トップ  >  堀江貴文さん/「花沢健吾さんにはリア充にならないでほしいよね(笑)」◆屋根の上のマンガ読み ( 2014/04/28 )
ビッグコミック

2014.04.28

堀江貴文さん/「花沢健吾さんにはリア充にならないでほしいよね(笑)」◆屋根の上のマンガ読み

ビッグコミック

ビッグコミック連載の人気コラム「屋根の上のマンガ読み」をコミスンでもお届け!






yanenoueno1-920x719.jpg


第50回 堀江貴文
《プロフィール》1972年生まれ、実業家。ライブドア元代表取締役CEO、現在はSNS株式会社ファウンダー兼従業員。ジャンルを問わず様々なビジネスの立ち上げに尽力中。2013年に書評サイト「マンガHONZ」をスタートした。








「面白いのに知られてないマンガを掘り起こしていきたい」






20140428_yane1.jpg




 花沢健吾さんの作品で、いちばん面白いのは[ルサンチマン]ですね。むちゃくちゃ完成度高いですよ。モテない男が特殊な装置をつけて仮想現実の世界に入って、AIキャラクターと恋に落ち、仮想世界に込められた秘密に巻き込まれていく話です。彼の場合「モテない男を描く」ことが創作の原動力になっている気がするので、リア充にならないでほしいよね(笑)。
 いま僕はVR(バーチャルリアリティ)のことにすごく興味があって、研究者や企業の人たちと一緒に仕事してるんですけど、[ルサンチマン]が彼らのバイブルになってるんですよ。「あの世界を現実化するのが僕らの目標だ」みたいな、VR業界や研究者たちの共通言語になってます。最近のスマートフォンの中には、加速度センサーとか地磁気センサーが入ってますが、そういうものをヘッドマウント(頭部装着型)ディスプレイに組み込んだり。触覚や皮膚感覚を得る技術の研究も進んでいますし、仮想世界を360度歩き回れる機械もある。みんながそういうチャレンジをしているので、もう5年以内には[ルサンチマン]の世界ができちゃいますね。それだけ影響を与えてるっていうことも含めて、いいマンガですよね。






20140428_yane2.png

[ルサンチマン] ©花沢健吾/小学館







いい作品を掘り起こす






 いい作品なのに知られてないマンガ、けっこう増えてきてるじゃないですか。いまはマンガ雑誌を読む人も少なくなったし、ウェブから出てきたマンガにも面白いものがたくさんある。だから、いいマンガを知るためのレコメンド(おすすめ)エンジンが大事になってくると思って、書評サイト「マンガHONZ」を始めたんです。毎日更新をして、面白いマンガをどんどん掘り起こしていこうと。
 マンガHONZの書評でいちばん最初に取り上げたのは、[駅前の歩き方]です。B級グルメの本なんですが、B級グルメって言葉が流行する前の作品で。15年前くらいに富士宮のやきそばとか、伊那のローメンとか、行田のゼリーフライとか、そういうのを紹介してて、これはすごいと思ってたら、その何年後かにB級グルメブームが来たんです。
 最近レビューを書いた[かくかくしかじか]、これもいいですよ。ちょうど同世代で、自分の人生ともシンクロしてるから面白いのかもしれないですけど。人気漫画家になるまでの葛藤というか、地元を出て大学を卒業して、まともに仕事もしないまま、でもいろいろ試行錯誤してるという自伝的エッセイなんですが、すごく共感しましたね。





マンガは色あせない






 マンガHONZでは、絶版になっている本を紹介するとき、あらかじめ出版社に電子化をオファーするようにしています。そうすると、そこそこ売り上げが立つと思うんで。マンガはわりと読む時期を選ばないというか、あんまり内容が色あせたりしないじゃないですか。たとえば[駅前の歩き方]をいま読んでも楽しめると思うし。だからまったく知られていないマンガでも、ここからヒット作が生まれるぐらいの勢いでやっていきたいなと思ってて。
 いま僕たちの間で盛り上がっているのは[ナナのリテラシー]ですね。まさに電子書籍をどう作ってどう売っていくのか、どういうふうに対応していくのかという話です。
 僕も電子書籍でマンガ出してるんですよ。マンガが好きすぎて。獄中生活を描いた「刑務所シリーズ」のマンガの部分だけを切り出した[刑務所いたけど何か質問ある?]。面白いですよ、けっこう。自分で言うのもなんですけど。





20140428_yane3.jpg





《堀江貴文さんのおすすめ作品》

 [ルサンチマン]花沢健吾

 [かくかくしかじか]東村アキコ

 [駅前の歩き方]森田信吾

 [ナナのリテラシー]鈴木みそ

 [刑務所いたけど何か質問ある?]堀江貴文、西アズナブル





《こんな作品もおすすめしていました!》
 [限界集落(ギリギリ)温泉]鈴木みそ
 [ターンマークの鷹]東史朗、ダイナマイト鉄
 [チャンネルはそのまま!]佐々木倫子
 [JIN-仁-]村上もとか
 [山本耳かき店]安倍夜郎





■次回予告:第51回 細野晴臣(ミュージシャン)

おどろおどろしいムードの作品がお好きだという細野さん。

諸星大二郎作品や[アイアムアヒーロー]、そして

レコード時代からつながる「ジャケ買いの楽しさ」を語る!!

<5/10(土)更新予定>







【「屋根の上のマンガ読み」バックナンバーはこちら!】





(取材構成:ビッグコミック編集部・根本和佳(DAN)、撮影:松原康之)



【初出:コミスン 2014.04.28】

ビッグコミック,ルサンチマン,屋根の上のマンガ読み,花沢健吾