週刊スピリッツ
2017.04.20
痛すぎる恋の話、聞かせてください!『あげくの果てのカノン』第3集発売記念・あげくの果ての女子座談会!(前編)
週刊スピリッツ
いきなり登場、ストーカー女子
――本日は、皆さんに『カノン』とご自身の恋についてめいっぱい語っていただきます。まずは皆さん、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
米代 作者の米代恭です! 今日はみなさん、よろしくお願いします。
キクナ お願いします! まずは私の自己紹介から。商社一般職OLをやっています、キクナ(仮名)です。30歳です。『カノン』の共感ポイントに付箋を貼ったら、おぞましい量になってしまった......エンドレス共感なんですよ! 私はかのんと同じように、細胞が「この人が好き!」と告げるレベルで大好きな人に出会ってしまったんですが、夢のように舞い上がって、地獄に突き落とされる恋愛でした。かのんの一挙手一投足に「わかる! 私か?」と叫びたくなりますね。
フチノ 25歳、公務員人生4年目のフチノ(仮名)です。実は私、23歳までちゃんと恋愛をしたことがなくて、ものすごくコンプレックスを抱いていたんですけど......私もキクナさんやかのんと同じく、死ぬほど好きな人との恋に落ちました。でも、全然相手に言いたいことが言えなくて、あっちから連絡が来ないとメンヘラってしまったり、爆発しちゃったりして、その恋を自分でダメにしてしまった。かのんを見ていると過去の自分を見ているようで、うろたえながら読んでいます。
ハジメ 専業主婦のハジメ(仮名)です。27歳です。かのんちゃんには、ストーカー気質のところにものすごく共感しています。――実は私、高校生のころ、大好きな先輩のストーカーをしてたんです。
米代・キクナ・フチノ えっ.........。
――いきなりヘビーな話が!? 詳しく教えていただいてもいいでしょうか。
ハジメ 生徒会の先輩後輩で、彼は生徒会長、私は書記でした。かっこよくて、人望があって、優しくて、先生からも信用されていて、神様みたいに思って大好きで。1話でかのんちゃんが先輩の声を録音しているシーンがありますが、あれ、私もやりました! 先輩が生徒総会で喋るので、設営の仕事の隙を見て演台にそっとレコーダーを仕込んでみました。
フチノ ばっちり録れてました?
ハジメ はい! 家で何度も再生して、先輩の声に浸っていましたね。
米代 あのエピソードは、私の実体験に基づいているんですよ。レポエッセイを描く機会があって、ずっと憧れていた俳優さんに取材で会えたんです。もちろんお仕事なのでその時は平静をなんとか保ちましたが、その時の取材の音声をちゃんと録音しておいて、あとで聞き返して悶えてました。
キクナ ああ、でも、わかります......! 声って、骨格から生まれるものらしいんですよ。だからある意味、声はその人の全て。ちなみに私はジャニオタ(ジャニーズのオタク)でもあるんですが、ジャニー喜多川さんは骨格レベルで美少年を見抜くそうです。
フチノ 確かにNEWSの手越祐也さんと声優の宮野真守さんって、声が似ている気がしますね。骨格が似ているからかな......? 私は録音はしたことはないですが、収集癖はわかります! かのんって、先輩が使ったものをそっと持ち帰ってコレクションしているじゃないですか。私も女子中学生時代、淡く憧れていた学校の先生の使いかけのチョークとか、プリントに押されたスタンプとか集めてました。
キクナ どうして我々は好きな人の物を集めてしまうんでしょうね? 私も大好きな人からもらったリポビタンDの空き瓶を花瓶にして、花を活けてしまった過去があります......。
3年越しの「彼女いるんだよね」
――キクナさんの痛い恋についても教えてください。
キクナ 一目ぼれでした。彼は同じ会社の商社マンだったんですが、一方的に出会った瞬間に「こんな風に人を好きになるのは二度とないかもしれない」と電撃が走りましたね。彼と仲のいい同僚に「あの人めちゃくちゃかっこいい!」と言い続けていたら、飲み会をセッティングしてもらえることに。まつエクはつけるわ美容院には行くわで、自分史上最大に磨き上げて出向いて、お持ち帰りしました。
米代 行動派!
キクナ 夢のようでしたね......あんなに好きな人が、私の家にいる。もう骨からして好きなので、骨を感じるだけで胸がときめいて。初めてキスしたときは、この思い出だけで生きていけるとすら思いました。でもまさか、これが地獄の始まりだったなんて――。
ハジメ な、なにがあったんですか......?
キクナ 付き合うとか付き合わないとかそういう話はできなくて、でも3年くらいずっと、たまに会っては「本当に好き」「最高にかっこいい」「あなたの全てが最高」と相手に言い続けていたんですよ。「俺はダメなんだ......」と愚痴る彼に、一晩中「あなたはダメじゃないよ、世界で一番大好き」と伝えたりも。私は彼と一緒に生きていくと疑っていなかったし、彼と一緒に住むために、わざわざ会社から遠くなってまで広い家に引っ越しました。そしたらある日、いきなり「そういえば、彼女いるんだよね」というまさかの告白が。
フチノ クズじゃないですか。
キクナ パニックですよ。「いつから?」と聞いたら、「わかんない~」と。わかんないってなんだよ!? でも今から考えると、伏線はあったんですよ......。お持ち帰りしたその日、脳内物質は出まくっていて、ドラマティックぶりたい症候群が発動。「彼女いるの?」「うーん......」「いいよ、それ以上何も話さないでっ!」ハグしてチュー、みたいな。私、良い女だ......みたいな。あーっ、浸っていないで聞いておけばよかった!
フチノ 3年間で、一度も彼女の話をしたことはなかったんですか?
キクナ なかったです。いくらでも言う機会はあったと思うんですけど! もう呆然としてしまって、「か、彼女がいなくなったら、うちにおいでよ......」と言ってしまった。その後は「もうどうにでもな~れ」というやさぐれ状態。女友達から「他の男の子に目を向けたほうがいい」とアドバイスされたのもあって、いろいろな男性に会ってはみるんですけど、自分の悪いところや大好きな人がいることをバーッと喋って、「どう? 私ってヤバイ女でしょ?」と言ってしまう。そんな状態を、もう2年ほど続けています。
フチノ 思った以上に現在進行形だった。でも、「私ってヤバイでしょ?」を告げた男性からって、なぜかモテませんか?
キクナ ......そうなんですよね。こっちは「二度と連絡が来ないだろうな」と思うのに、「すっごく楽しかった、また飲みましょう!」と言われたりする。彼からはそんな連絡来たことなかったのに。
フチノ 私は冒頭でもお伝えしたとおり、23歳までちゃんと彼氏がいたことがなくて。でも、告白してきてくれる男性はいたんです。いちばん好きな人からは好かれないのに、どうでもいい人には好かれる。それって、どうでもいい人に対しての方が、自分のことを話せていて、人間として魅力的に見えるからじゃないのかなって。
キクナ ああ......。好きな人には「いかにあなたのことが好きか」しか話してませんでした。どうでもいい人には、「いかに私がジャニーズが好きか」「ジャニーズ事務所はいかに数多の危機を乗り越えてきたか」「このプロジェクトはジャニーズでいうとどのグループに近いか」みたいな話を延々話せる......。ハジメさんは、大好きな先輩と話せてましたか?
ハジメ お風呂でひとり、喋る練習をしてましたね。当時小学生の弟がそれを聞いてドン引きしてました。
フチノ 就活の面接練習じゃないですか!
ハジメ 私は自分に自信がなかったので、あんまり「好き」とは伝えられなかったんです。「好きになってほしい」とも思っていなかった。せっかく会ってくれるんだったら、少しでも面白い話をして、先輩が笑ってくれて、何かの話のネタになったらいいなあと。先輩と初めて一緒に食事に行ったときは、「なぜ世の中にマフィアが必要なのか?」を延々語りました。
キクナ 無欲の勝利だ......。
初めての本気の恋が不倫だった
――フチノさんは23歳までちゃんと恋をしたことがないとおっしゃっていましたが、もっと詳しくお聞きします。それ以前に、告白をされた経験や、彼氏がいたことは?
フチノ 大学のころに一度、告白された人と付き合ってみました。でも、友だちとしては好きだったのに、恋人になったらうまくいかなかった。こっちは相手のことをそんなに好きじゃないのに、相手がこっちのことを一番に好きでいてくれるのがつらくて......。「自分が一番じゃない」ほうが、もしかしたら幸せなのかもしれないと思ってました。
キクナ 自分が一番じゃない幸せってありますよね。私は3年間彼に夢中になって地獄に落ちたあと、依存症についてめっちゃ調べました。「私って、問題のある恋の、問題があるところを愛しているのでは?」という気持ちになって......。恋愛でつらい思いをすると、ものすごく感情を揺さぶられるじゃないですか。そのドラマティックさに対して、「麻薬中毒」みたいになっているのではと。
フチノ そうなんですよね! かのんも依存症してるんだろうな......。私、境先輩みたいな人が超タイプなんです。1話を読んだ瞬間、「好き!!!」と思いました。確か米代先生は、実写化したときのキャストをもう決めてらっしゃるんですよね?
米代 あ、そうなんです。岡田将生さんを見ながら描いています!
フチノ 岡田将生と心から付き合いたい! ......でも、私の場合、初めて本気に好きになった人は、岡田将生顔というよりインド人顔のアラフォー既婚者でした。
キクナ あげくの果てのインド......
ハジメ ひどい。
フチノ 既婚者だと知らないで好きになってしまった、だまし討ちみたいな恋でした。15回くらい別れようとして、でも好きだから別れられなくて、「もう二度と会わない!」からの「やっぱり好き!」。これも依存症ですね。相手の奥さんがめちゃくちゃ激しい性格のバリキャリ女性で、喧嘩したり、プライドが傷つけられたりするたびに私のところに来るんですよ。
キクナ そういうことする男の人いますね! 本妻に傷つけられたプライドを二番手で埋めてる。私は愛のポンプか!? しなしなになった風船に、ポンプで空気を送り込んであげてる。客観的に見ると最悪なんですけど、会うと「しゅきしゅき~!」ってなっちゃいました。
フチノ 最悪だったのはデートとか旅行。「ここ、僕が昔住んでいたところなんだ」とか「この観覧車、好きなんだ」とか言われると親密になれた気がするんだけど、絶対に元カノや本妻も同じように連れてきてる。そういう匂いを隠しもしない。
ハジメ 『カノン』3巻にもそういうシーンがありますよね。境先輩がかのんを、自分がかつて住んでいた北海道に連れていく。そこで昔の友だちに会って、思い出話を聞いちゃったりする......。
キクナ 家族の話をされたり、トラウマの話をされたり、友だちと会わされたりすると、乙女ゲームで言う「ルート」に入った気になりません?
フチノ ルートはルートでも、不倫ルートでした......。境先輩、絶対奥さんの初穂さんとも一緒に北海道に行ってるはず!
――3巻はSF的にも不倫的にもどんどん事態が悪化していて、「直接対峙」のシーンが増えてますよね。
フチノ 緊張感とリアルさが素晴らしいです。並んで寝ているけど、奥さんからの着信履歴を見てる境先輩なんて「あっ、これ実際やられた!」と思いましたからね。初穂との会話のシーンは、実際に私も本妻と会っていたらこうなっていたんじゃないかな......。かのんは「同じ人を好きになっている」から初穂に気を許すけど、初穂は全くかのんを許していない。
米代 あのシーンは、言葉ではない部分でもそれを表現できればいいと思って、初穂の動きを丁寧に描いています。かのんと話している間、初穂はずっと、腕を組んだり手のひらを握りしめていたりしている。自分をガードしている人はそういう動きをするんですよね。その一方で、かのんは完全に警戒を解いている人の動きをしている。
キクナ かのんは現在進行形で不倫沼にハマっていますが、フチノさんはどうだったんですか?
フチノ 特にきっかけがあったわけではないんですが、ある日いきなり恋のフィルターがなくなって「あれっ、ただのおっさんじゃん」と気付きました。そうしたら急速にどうでもよくなった。かのんも、先輩への恋愛感情から醒めてみてほしいなと思うんです。恋の麻薬が切れたかのんがどういう行動をとるのか......すっごく興味があります!
あげくの果ての座談会、後編「メンヘラ気質の不倫女子・高月かのんは幸せになれるのか?」に続く!
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— スピリッツ編集部きんさゆです (@dobugawa_info) 2017年4月16日
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『あげくの果てのカノン』第3集発売記念・あげくの果ての女子座談会! [前編][後編]
(取材・構成/アオヤギミホコ)
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あげくの果てのカノン 1 米代恭
あげくの果てのカノン 2 米代恭
あげくの果てのカノン 3 米代恭
【初出:コミスン 2017.04.20】
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