トップ  >  装丁から見るマンガの魅力!「ジャケ萌え!」7冊目/prigraphics川名潤さん・その2『プリンセスメゾン』 ( 2017/03/01 )

2017.03.01

装丁から見るマンガの魅力!「ジャケ萌え!」7冊目/prigraphics川名潤さん・その2『プリンセスメゾン』

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読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画が「ジャケ萌え!」です。
装丁を見るだけで内容が気になってしまう、そんなたまらない"見た目"をしたおススメ単行本をピックアップし、見どころや舞台裏などを紹介していきます!





連載7回目は、prigraphics川名潤さんにお話を聞いていきます。今回取り上げるもうひとつの作品は『プリンセスメゾン』(池辺葵)。この作品の装丁が決まるまでには、担当編集・金城さんとの試行錯誤があったといいます。
一体それはどんなものだったのでしょうか......!?






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『プリンセスメゾン』






居酒屋の社員・沼越幸は"運命の物件"に出会うべくモデルルーム巡りを繰り返す。フードコーディネーターやテレフォンアポインター、一児の母......。オリンピックを控えた日本で、様々な女性たちが理想の家を求めて歩く群像劇。





──川名さんは『プリンセスメゾン』以外にも『どぶがわ』『かごめかごめ』『雑草たちよ 大志を抱け』など池辺葵さんの作品の装丁をされていますね。版元が違う作品でもイメージが統一されていて装丁だけでひとつの世界観があると感じます。






『どぶがわ』以降ずっとですね。版元が違っても、打ち合わせには池辺さんが同席してくださるので「あのイメージで」「あれですね」って感じで。デザインで飾り立ててがっつり世界を作るよりも、池辺さんの絵だけでいけるなと思ったのが最初の『どぶがわ』で第2話の扉絵をそのまま使っています。漫画というよりは文芸のイメージ。一切迷いませんでしたね。




──『プリンセスメゾン』の装丁は、まず最初にどんな風に見せていこうと思いましたか?






『繕い裁つ人』でも使っていたキャピタルラップという紙を池辺さんが気に入っているとのことで、じゃあそれを使いましょうと。包装用紙としても生活的愛着があるものだし、僕も使うことが多い紙。色の出方は悪いけれど、逆にそれがすごく生きてくるんです。そして何よりも、安い(笑)




──第1巻の表紙に描かれている金髪の女の子、作中には登場していないですよね。






そうですね。第1巻だと沼ちゃん(沼越幸)メインではなく色々な人々を取り上げているオムニバス要素が多いのと、沼ちゃんメインの表紙だと地味かもしれないと編集者も僕も池辺さんも感じていて。それでWeb連載のTOPにある黒髪の女の子を描こう、もう少し華のある部屋を描いてみようと3人で彼女の暮らしを考えてみました。すると、池辺さんがラフをあげる直前に「別の子に変えてもいいですか?」と、この金髪の女の子を描いてきたんです。





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最初はこの女の子の生活空間をカバーにしようと考えたそう。のちに池辺さんにより金髪の女の子へ。







──その後はずっと沼ちゃんが表紙になっています。






作品がどんどん沼ちゃん人気にシフトしていったので「なんで主人公が表紙じゃないんだ!」と反省して(笑)。沼ちゃんひとりで頑張れるカバーを目指しました。





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池辺さんによるラフ







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連載時のロゴを使ってシンプルに仕上げた最初の案







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「担当編集の金城さんがカラフルなのがイイというのでクッション柄的なものを入れました」(川名さん)







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「もっと色を入れてとのことで、色を入れるっていっても黄色くらいじゃね?」







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「イラストのカラフルさを押し出すためにはやっぱり黒か」







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「いや、白だ」







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「タイトルをカラフルにって......やってみるけど...」







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「シャボン玉っぽいものを入れて欲しいと...こういうこと?マジで?」







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「これだったら許せる。でも小さいね」







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「意外と濃い色いいかも」







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「かっこつけて欧文を主張させてやるぜ」→この案に決定!







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色校で細かく調整をいれました







──何度もやりとりされていますね。いつもこんな感じでやりとりされているのでしょうか。






基本的には打ち合わせでお互い色々とやりとりをして、1パターンだけを作るようにしています。そのほうがデザインに力を注ぐことができるので。なので今回は特殊な例ですね。デザイン案を送ると金城さんが「う~ん、なんか違う」って返してくるんですよ(笑)




──デザイナー殺しの一言ですね(笑)






ホントそうですよね(笑)。でも僕も金城さんに「もっとこうしたほうがいい」など色々な意見をいうので、お互い言い合えるのがむしろ楽です。






ジャケ萌えMEMO
「う~ん、なんか違う」は言われると本気で困るやつだ! と思いつつも、お話からはちょうどいいバディ感のようなものを感じました。
完成に至るまでの道のりが面白いです。うねうねと回り道をしながらも、どのデザイン案も完成版に必要なステップだったようです。







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『プリンセスメゾン』単行本第1~3集発売中!









「ジャケ萌え!」7冊目 [その1][その2][その3]







(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/







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【初出:コミスン 2017.03.01】

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