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週刊スピリッツ

2015.06.06

「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】『白暮のクロニクル』編

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読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画が「ジャケ萌え!」です。
装丁を見るだけで内容が気になってしまう、そんなたまらない"見た目"をしたおススメ単行本をピックアップし、見どころや舞台裏などを紹介していきます!

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第3回目は、さまざまな作品、出版社、コミックレーベルで縦横無尽に活躍するデザイン事務所・ボラーレを率いる関善之さんにスポットを当て、"デザインワーク・オブ・関さん"として3作品の装丁をご紹介します。

最初の作品は、人間だけでなく不老不死の種族「オキナガ」が存在する世界を舞台に描かれる、ゆうきまさみ先生の日常系×非日常ミステリー『白暮のクロニクル』。シックな色合いと、謎に満ちた物語を予感させるジャケット。完成までのお話を伺ってきました!

ドキュメント! 装丁が決まるまで ~白暮のクロニクル編~


[0]まずは、連載スタート前のロゴを考える

ロゴデザインは1話の原稿前段階のネームを読み、そこからイメージを広げていきます。読み進めるうち本格派ミステリーという印象を受けたので、ロゴの大ラフではそれを意識したものもありますね。いくつかのパターンを提案し、その中で選んで頂いたロゴ案をブラッシュアップした上、アレンジを加えつつ再提案。最終的にゆうきさんが「これがいい」とおっしゃってくださったものに決定しました。

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手書きでロゴのアイデアを広げていきます。


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1話の扉ページにロゴをレイアウトしてみて、イメージを膨らませます


[1]単行本発刊に向けて打ち合わせ&提案

単行本の打ち合わせは基本的にご本人に直接お会いして進めていきます。私の場合は近況のお話や雑談を枕に徐々に仕事の話になっていくことが多いですね(笑)。毎回必ず作家さんや担当編集さん装丁イメージをお聞きするようにしています。
一方で、私もあらかじめアイデアを準備していますね。『白クロ』では按察使文庫(あぜちぶんこ)で魁が佇んでいるもの、謎めいた色気のある雰囲気で「この少年は何者だろう?」と思わせるもの、ミステリードラマや映画のオープニング映像のように思いきった大胆なレイアウトのもの。この3つを提案しました。

これは私が描いた、イメージを伝えるためのスケッチです。

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[2]ゆうき先生がイラストを描く

私の提案を見てくださったゆうきさんが、いくつかのアイデアを絵にしてくださいました。

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これらイラストをレイアウトに落とし込み吟味した結果、1巻のカバーは現行のぬいぐるみを持っている絵に決定しました。ちなみに、パウチに入った血液(実際は血の味に似せたサプリ)を飲んでいる魁のアイデアも面白かったので、こちらは2集にそのまま流用しています。

カバーの表1から表4、そして単行本本体の表紙へと3段階で魁の行動を連動させ時間の経過を表現。この段階でカバーのメインカラーも提案します。地色のメインカラーは血の色やオレンジのような鮮やかな色合いでも良かったのですが、あえてシックなグレー系を選択。華やかな本がたくさんある書店の中で「棚の一部分が、なぜか凹んで見えるぞ!?」と感じてもらえたら面白いんじゃないかと、わざとトーンを落としてみました。

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提案したカバーのメインカラーは、どれも渋めの色。背表紙のタイトルはロゴタイプにするかフォントにするかまだ迷っている段階です。

[3]彩色

「ゆうきさんは描いてきた作品も多彩で単行本をたくさん出されている方なので、何か新しいことができないか」と考えた結果、鉛筆画にしてみたら面白いかもと思いついたんです。そこで線画はモノクロで描いていただき、彩色はデザイナーサイドでやる流れになりました。

念の為、ペン入れした絵も描いていただいて鉛筆画・ペン画ともに彩色を施してみたら、やっぱり鉛筆画の方がこの本にぴったりくるかなと。最初のアイデア通り鉛筆画が採用となりました。人物の色に関しては明暗をハッキリさせたミステリー感のある仕上がりを目指しています。

[4]バックの数字と英文で「クロニクル」を表す

背景に数字や英文を入れたのは「クロニクル(年代記)」を意識しています。ミステリーでよく見かける、クエスチョンマークのような記号や英字新聞のコラージュが敷いてある雰囲気を踏襲しようと編集さんに英文を作ってもらって配置しています。

1番前の層に主人公とタイトル、その後ろに西暦が書かれていて、さらにその後ろに英文が入っているといった感じでいくつかのレイヤーに分かれています。読者の方にもこのレイヤー自体に年代記としての奥行きを感じてもらえたら嬉しいですね。

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そして『白暮のクロニクル』の装丁が完成です! 渋めの色にすることで「目を引いた」という読者の方もいたようです。

おまけに4集でのゆうきさんへのカバーアイデア出しを。最終的に描かれた本体表紙イラストは超セクシーになりました。ぜひカバーをめくってご覧になって下さい。

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関さんが描く魁、かっこいいっす! 特に胸元が開いてる魁がたまらん......!


 

単行本データ


『白暮のクロニクル』(1~5集 以下続刊) ゆうきまさみ
[判型]B6判(127×180mm)
[カバー] Nプレミアムステージ ピュアホワイト 157g 4C+特色1C
[編集] 山内菜緒子、井上翼、瀬尾亞佑
[デザイナー] 関 善之(ボラーレ)


★ジャケ萌えMEMO★
まだあらすじも知らなかった私が『白暮のクロニクル』を書店でひと目見ただけで「ミステリーだ」と直感的に思った理由は、こうして関さんやゆうきさん、編集さんが"いかにミステリー感を出すか"を考えていたからなんですね! 「年代記」のように象徴的な形が存在しないものを表す時にどんな選択をするか? はデザイナーのみなさんによって違うので、ジャケ萌えとしては注目度が高いポイントです。


→「ジャケ萌え!」3冊目【Design Work of 関善之】『重版出来!』編

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「ジャケ萌え!」2冊目『わたしの宇宙』【前後編】

(ライター:川俣綾加)

フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/


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関連リンク
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【初出:コミスン 2015.06.06】

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