トップ  >  【装丁から見るマンガの魅力】連載「ジャケ萌え!」 5冊目『しまなみ誰そ彼』【その2】 ( 2016/02/24 )

2016.02.24

【装丁から見るマンガの魅力】連載「ジャケ萌え!」 5冊目『しまなみ誰そ彼』【その2】

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読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画が「ジャケ萌え!」です。





ヒバナにて連載中の『しまなみ誰そ彼』の装丁を担当したナルティス・新上ヒロシさんに、デザインが決まるまでの過程を聞いてきました!





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『しまなみ誰そ彼』鎌谷悠希







──『しまなみ誰そ彼』の表紙の青は特色ですか? このグラデーションはどう表現しているのでしょうか。(※特色:基本となる4色インクのかけ合わせではなく、特殊な色を表現するために調合されたインク)






1巻ということもありチャレンジを盛り込んでみようと思ったんです。青の特色で2度刷をしてみたいなと印刷所の方にお願いしたら、ほほ線、トーンのドットや瞳など、鎌谷さんの絵が繊細すぎてズレちゃうって言われてしまって......(笑)。結果、近い色を2色使うことにしました。ちなみに、印刷所の方からその連絡を受けた時ちょうどお休みをいただいて東北にバイク旅行をしていたので、電話とメールで指示をしました(笑)。





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ナルティスさんの事務所






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訪れた漫画家のサインがたくさんありました







──すごく現代っぽい!(笑) ロゴも独特の形ですが、参考にしたものはありますか?






昔の書き文字をベースに、横浜銘菓「ありあけ横濱ハーバー」のロゴの要素も取り入れてみました。僕は横須賀生まれですごく身近なお菓子。現物を見ずに記憶の中の「ハーバー」を思い起こしつつ作っています。日本人が見たアメリカの水兵さんや、西洋の要素を取り入れようとした日本のモノのような、新しくて懐かしい、どことなくハイカラな雰囲気。ハーバーのロゴってどこかそんな感じがありますよね。





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新上さんによるラフ






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し・ま・な・み






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こちらが完成形!







文字のエレメントをわざと整えずに、洗練しすぎないように。細かい塗りや文字に適した面相筆でサラッと書いたように見えたらいいなと。曲線もなめらかにせず、コンピュータではなくレタリングで書いたような文字にしています。





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これが横浜銘菓「ありあけ横濱ハーバー」だ!!!






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しっとり、ほどよい優しい甘み。紅茶と一緒にいただきたい







最近はどのロゴもかっこよかったり、洗練されていますよね。その中で目立つには、手芸的な何かを取り入れる必要があると思いました。




──新上さんが考える、鎌谷先生の作品の魅力を教えてください。絵の魅力は先ほどお話しましたが、物語についてはどう感じました?






『少年ノート』『ぶっしのぶっしん-鎌倉半分仏師録-』そして『しまなみ誰そ彼』。どの作品も登場人物が多いのですが、全員に感情移入できるのが鎌谷さんの作品のもつ力です。どの作品の、どのキャラクターのこともすごく記憶に残っています。





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名前も生い立ちも、誰も彼女が何者なのか知らない。「誰かさん」と呼ばれている







「誰かさん」のような登場の仕方をするキャラクターはこれまでにはいませんでしたよね。水木しげる先生を彷彿とさせる部分も持っているんだと、この作品で新たな魅力を発見できたと思います。謎の存在がいて、その謎に引き込まれていく。少年がそこで新たな世界に出会う。これからの展開がすごく楽しみです。





単行本データ


『しまなみ誰そ彼』第1集 鎌谷悠希

[判型] B6判(127×180mm)並製アジロ綴じ 178ページ

[カバー] Nプレミアムステージピュアホワイト 特色2C×特スミ2度刷り

ニス引き

[編集]豊田夢太郎

[デザイナー]新上ヒロシ(ナルティス)






★ジャケ萌えMEMO★

新上さんが削ぎ落としたもうひとつの要素、それは「洗練」です。手書き感を出し、見る人に少し違和感をもたせるロゴ。綺麗なだけでなくちょっとぎこちなさもある姿は、少年の青春を表現するにふさわしいものだと思います。
『しまなみ誰そ彼』は1話読めば、必ず引き込まれる作品。その1話を読者に届けるためにデザイナーが凝らした工夫が凝縮されているのが装丁。中身を読んだ方はもう一度装丁をじっくりと、時にはカバーだけを外して触ってみてください!







期間限定で『しまなみ誰そ彼』第2話まで試し読み公開中!







「本」のデザイン、ナルティス http://www.nartis.co.jp/

 ナルティスでは、アシスタントデザイナーを募集中です! 応募〆切は2016年3月23日(水)。詳細はこちらからご覧ください。







「ジャケ萌え!」5冊目 [その1][その2][その3]







(ライター:川俣綾加)




フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/







「ジャケ萌え!」バックナンバー






「ジャケ萌え!」4冊目 【ベイブリッジ・スタジオに聞いてみました!】
 [黒木香編] [佐藤千恵編] [吉村勲編] [小林美樹代編] [伊波光司編]

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 『白暮のクロニクル』編 『重版出来!』編 『機動戦士ガンダムサンダーボルト』編 インタビュー編

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しまなみ誰そ彼 1 鎌谷悠希

関連リンク
「ヒバナ」公式サイト
『しまなみ誰そ彼』紹介ページ


【初出:コミスン 2016.02.24】

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