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30歳で絵を描き始めた大阪の主婦が41歳で人生初単行本を出すまでの作業工程

週刊スピリッツ

2013.11.11

先日お伝えいたしました「30歳で絵を描き始めた大阪の主婦が41歳でスピリッツデビューするまでの人生」ですが、関係者一同思いもよらぬ反響がございまして、掲載以来ほぼずっと当サイトのランキング上位に入り続けております。

それならば、という事でお送りする続報は、「大阪の主婦」こと、るなツー先生が1年間『モバMAN』で連載していた作品『女子のてにをは』がついに単行本になりますよ、というお話。1冊の単行本のカバーイラストが完成するまでに、どのような試行錯誤が行われるのか、見てみましょう。

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こちらのカバー用イラストが、どのような過程を経て生み出されるのか見てみましょう。




「ジャケ買い」超重要!!

漫画作品の圧倒的な供給過剰が言われる昨今、昔のように、雑誌で連載を追いかけて、単行本になるのを心待ちにして書店さんに向かう......などという事はごく一部の人気作・人気雑誌にしか当てはまらない圧倒的なレアケースとなっています。世にあふれる単行本の多くは、第1巻が店頭の新刊平台に並んだ瞬間にはじめて、この世に存在する作品として読者に認知されるのです。当然、新刊台に置かれた商品の多くはシュリンクされて中身が読めませんので、作家さんと編集部はいかに売れそうなイラスト、売れそうな装丁を作り上げるか、「とりあえず手に取ってみようかな」と思ってもらえるような仕掛けを仕込めるか必死になって考えることになります(先日からある種の顰蹙を買うのを承知で作家さんの年齢をやたらと強調しているのもまさにこの理由からです。中身にはもちろん自信がありますが、とりあえずお買い上げいただいてビニールを破ってもらわないと何も伝わりませんからね)。

そんなわけで、週刊誌など一部の例外を除く漫画業界では「表紙一発買い」の重要性がかつてないほど高まっているのですが、るなツー先生の『女子のてにをは』の場合も、自信のある中身を少しでも多くのお客さんに見ていただくため、あれこれと策をめぐらすことになりました。


頼りになる軍師を見つけよう!!

「ジャケ買い」を狙う場合、デザインをどなたにお願いするかは非常に重要です。同じイラストを使用しても、どのように料理するかで出来上がりはまるで変わってきますし、後述するように構図を決める際にも役立つ助言をもらえますので、編集者なら誰しも「カッコいい系なら○○事務所の○○さん」「萌え四コマなら△△さんのデザインがすごくいい」など、自分なりのデザイナーさん脳内リストを持っているものなのです。今回は『くーねるまるた』『共学高校のゲンジツ』など、カワイイ系の装丁でスピリッツ作品でも多くの重版作品を担当してくださっているB事務所のKさんにお願いすることにしました。

オファーを出して『女子のてにをは』のプリントアウトをお渡ししたところ、幸いなことに引き受けていただくことができました。『三国志』や『信長の野望』をプレイしていて諸葛亮や竹中半兵衛を味方にした時のような気分です。非常に頼もしい。
 

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こういう装丁を手がけたデザイナーさんなので今回の作品ともきっと相性がいいはず。




ラフを作って構図を決めよう!!

デザイナーさんが決まったところで、るなツー先生と打ち合わせして構図を決めます。1巻目なので特に慎重にやり取りをしました。まず、るなツーさんから5案ほどラフが届きます。

teniwoha_rough_01teniwoha_rough_02teniwoha_rough_03_01teniwoha_rough_04teniwoha_rough_05

こんな感じのラフが最初に届くわけです。




いただいたラフを元にデザイナーさんと担当者で話し合いをして出た結論は、「もうちょっと物語性が欲しい」というものでした。どの構図も基本的に一人の女の子がおすまししているので、1枚の絵に隠された人間関係や物語を想像してもらうには足りないのではないか、という事です。通し番号の③にはその要素があるように思いましたので、この路線でもう何パターンか考えてもらえないか、とお願いしました。

その結果を踏まえて るなツー先生から送られてきた構図がこれです。

teniwoha_rough_06 teniwoha_rough_07 teniwoha_rough_08

いずれも、複数の女の子たちが絡んだ日常のひとコマの切り抜きです。1枚のイラストから物語が膨らんでいく感じもして、グッと良くなりました。特に⑥番のマフラーネタがいいと思ったのですが、ここでデザイナーさんから「もう少し、引いたり、カメラを振ったりして動きを出せないでしょうか」とのご意見をいただきました。ならば、という事でマフラーネタ一本に絞って考えてもらったのが以下のラフです。

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寄った絵よりも面白味が出ましたし、デザイン段階で寄ったり引いたりを色々試せるので自由度の高いデザインが可能になりました。 さらに、マフラーのなびき方で動きを出したり、カメラを上に振って変化を付けてみたのが以下のラフです。

teniwoha_6_re_05teniwoha_6_re_04teniwoha_6_re_03

カメラ位置を上に振ってみたフカンの構図が良かったので、表情も色々変えてもらいました。

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二人ともカメラ目線でパンチの強さを取るのか、片方の子に目をつぶらせて日常を切り取った感じを重視するのか、難しい判断ですが、三者話し合いの結果、目をつぶった方のラフを採用することになりました。 上記のラフを元に、るなツー先生が完成させたのが以下のイラストです。


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着色でひと悩みしよう

表4(裏表紙)に使用する小物のイラストと、カバー用のもっとも重要なイラスト。ただ、私はこれを見た瞬間、「何か違うな」と思いました。上手く言えないのですが、ラフを見てイメージしていたのと何かが違うのです。何が悪いか言えないのにダメ出しをするというのは基本やってはいけないことなので非常に悩みましたが、このままやっても上手くいかない予感がバリバリします。結局、自分の直感を信じてその場で「なんか違うと思います」と正直に伝えました。ダメ出しをされた るなツー先生の第一声は「わー、私もなんか違うと思ってたんですけど、どこが悪いんか全然分からへんのですわ~!!」とのこと。とりあえず、同じ違和感を作家さんご自身も感じていたことがわかって一安心です。

これはるなツー先生の大変な長所なのですが、社会人経験も長い彼女はとにかく約束した締切にはその時点でのベストを尽くした何がしかを提出し、そのうえで納得がいってない場合には改善案を一緒に考えようとしてくれるのです。けして、納得がいってないからという理由で何も提出することなく締め切りを無視したりはしません。

まあとにかく、お互いに違和感を感じているのは分かりましたが、その正体が何なのかは分からないままでした。二人で考えていても埒があかないのでデザイナーさんに相談したところ「全体的に彩度を下げればいいんじゃないでしょうか?」とのご意見とともに、絵を加工したサンプル画像が送られてきました。




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素晴らしい!! 絵を描かない人間なので「彩度を下げる」というのが具体的にどういう事をさすのかよく分かりませんが、とにかく思い描いていたイメージにぴったりです。るなツー先生も満足しているようでした。 どうも、曇天の雪景色なのに人物の色が鮮やかに出すぎていて、不自然な感じがしたのが違和感の原因だったようです。実は、るなツー先生のパソコンのスペックの問題で背景と人物を同時にいじることができず、別々に彩色して後で合成していたため、人物と背景で色調を合わせることが難しくなっていたのです。印税が入ったら新しいパソコンを買うと誓う、るなツー先生でした。

この続きは商品をご覧ください。 単行本『女子のてにをは』の発売は11月29日!!

結局、現在あるイラストをデザイン段階で加工してもらい、合わせてロゴ、著者名などを入れてもらう事になりました。イラストが確定して、カバーに関しては、作家さんの作業は終了です。 本来、ここからがデザイナーさんのお仕事本番になるわけですが、かなり長い文章になりましたし、何よりも今現在まだ作業中でどのような表紙になるのか決まっておりませんので、本稿はここまでとさせていただきます。 るなツー先生の続報やインタビューは引き続き当サイトにて掲載していきますので、ぜひ今後もごひいきにお願いいたします。   また、11月11日発売のビッグコミックスピリッツにて、るなツー先生の短編『のすたるちくたく』も掲載されております。単行本より先に先生の実力を見てやろうじゃないか、という皆様、是非よろしくお願いいたします。





(担当:モバMAN編集部・有井大志)

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女子のてにをは 1 るなツー


【初出:コミスン 2013.11.11】

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ABJ 10401002

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