですね。読切版の海崎のキャラクターは、その初期プロットに近い感じなんですか?






(I) 実は、読み切りの前にもう1段階、全然違う話があるんです。同じく外見はスーツ姿なんですけれど。イルカが大好きすぎて会社を半休とって水族館にいくイケメンが主人公で、海崎ほど変態な感じではなかったんですけれど。




(W) それで、イルカを熱い視線で観ているのを、七瀬のもとになった飼育員のキャラクターが、イケメンが自分のファンだと勘違いしてしまうというラブコメみたいな感じのショートギャグを最初に編集部に持ち込んだんですけれど、青年誌だとイケメン要素はあまりウケないといわれたので、いろいろ変えていって。




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『海獣さんがっ!!!』より






――そこで変態性が加わって、『海獣さんがっ!!!』バージョンの海崎になったんですね。読切の時には水族館の取材はされていたんですか?






(W) 持ち込みしてから、連載を狙って描きましょうと言われて、新江ノ島水族館の取材をさせてもらいました。その時の内容は『海獣さんがっ!!!』にはあまり活かされなかったんですけれど(笑)。連載が始まってから色々、役立っています。




――読切の『海獣さんがっ!!!』の好評を受けて、連載化に向けて動き出したわけですが、どのようにして『水族カンパニー!』へと変化していったんですか?






(I) 『海獣さんがっ!!!』のまま、海崎がお客さんという設定だとネタ切れになってしまうので、この形で連載化するのは難しいだろうとなって。




(W) 担当編集から、少し緊迫感のあるシーンができたほうがストーリーを作りやすいと指摘されて、動物がなにか危機に陥るようなピンチがある方が読んでいて面白いんじゃないかと思って、獣医という設定を海崎に加えました。その時のキャッチコピーが「人間にはS、動物にはM」っていう(笑)。




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――それで『水族カンパニー!』では読切とキャラの関係がぐるっと入れ替わったんですね。エピソードも、読み切りでは1話に詰め込む感じでしたが、連載では1話ごとにテーマを絞って緊迫感のある作りになっていますね。






(W) 『水族カンパニー!』も最初は私たちがお客さん目線で感じていたような水族館の楽しさをコメディー要素を含めて描いていました。取材を重ねて、直接、水族館の人の話を聞いているうちに、そこで働く人たちの気持ちみたいなものも見えてきたので、最近は働く人の気持ちを描いてみようという感じで1話ごとにテーマを持たせて話を作っています。




――登場人物も増えてきて、飼育員と担当動物の関わりの中で、それぞれの人間性が描かれたりするので、ぐっとドラマチックになった感じがありますね。






(I) 単行本第1集の時から、取材を通して少しずつ色々な話をうかがってきて...やはり取材の力が大きいですね




――キャラクターの中心にいる七瀬がわりとポンコツというか、新人ぽいことで、水族館の中の人達の話でありながら、外から見ている感じがあります。






(I) 七瀬は読者に近い視点として動いてもらっています。




(W) 私たちにとっては面白い話でも、水族館で働いている人にとってはあたりまえのことが沢山あるので、それを聞いてあげる役がいないと水族館や海獣の雑学とかを盛り込めないので。




(I) 取材でも「何か面白いことはありますか?」と聞いても、考えこんじゃうんですよ(笑)。水族館の人達にとっては普通なので、こんなことが面白いの? ということを聞いてみると全部予想の斜め上をいっていて、面白いことばかりで。




――海獣の脱走とか、エピソードの軸になるような動物と飼育員の関係などは取材の中ででてきた内容だったりするんですか?






(W) 多くは取材で聞いた話をベースにしているんですけれど、それが想像の斜め上をいっているようなところがあって。例えば第1集の2話でセイウチにキスするというのが結構な衝撃なんですけれど、これは私たちが尊敬している獣医さんが実際にセイウチがエサを食べなくなった時にキスして食べさせたということがあって。ネタのように見えて、実はあまり盛ってない...なんてこともあります(笑)。




(I) プールの暖房が壊れてイルカが寒い思いをしているから自分も家で暖房を使わないとか、海獣の口に入れるものはとりあえず自分でも試食してみるとか、けっこう愛が強すぎる飼育員さんのエピソードが多くて......。




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――海崎の変態エピソードだと思ったら実話なんですね(笑)。イルカのおでこを舐めたがるというのは?






(I) 海崎のキャラクターには、かなり私の欲望が入っていて、描いている時はそんなに変態じゃないと思っていたんですけれど、出してみたらすごい変態と言われたので意外でした(笑)。




(W) そうでもない人からは、変態だと言われるんですけれど、水族館好きとかイルカ好きの人からは「わかる」と共感されることもあります(笑)。




――水族館の飼育員やスタッフさんからはどのように受け止められているんですか?






(I) 取材に協力していただいている大阪ECO動物海洋専門学校の村瀬先生は、元飼育員なんですけれど、リアリティをもって描かれていると言って下さっています。水族館の業界を目指している人や、飼育員になったばかりの人とかも読んでくれていて、「怒られた時にこの漫画を読んで気持ちを取り戻して頑張っている」みたいな感想をいただいてとても嬉しいです.




――海獣の描写も見どころですが、そのへんも取材でじっくり観察されているんですか?






(I) 取材で写真を撮ったり、後から資料を観たり。写真そのままに描こうとすると逆にリアルすぎて可愛くなくなったりするので、見た時の印象で描く感じにしています。ただ、やっぱり本物が一番かわいいので、それに負けないように描くのは大変で。




(W) ラッコは大変でしたね。本物が可愛すぎるから(笑)。




(I) 海獣それぞれに、いちばん可愛い仕草があるので、そこはなるべく出すようにしています。




――イルカの肌の質感の表現などは苦労されるのでは。






(I) そうですね。最初はぜんぶ自分でトーンを貼っていたんですけれど。さすがに連載しながらだと厳しくなってきたので、途中から腕のいいアシスタントさんに指定してお願いしています。




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――演出面で言うと、ちょくちょく動物に字幕が入るのが可愛いですよね。






(I) 『動物のお医者さん』が好きなので、その影響もありますが、実際に見ていると何かしゃべっているような気がするんですよね。




――人間と動物の間で会話が成立しているわけでなく、あくまで客観的に見て受け取った動物の感情みたいな文字になっているのがポイントですね。






(I) 動物の声を代弁しているわけじゃないですけれど。飼育員さんと話しているときに、よく「こう思っているんじゃないかな」「こんな時こういう顔をするんです」ということを言われるんです。




――単行本第2集に収録されるラッコのエピソードで、本当に気持ちを分かってあげられているのかと悩んでいるような場面では動物の字幕が出てないんですよね。






(W) 人間だったらどこが痛いとか言えますが、動物はこちらが察してあげないとわからないというのは、飼育員さんも苦労されているところなので、そういうところが上手くかければと思っています。




――取材の中で特に印象に残っているエピソードはありますか?






(I) 海遊館に本当にラッコと信頼関係で通じ合っているベテランの飼育員さんがいらして、取材した三か月後くらいにそのラッコが亡くなってしまったんです。取材中は「ラッコは大変だから可愛くないですよ」とか言っているのに、似顔絵とかいっぱい描いてて、ぜったい可愛がってるんですけれど。ニュースで見たんですけれど、ラッコが亡くなる直前も飼育員さんの手を握っていて、見守られながら亡くなったそうです。すごくラッコに感謝しているとコメントされていて、ぐっときました。




(W) 村瀬先生が「彼らは海から来た代表者」というようなことを言われていて。海から隔離して自然とは違う形の水族館で見せているのは、そこから人間が学ぶためなので、その子達が海から代表して来てくれているのだから、せめて最良の環境で暮らせるようにしてあげたいと。その飼育員さんたちの想いを漫画で表現したいなと思うんです。




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――第2集に入るオットセイを海に返す話は、まさにそのテーマですよね。






(W) 何のために水族館があるのかというのはすごく難しいところで、担当編集とも話し合っています。描き方を間違えると、水族館の役割が間違って伝わってしまうので......。私たちも答えを考えながら作っているところです。




――連載が始まってからはtwitterでまとめマンガを公開されたり、色々な工夫をされていましたよね。






(I) 作品を知っていただくことが第一なので、なるべくRTで拡散してもらえるような海獣の面白い雑学とかを描いて、それをきっかけに漫画を知ってくれたらいいなと思って。




――反響はどうでしたか?






(I) イルカがフグをつついて、少しだけ毒を出させてそれを吸って酩酊するのを楽しんでいるみたいな話を描いたら、たまたま同じ時期に実際にイルカがそれをやっている写真が出回ったので、すごくRTされましたね。普段会えない海の生き物には、面白い雑学がいっぱいあるんですよ。




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イシイ渡氏のtwiiterより






――漫画を読んで水族館に興味を持った人におすすめの、水族館の楽しみ方みたいなものはありますか?






(I) バックヤードツアーなどに参加すると面白いですよ。トレーニングの道具を見せてくれたり、動物に餌やりができたりするので、可愛い姿が間近で見られます。あとはお気に入りのトレーナーさんを見つけるとか。(笑)ショーの後に話しかけに行くと、色々動物の質問にも答えて下さるので、トレーナーさんと話すのも楽しみ方のひとつだと思いますね。




(W) 小道具を使って動物に近くに来てもらうのも楽しいですよ。アシカはラベルを剥がした空のペットボトルを振るとか、ペンギンは白いタオルとか、動物によって違うんです。好奇心の強い子は寄ってきてくれるので,動物たちとコミュニケーションを取ることが出来ます。




(I) 基本的に水族館ファンの人は、動物に対してナチュラルに手を振るし、話しかけたりします(笑)。




(W) あと、取材で聞いた話ですが、シャチは頭がよくて、常連さんの顔を覚えているらしいんですよ。毎回その人が来るとわざと水をかけて反応を楽しんだりするという。動物たちも私たちのことを見ているので、お客さんの反応によってショーに出てくる動物のテンションも違ってくるらしいです。




――動物とお客さんとが一緒になってステージを作っているみたいですね。






(W) 本当に、ハマりだすとアイドルみたいになってきて、(I)はショーを観ながら泣いてる(笑)。




(I) 定期的に観測していると、どの子が何をできるようになったとか、今日はやる気がなくてぜんぜん跳ばないなとか、変化が見られるのも楽しいです。




――完全にアイドルのオタクじゃないですか(笑)。






(W) ショーを盛り上げないといけない! みたいな使命感で。




(I) 最初はワーキャー言っているんですけれど、常連になるとだんだんこう(腕組みをしながらステージをじっくり観察するポーズ)なっていく......。




――アイドルの現場でいうところの彼氏面ってやつですね(笑)。取材ではいろいろな水族館にいかれているんですか?






(I) これまでに取材したのは、えのすいと海遊館、最近、鴨川シ―ワールドに行きました。




――単行本第1集の時は、お二人と一緒になって、twitterでファンの皆さんがすごく盛り上げてくれていましたよね。






(I) 応援してくださっているファンの皆様には本当に感謝しています! サイン企画とか、とにかくやれることはやろうと思っていたら、皆さんも感想をアップしてくれたりして。水族館好きの読者さんの熱量がすごくて、この動物がまだ出てきていないから続きで描いて欲しい!とか猛プッシュしてくださったり。書店さんも色紙を置いていただいたり、水族館好きの書店員さんが棚を作っておまけ漫画もプリントして飾ってくれたり。




(W) 水族館だけじゃない、生き物好きの人たちがいっぱい背中を押してくださりました。本当に愛が深いというか、僕たちもたくさん勇気をもらいましたし、『水族カンパニー!』を続けていきたいという思いを新たにしました。










――連載が再開した時にもすごく盛り上がっていました。






(I) 連載再開のツイートを大量にRTしていただいて。読者の皆さんも「みんなで一致団結して盛り上げた」みたいな一体感がありました。




――3月12日には、いよいよ単行本第2集も発売されますが。






(I) ぜひ手にとって欲しいですね。




(W) 少しでも多くの人に作品を知っていただきたいので、2集でも何かやりたいねとは言っているんですけれど......。




(I) 実は単行本の発売日ごろが出産予定日※注で......どこまでできるかなというところなんですけれど、それまでに用意しておいて、何かしらできるといいなと思っています。

※注:インタビュー取材時(I)氏は妊娠9ヶ月だったんです! 3月6日に男の子を出産されました!!






――これはファンとしてはますます応援せざるを得ないですね! 作者的に単行本第2集の見どころはどこでしょうか?






(I) 第2集のエピソードは、第1集とはちょっとちがう、飼育員にスポットがあたっているので、私たちが取材を通して感じた、飼育員の人たちがどういう思いで働いているのかみたいなところを見ていただけると嬉しいです。




(W) あとはラッコが可愛い!(笑)




(I) モフモフ好きの人は、ラッコのモフモフぶりを楽しんでいただければ。




――では、『水族カンパニー!』第2集は、人間ドラマとモフモフ推しというとで。






(I) そうですね(笑)。




(W) 水族館好きの人も、そうでない人も、ぜひよろしくお願いします!!





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イシイ渡『水族カンパニー』第2集、好評発売中です!!







(インタビュー・構成/平岩真輔

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『水族カンパニー!』作品詳細
月刊!スピリッツ公式


【初出:コミスン 2018.03.12】

イシイ渡,月刊!スピリッツ,水族カンパニー!