トップ  >  「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】関さんインタビュー編 ( 2015/06/10 )

2015.06.10

「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】関さんインタビュー編

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読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画が「ジャケ萌え!」です。

今回は"デザインワーク・オブ・関さん"の総まとめ。デザイン事務所・ボラーレ関さんご自身について質問してきました。

デザイナー関善之さんインタビュー



――どのようにしてデザイナーになったのでしょうか。



「絵で食べていきたい」と、高校卒業と同時に東京へ行こうと昔から思ってたんですよ。当時は80年代後半のアニメブーム。アニメーターの募集を見つけていくつか面接を受け上京しました。風呂なしトイレ共同、四畳半で家賃2万円弱くらいのアパートで、お金は全然なかったけれど、若かったし一人暮らしは初めてだったので楽しかったですね(笑)。アニメの動画の仕事をしばらくやっていましたが、1年くらい経ったころ色々と考えさせられることもあってスタジオを離れたんです。
そして家賃や食費のためにつなぎで池袋のカメラ量販店でアルバイト。ファミコンブームのおりで「ツインビー入りましたー!」とか、売り子らしく声かけをしてましたよ(笑)。その間も「何か絵の描ける仕事ないかな~」なんて求人誌をチェックしていました。
たまたまイラストレーターのアシスタント募集があり、スケッチブックを持って面接に行ったらそのまま採用。それがきっかけでイラストのアシスタントやりつつカット描きを。別の事務所に誘われそこではイラストの他にデザインの手伝いもあったりと。

――イラストレーターのアシスタントだけど、デザインの仕事もあったんですね。



先輩から頼まれて「スピリッツ」の本文ページレイアウトなどを時々手伝っていました。それまでデザインの勉強は全くしたことがなくて、先輩の版下を見ながら学んでいった感じですね。
その先輩が辞めてからは成り行きでデザインの仕事の比重が増えてしまい(笑)。色指定や細かい作業がとにかく多くて大変だなぁ、なんて思っていたのが、マンガは元から好きだったことも手伝って徐々に楽しくなってきて。そうこうしているうちにデザイン自体が本業になり現在に至ります。

――デザイナーとして意識していることはありますか?



打ち合わせは大事ですよね。出来るだけ作家さん編集さんと直接お会いして相手の目指している方向性を伺う。こちらの感じたイメージやアイデアをお伝えする。作家さんや編集さん側のアイデアが良い方向に行けそうな場合はこちらの提案はバサッと捨て、そのアイデアを元に一緒に膨らませていきます。
気をつけているのは、作品に対して客観的でいること。この漫画はどういった読者層なのか、書店ではどう見えているのだろうとか。
「デザインは旗振りのようなもの」と考えていて「あなたの好きそうな漫画がここにありますよ!」と読者の方に伝える役目を担えたらいいなと思っています。

――尊敬しているデザイナーがいたら教えてください。



デザインを始めた頃は、装丁では、祖父江慎さん、鈴木成一さん、羽良多平吉さん、平野甲賀さん、日下潤一さんなど、エディトリアルデザインでは、岡本一宣さん、木村裕治さん、染谷淳一さんなどといった方々の仕事を「カッコいいなー!この書体はなんだろう?どうやってこの色は出してるんだろう?どうしたらこんな印刷になるんだろう?」と気にして眺めていましたね。
ボラーレなりに何か面白いことできないかなぁ、と事務所の相方の星野と試行錯誤の日々。でもそれが楽しかったし、作家さん編集さんにも一緒になって楽しんでいただけたのではないかと思います。
今はまた若いデザイナーのみなさんが沢山出てきてどんどん面白くて素敵なデザインをなさっているので、ボラーレもがんばらないといけません(笑)。

――ちょっと答えにくいかもしれませんが、好きな装丁を3つ教えてください。



うーん、文字とビジュアルだけのシンプルなデザインなんて理想で、みすず書房さんみたいな装丁とか好きですね。うーーん、3つ!?
悩みますねー。悩ましいので装丁ファンに引かれるのを覚悟でここ3~4年ハマっているキャンディーズライブ映像3つにしましょうか(笑)。
たまたまスーちゃんの追悼番組を見てキャンディーズを聴くようになり気が付くとDVD、Blu-rayや40周年記念豪華本まで(笑)。今ではすっかり黄色組※1です。

――ここ数年でハマり出したのがキャンディーズ!? 予想外のお答えです。関さんのオススメ、ぜひとも知りたいです!



【ぜひ観て欲しいキャンディーズ映像 3選】



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上の4つがBlu-ray「キャンディーズ・トレジャー」シリーズ。
下は左から「All About Candies BEST! DVD BOOK」
「キャンディーズ みごろ!ベストソングコレクション~永久保存版」
「CANDIES FOREVER」。いずれもDVD。



『悲しきためいき』
(DVD・Blu-ray「キャンディーズ・トレジャーVOL.2」 1977.11.20 千葉県民会館収録)
MMP※2のかけ声のもとベースが響きホーンセクションが鳴り渡る中、真っ赤なライトの下から現れる3人。スーちゃん、ミキちゃん、ランちゃんの順にターン。そしていっせいに客席を振り返り歌へ.........カッコイイ!
クライマックスでの、音楽的リーダーと言われるミキちゃんの伸びのいいハモりも聴きどころですね♪

『その気にさせないで』
(DVD・Blu-ray「キャンディーズ・トレジャーVOL3」 1978.02.09 芝郵便貯金ホール収録)
当時流行ったソウルやファンクの影響も色濃く、ライブでは『危い土曜日』と双璧を成すノリのいい曲。千家和也氏の歌詞もいいんですよねー。
アイドルらしい白い衣装とは好対照のクールな振り付けによる、イントロ・間奏・アウトロでの息の合ったダンス、特にミキちゃんのキレの良さは必見。

『ダンシング・ジャンピング・ラブ』
(DVD「CANDIES FOREVER」 1978.04.04 後楽園球場収録)
コール&レスポンスで客席が一体になって盛り上がる1曲。
ステージ上の紙テープの山につまずきそうになったり紙テープの重みでマイクのコードの自由もきかない中、それでも明るく元気に客席を煽るキャンディーズ。4時間にわたり50曲近くもパフォーマンスした後とは思えないほど激しく歌い踊る3人とそれに応える5万5千人のファンに、このファイナルカーニバルへの想いと情熱を感じざるをえません!※3

キャンディーズはライブ映像がたくさん残っているのでDVDやYouTubeでついつい観てしまいますねー。忙しい活動の中で全収録曲を3人で作詞作曲して作ったアルバム「早春譜」を発表したりと当時のアイドルとしてもかなり先鋭的なんじゃないでしょうか。とか言いつつ興が乗ってきたのでおまけを(笑)!

【おまけ】『わな』だけじゃない!ぜひ聴いて欲しいミキちゃんメインボーカル 3選



『IT'S VAIN TRY TO LOVE YOU AGAIN』
ストリングスから壮大に始まるイントロ、そして伸びやかなボーカルに胸アツ!作詞作曲はミキちゃん。

『さよならの朝』
ボサノバ調のアレンジに抑えたハスキーな歌声がマッチ。こちらもご本人作詞作曲。

『オレンジの海』
泣きのギターに切ないボーカル、夏の終りの景色が目に浮かぶ喜多條忠氏の詞もたまりません。

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ここ2~3年で関さんが集めたレコード、本、DVD。
関さんいわく「中古レコード店や古本屋で見かけたら買っている程度」
とのことですが、写真から圧倒的熱量が伝わってきます......!
「目下の悩みはプレーヤーがないのでレコードが聴けないことです(笑)」(関さん)。
......な、なんだってーーーーー!?!?




※1 3人のイメージカラーに合わせ、ランちゃんファンは赤組、スーちゃんファンは青組、ミキちゃんファンは黄色組、と呼ばれている。

※2 MMP(ミュージック・メイツ・プレイヤーズ)キャンディーズのバックバンド。のちに新田一郎氏を中心に選抜されたメンバーが「スペクトラム」に。

※3 解散コンサート「ファイナル・カーニバル For Freedom」の完全版はいまだ発売されておらず全曲収録の映像化が待ち望まれる。



★ジャケ萌えMEMO★
私が「アイドルについて答えてくれ」って言ってるわけじゃないです! そんなことはありませんから! デジャヴな流れなのはたまたまですから!......にしても、アイドル強し。一体どういうことなのでしょう。デザイナーとアイドルの関係は明らかにしておかねばなるまい!! こうなったらどこかでデザイナー同士でアイドルを語る対談、どこかでやらせてください! 計4回に渡ってお送りしてきた"デザインワーク・オブ・関さん"。「絵を仕事に」と上京してきた少年が、今やコミック装丁の第一線で活躍しているなんて胸が熱くなるお話。これからも関さんの装丁を楽しみにしています。 関さん、ありがとうございました!



ジャケ萌え!バックナンバー
「ジャケ萌え!」1冊目『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』【前後編】
「ジャケ萌え!」2冊目『わたしの宇宙』【前後編】
「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】『白暮のクロニクル』編
「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】『重版出来!』編
「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】『機動戦士ガンダム サンダーボルト』編

(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/



関連リンク
株式会社ボラーレ


【初出:コミスン 2015.06.10】

キャンディーズ,ジャケ萌え,機動戦士ガンダムサンダーボルト,白暮のクロニクル,連載,重版出来!,関善之