2014.09.29
【新連載】「ジャケ萌え!」1冊目『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』【前編】
読むだけじゃない、見て触って嬉しい単行本。なんだかカッコイイ! 可愛い、きれい、オシャレ!そんなグッとくる「マンガの装丁」の魅力をお届けする連載企画が「ジャケ萌え!」です。
装丁を見るだけで内容が気になってしまう、そんなたまらない"見た目"をしたおススメ単行本をピックアップし、見どころや舞台裏などを紹介していきます!
第1回目は、『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』。
装丁はcozfishの祖父江慎さん&鯉沼恵一さんによるものです。
デザインの現場はどこも忙しいものですが、『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』の装丁も、短い期間に何度も検討を重ね作られています。
ドキュメント! 装丁が決まるまで
[1]2014年3月26日
『SEIKI』刊行の約2ヶ月前、デザイナー鯉沼さんから、打ち合わせ内容をもとにした最初の台割※が江上編集長に届く。
トリビュートイラストは巻末にする? 全ページ4色にする?
本文ページはどの紙を使う? 加工はこれを使いたいけど、どう?
......など、まだまだまとまらない状態。デザインと、台割を同時並行で相談しつつ決めていきます。
※本の設計プランのようなもので、どのページに何を入れるかが書いてある
[2]その12日後
カバー、オビの方向性や、本文ページに使う用紙に漫画雑誌で使われているものと同じものを使うなどより具体的な提案が。
これに伴い台割も変更。特に、用紙についてのプランを細かく考えています。
[3]そこから2日後
使用するに適しているか、そしてコスト面でも適しているか。用紙についてのプランが決まってきました。
[4]さらに5日後
この後も台割は変更となりますが、大まかに決定。目次、見開き扉、総扉の展開イメージなどの提案も。
目次のラフは完成バージョンに限りなく近い!
[5]さらにさらに2日後
カバーとオビには白黒ではなく、ビビッドな色合いを使い、書店で目を引くような新鮮なイメージを使うことに。カバーのソデに印象が強烈な顔の絵をもってくるか? などアイデア出しが行われ......
「俺」の文字は三代目魚武濱田成夫氏、「月」の文字はMAYAMAXX氏によるもの。
どちらも最終的には表紙の裏表に使用されることとなった。
[6]8日後についに!
カバーまわりのデザインが決定! カバーの左右で、土田世紀氏の激しさを秘めた初期とやわらかさをもつ晩年を表す絵を採用する......というアイデアに辿り着きました。
余白になっている部分は、このあと土田世紀氏のプロフィールが入ることに
単行本データ
『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』 世紀のプロジェクト
[判型]A5判(148×210mm)並製アジロ綴じ 343ページ
[カバー]ヴァンヌーボー 片面4C ニス+箔押し 四六判130g/m2
[編集責任]江上英樹
[デザイナー]祖父江慎一+鯉沼恵一(cozfish)
★ジャケ萌えMEMO★
ここまで決まるのに、合計1カ月もない......。想像以上に時間が無かった!
祖父江さんも鯉沼さんも、江上さんも本当にお疲れさまですと言いたくなるスケジュール感。
この間、ほかの案件も進めつつのこのやりとりなので、頭の中がギュウギュウに詰まって叫びたくなるような瞬間もきっとあったと思います。
装丁に正解は無いのだと思います。時間とコストとやりたいこと。決められた中で、この自分たちの考えうるベストなデザインに落とし込んでいったのです。
後編では、祖父江さん・鯉沼さん、江上さんに「このデザイン、どう決まったの?」を聞いてみます!
→「ジャケ萌え!」1冊目『SEIKI -土田世紀 43年、18,000枚の生涯-』【後編】はこちら
(ライター:川俣綾加)
フリーライター、福岡出身。デザイン・グラフィック/マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブ、『マンガナイト』などで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』 http://ayamata.jugem.jp/
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SEIKI-土田世紀 43年、18,000枚の生涯- 編/世紀のプロジェクト
【初出:コミスン 2014.09.29】
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