2024.03.08
第10回ヤングスペリオール新人賞結果発表!
大賞&審査員賞 決定!賞金総額200万超の大発表&審査員の濃密インタビュー!
大賞 賞金100万円+掲載権
大賞 『Drop 〜垂下のホライゾン〜』
両親の葬式で流せなかったこの涙を 私は信じることができない
小雨日和│34歳
■ストーリー
ある映画の撮影の主演を務める、女優・白澤かれん。演技力に定評のある彼女だったが、なぜか涙を流す演技はできなかった。しかし、助演・一栗三重子の演技が、かれんの中の何かを変える。果たして彼女は、涙を流すことができるのか───
●安田佳澄氏評
海辺の邸宅で映画を撮影しているラストシーンに向かうにつれて主演女優の心が解放されていく、というパッケージングがコンパクト且つ美しいです。モチーフを上手に使い、感情も乗っててとても読み応えがあります。背景もしっかり描き込まれていて好印象です。
●久部緑郎氏評
画力、キャラクター、ストーリー、ワードセンスと全てにハイレベル。ただ、模範解答的すぎるきらいがあり、いささか類型的。4P目で予想した通りの流れであり結末だったが、そこを裏切るような発想が欲しかった。
審査員賞(久部緑郎氏) 賞金30万円+掲載権
審査員賞『玉』
目曇ノイ│18歳
■ストーリー
高校生のそば子は、特に誰とも深い関わりを持たずに過ごしながら、心の中でなんの忖度もない悪態をつきまくる日々。そんな彼女が、体育の時間 顔面に直撃したバレーボールをきっかけに「初恋、のようなもの?」を感じ───
●久部緑郎氏評
そば子がバンバン本音を吐き散らかしていて気持ちいい。嘘が感じられず面白かった。一人芝居ながら単調にならず、メリハリよく展開されている。彼女みたいなキャラが、他者ともっと深く関わる作品も読みたい。
佳作 賞金20万円
佳作『恋は族車に乗って』
YØRI│44歳
■ストーリー
ふとしたきっかけで、暴走族に入った根暗な高校生イチカ。暴走族が解散になり、大学受験も控える中、イチカは、リーダーだったカオルに「一緒に東京に行こう」と声をかける。当初カオルはその呼びかけを断るが…
●安田氏評
とても面白かったです。同性愛が主軸の物語でここまですっきりと読める作品は少ないような気がします。クライマックスは読んでてとてもドキドキしました。その二人の恋路を裏からさりげなく、しかし力強く族車が支えている。とても練られた短編だと思います。背景はもう少しうまくなった方がいいです。これくらいしか言うことないです。
佳作 賞金20万円
佳作『ノーサンキュー』
中村明日建│27歳
■ストーリー
平和に暮らす夫婦。妻は外で働き、夫は主夫として家事をこなす日常。そんなある日、買い物から帰った夫を出迎えたのは、仕事に行ったはずの妻。仕事が休みだったと言う妻に対し、「君は誰?」と問う夫。その言葉に困惑する妻。夫の真意はいかに…
●久部氏評
ノーサンキューとは? ミサキの服の違いの意味は? 空想が混じってる? 何度読んでもよく分からなかったが、故に何度も読み返したくなる不思議な魅力を持つ作品。淡々とした日常風景の中にカタストロフの予感が漂う。
佳作 賞金20万円
佳作『白けた夜』
木野 免│23歳
■ストーリー
霊感体質のミヤコは、家の外にいる幽霊に怯えながら窓から様子を伺っていた。そんな彼女に興味を抱いたヤエは「私には見えないから、幽霊は存在しない」と言い放ち、二人は親しくなっていく。しかしミヤコの胸にはある思いが…
●安田氏評
とても面白かったです。キャラクターの行動理念が過去のエピソードに根ざしていて、狭い世界ながらも満足感がありました。4Pの巨大化したヤエや25Pの「すみません通してください」など端々にセンスの良さを感じます。ローテンションであることがそれを際立たせているのかもしれません。テンションにメリハリがつくとより面白くなると思います。
奨励賞 賞金5万円
奨励賞『災い転じて』
ふくだ│21歳
奨励賞『My dear ルリコ』
千山侑子
奨励賞『笑みと、呪いと。』
木陰ひな田
努力賞 賞金1万円
努力賞『PANⅡ MAN』
芦真│30歳
努力賞『キクリヒメ』
木村匠一│22歳
努力賞『リコとクロ』
柿原ゆうき│32歳
努力賞『アイラブユーとしてくれ』
こ原│19歳
●編集長総評
第10回ヤングスペリオール新人賞は大賞1本、審査員賞1本、佳作3本、奨励賞3本、努力賞4本と優秀な作品が数多く集まりました。ご応募頂きました皆様ありがとうございました。
小雨日和さん『Drop 〜垂下のホライゾン〜』は、人間ドラマの強さとそれを読者に確実に伝える描写力など多方面で才能を感じられる作品で総合力で抜きんでており、大賞受賞となりました。おめでとうございます。
今回の投稿作の中で個人的に一番キャラクターが魅力的だったのが、審査員賞の目曇ノイさん『玉』でした。悪態、毒舌…決して好印象とは言い難い主人公ですが、逆にそれが嘘のなさや本音に繋がっていました。さらにその先にそんなキャラへの悲哀も感じられて強く印象に残り、「ここにしかいない」キャラクターになっていました。
漫画のキャラクターは好かれるのが一番いいが、そうでないなら嫌われるのがいい。一番悪いのは、好きでも嫌いでもない(どうでもいい)キャラだと言われます。「嫌い」は執着という意味では「好き」と紙一重だとも思います。アンチファンもファンのうちです。このキャラクターだけにこだわる必要はありませんが、大切にして頂ければと思います。
今号では第9回の新人賞にご応募頂いた西塔しゅんけさんの読切『シェアボディー』を掲載しています(295ページ)。この新人賞から本誌連載へも続々とデビューされていますし、スペリオールは新しい才能にさらに誌面を開いていきたいと思っております。第11回もすでに募集中です。皆様のご応募を心よりお待ちしております。(編集長・寺澤)