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「イイ言葉」と「イイ会話」、いろいろ救われるポジティブ・コメディ『子供はわかってあげない』/【連載】深読み新刊紹介「読みコミ」(5)

2014.11.27

発売されたばかりの作品、いま注目したい作品、まだまだ押したい作品......
コミックを長く「店頭」からながめてきた視線で選ぶ、
元・まんが専門店主の深読み新刊紹介。

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第5回『子供はわかってあげない』上巻・下巻 田島列島(講談社刊)



日本語は時代とともに柔軟に変化していくところがその特性のひとつだという。会話もそうだ。この作品の会話に使われる言葉(セリフ)は面白い。ブロークンで新鮮な言葉遣いに反応する読者のアンテナを適度に刺激する、そんなやりとりがたくさん埋め込まれている。一般にマンガや映画や音楽を好む人たちは、そこから何かを感じ取りたいからそれに時間やお金を費やしている。そこには好きな感覚を繰り返し求めるニーズもあるが、その繰り返しの輪からの"逸脱"に手応えを覚える人たちもいる。奇をてらうわけではない。予定調和されない言い回し、ヘンな会話、ヘンな文脈の中に転がっている真実の宿ったっぽい言葉。使い慣れ、聞き慣れた言葉では心が動かないからこそ、少し狂っているくらいの、聞いたことのないメロディみたいな、表面を突き破り言語中枢に直に触れるような言葉が好まれるのだ。そしてそんなヘンだけどリアルな言葉の群れは、やはり少しヘンだけど信憑性のあるストーリーを紡ぐ。

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『子供はわかってあげない』上巻・下巻 田島列島(講談社)



この作品、表面はコメディだけど中身はわりとシリアスで、話運びはライトなミステリー仕立てになっていたりもする。ネガティブな要素は濾過され、痛みは散らされ、まずまず居心地のよい日常に身を預け、"時代の肌感覚"みたいなものに包まれて、感性の周波数帯域が一致する人たちに響くほどよい"変形"を味わえる。時代が生んだ一過性の方言みたいな言葉や会話の様式。これらは作品の受け手の側に育ちやすい感覚であって、その近くにいることこそ新人のアドバンテージなのだと思ったり......色々するけど結局のところ、こうした言葉や会話への取り組みは、人と人のコミュニケーションを信じるからこそできることなんだろう。圧巻は下巻P.150からP.164に及ぶ主人公ふたりの相互告白シーンだろう。"イイ言葉"と"イイ会話"は信じるに足るものだと、心から思うことができて、なんかいろいろ、救われる。ブロークンであれ、何であれ、会話することで次々と問題がほどけていく。そんなポジティブな会話の連射でこの作品はできている。

ちなみにこの作者の作品に『おっぱいありがとう』という短編がある。読むなり、個人的にはレアな「雑誌を切り抜く」という行為に走ってしまったお気に入りの一篇だ。『子供はわかってあげない』を読んだ後であらためて読み直してみたけど、やっぱりいい。この作品が収録された短編集はまだ出ないのだろうか?

(文・南端利晴)

【初出:コミスン 2014.11.27】

子供はわかってあげない,田島列島,読みコミ,連載
ABJ 10401002

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