トップ  >  【連載コラム】『クロサギ』原案者・夏原武が新クロサギの〝裏〟側を大暴露!! ( 2014/03/28 )
週刊スピリッツ

2014.03.28

【連載コラム】『クロサギ』原案者・夏原武が新クロサギの〝裏〟側を大暴露!!

週刊スピリッツ

【第1回】裏クロサギ 前編

詐欺師を騙す詐欺なんてどうやって考えているのか? 夏原武先生が『クロサギ』の誕生秘話を語る!






毎週金曜日に発売されている廉価版コミックマイファースト・ビッグ。昨年5月に発売された『新クロサギ』「この世に確実に勝てる方法などない」に掲載された幻のインタビューを再録!! 誕生秘話から創作上のルールまでたっぷりお見せします!





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《プロフィール》
夏原武。1959年生まれ。雑誌編集者を経てフリーに。裏社会やアウトロー系の取材を長年続け、『現代ヤクザに学ぶ最強交渉・処世術』(宝島社文庫)、『極道のすべらない話』(宝島SUGOI文庫)など著書も多数。『新クロサギ』以外でも、漫画原案者として各出版社で活躍中。








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取材担当:黒崎・氷柱







「最初は1年で終わると思っていました!!」






夏原「もう10年も続いているんですね。正直、最初は1年で終わると思っていました。もともと『クロサギ』の話は編集部からきて、詐欺師を騙す部分で私が呼ばれたんです。でも、元の詐欺が荒唐無稽なネタが多かったので、結局、全部やることになりました」




氷柱「あの~、夏原先生って一体、何者なんですか?」




夏原「いやいやいや、私は本当に普通の、ただのライターですよ(笑)」




黒崎「俺と同じ匂いがしそうだけど...」




夏原「基本的な担当は、詐欺の展開・やりとりは私、全体のストーリーは黒丸さんです。彼女はとても真面目で、作品のためにお互いが自由に意見を言いつつもトラブルがないイイ関係がずっと続いています。それに、女性特有の品格のような透明感が出るので、内容とのギャップが生まれ、それが作品の味になっていると思います」




氷柱「黒丸先生は女性だったんですね」




夏原「詐欺師は年齢が高いので、たぶん彼女、日本で一番オヤジを描いてる漫画家じゃないですかね(笑)」






「『新クロサギ』は創作上での3つのルールがあります!」






夏原「クロサギは日本社会で実際に起きている詐欺を扱ってますが、作品を作る上で3つのルールを守っています。1つ目は、現実の法律は破らない。もし破れば、一気に現実味がなくなってしまうからです。2つ目は、暴力ではなく、知力で解決をする。よくあるのは、 暴力や、悪い奴を倒すためにさらに悪い奴の力を借りる解決法ですが、それをやってはあまり意味がないと思うんです。なので、知力で勝負をしていこうと」




黒崎「俺、暴力嫌いだし、ピッタリだ」




夏原「3つ目は、金額のインフレーションはしない。詐欺によって飛び交う金額は違います。100億円の詐欺の後でも、インパクト重視で金額を上げず、100万円の詐欺も丁寧に扱うことでリアリティを崩さないようにしています。金額よりもキャラクターや人間の盲点とかを見せ場にしています」




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夏原「『新クロサギ』はマイファースト・ビッグ向けの作品だと思います。扱う詐欺によってはどうしても特殊になりやすく、大企業が絡む難しい話の後には、一般の人が共感しやすい話を載せようと意識しています。でもこれなら、気軽に手に取れて、一冊読めば興味がある話を見つけやすい。詐欺はコミックになるほど巷に溢れています。『新クロサギ』を読んで気を引き締めてほしいですね」







必勝法詐欺(BC『新クロサギ』第1集に収録)に絡む裏話

詐欺の適応範囲が広がらない理由は××だから!?






夏原「パチンコ必勝詐欺や競馬必勝詐欺などは、ベースのパチンコ産業や競馬産業が国の産業になっています。なので、元の問題点は誰も触れられない部分があるんです」




黒崎「お国が認めれば賭博にはならないってことね」




夏原「ある人との話で、詐欺の適応範囲を広げないのは、もしそれをやったら国会議員や芸能人が大勢捕まってしまうからじゃないか、と。国会議員は、写真を一緒に撮られたり、名前を使われたり、詐欺師によく利用されてますからね。だから、これ以上は詐欺の適応範囲は広がらないかもしれません。警察が頼れないからこそ、自分の身は自分で守るんです」





リアルリンク事件簿① 不動産詐欺(耐震強度偽装)


 建物には建築基準法に定められた耐震基準がある。しかし、2005年に姉歯一級建築士らによってその基準を偽装した耐震強度偽装事件(欠陥住宅)が話題となった。夏原先生はその半年も前からこの問題を作品で扱っている。

夏原「事件になる前から調べていて、あまりにもずさんな建築に、正直驚いた」






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YSコミックス『クロサギ』第8巻掲載。





リアルリンク事件簿② 宝石詐欺


 2004年、プレゼント選びを手伝ってほしいと詐欺師が声をかけ、店員にその場にいたお客を家族だと誤解をさせて宝石を持ち逃げする詐欺を扱った。2010年、台湾で似た事件が発生。

夏原「台湾の新聞に『クロサギ』に手口が似ていると紹介されて驚きました」。






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YSコミックス『クロサギ』第5巻掲載。





リアルリンク事件簿③ 振り込め詐欺(恐喝詐欺)


 オレオレ詐欺や還付金詐欺など、言葉巧みに人を騙すのが、振り込め詐欺だ。現在も事件数は多く、『新クロサギ』第1巻「二重詐欺」にも登場。2007年には『恐喝詐欺』のタイトルで扱った。

夏原「今は役割を決めた劇場型詐欺が猛威を振るっています」。






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YSコミックス『クロサギ』第17巻掲載。







次回予告
新クロサギの〝裏〟側を大暴露後編







氷柱「次回もまだまだ夏原先生の大暴露は続きます。お楽しみに!」








夏原先生の超貴重コラムも掲載されたマイファースト・ビッグ『新クロサギ』「"平等"という名の弱者救済システム!?」は3月28日発売です!





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マイファースト・ビッグ『新クロサギ』「"平等"という名の弱者救済システム!?」







(取材・文:佐々木翔、撮影:関純一、デザイン:三辻陽子(DAN))

関連リンク
マイファースト発売情報


【初出:コミスン 2014.03.28】

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