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ビッグコミック

2018.10.22

ビッグ&オリジナル第5回合同新作賞――連載作家による緊急アドバイス対談 1

ビッグコミック


一気に漫画家デビューを目指す登竜門。第5回ビッグコミック&オリジナル合同新作賞の締め切りが迫ってきた。そこで今回の「審査員」を務める安倍夜郎氏と「第1回大賞受賞者」である鈴木良雄氏が、入賞を目指すための勘所をガチで伝授する、アドバイス対談を2日連続でお届けします。

合同新作賞の応募要項はコチラ
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安倍夜郎(あべ・やろう)
2003年に第53回小学館新人コミック大賞一般部門の大賞を『山本耳かき店』で受賞。その後、ビッグコミックオリジナルにて『深夜食堂』を連載開始。ドラマ化、映画化もされている同作は、現在も大人気連載中。

鈴木良雄(すずき・よしお)
2014年に第1回ビッグ&オリジナル合同新作賞の大賞を『田園にかこまれて』で受賞。2015年、ビッグコミックオリジナルにて『フルーツ宅配便』を連載開始。各所から大反響の同作は現在も絶賛連載中。


応募するなら短い方がいいんです。なぜかというと、雑誌に載りやすいからですよ。――安倍夜郎


安倍 初めまして。

鈴木 初めまして。
――おふたりとも、違う賞ではありますが、新人賞からデビューし、現在ビッグコミックオリジナルで連載中という共通点をお持ちです。
鈴木 僕は、漫画家になる前、ラーメン屋さんにおいてある、 『深夜食堂』と『黄昏流星群』を読んでいました。

安倍 賞に応募されるまで、習作は描かれていたんですか?

鈴木 40歳過ぎで会社を辞めて、時間ができてから描くようになって。それまでは描いたことがなかったです。

安倍 広告のお仕事ですよね? 辞めたのは、おひとりで家で描けることがわかったからですか? それとも、会社に居たくなかったのですか。

鈴木 両方!

安倍 ははははは!

鈴木 仕事を変えたい気持ちがありました。だから応募したんです。安倍さんも小学館の別の新人賞出身ですよね。

安倍 ボクは若い時からずーっと漫画家になりたかったんです。新人賞に出すための作品を描くのに、時間がかかってしまいました。

鈴木 描けなかったというのは、お仕事をされていたことでの時間の制約ですか?

安倍 何を描いてよいのかわからなかったんです。鈴木さんは、応募作を描こうとした時に、何を描こうかすぐに出てきましたか?

鈴木 いやいや。応募作はコンビニエンスストアの話を描いたんです。知り合いがコンビニをやっていて、開店するまでの大変な様子をそばで見ていたので、面白いなあと思って。元々、デビュー作は70ページくらいあって、めちゃくちゃ長く描いちゃったんです。どうやっていいんだか分からないから、「とりあえず描いちゃえ!」って。新人の読み切りとしては、さすがに長すぎるので雑誌掲載時には、担当編集と話し合って短くしました。

安倍 それ、知ってます! 「いい作品なのに短くしなきゃならないんだよね」という噂は、伝え聞いていました(笑)。

鈴木 応募要項には長さの制限はなかったんです。だから、勝手に長いほうがいいんじゃないかなあと思って(笑)。

安倍 本当は、応募するなら短い方がいいんです。なぜかというと、雑誌に載りやすいからですよ。ボクが応募した賞は、当時は「32ページまで」という制限があった。だから32ページで描いたんです。ですが、32ページの新人の原稿を一冊にそのまま雑誌に載せるのは大変な事でしょ? 最初は増刊号に出るはずだったけれど、編集長が特別に本誌に載せてくれたんですよ。その時に、「もう少し短い方が載せやすかった」と教えてもらいました。

鈴木 そうなんですね。初めて知った!



 

(左)「山本耳かき店」©安倍夜郎/ビッグコミックオリジナル4月5日号掲載(2004年)
(右)「田園にかこまれて」©鈴木良雄/ビッグコミックオリジナル3月増刊号掲載(2015年)

安倍 増刊号に載るより、本誌に載る方が、読む人が多いんですよ。だから本誌に載るためには、24ページくらいの方がベターです。どうです、みなさん、役に立つアドバイスでしょ? 誰か連載中の先生が休んだり、原稿を落としたり、その時に載るのが新人の原稿ですから。

鈴木 ははははは。

――安倍さんは、現在も連載中の●●先生がお休みになって、急遽原稿が必要だって時に、デビューされたそうです。新人の方はことの次第がわかってから、枚数を決めたほうがいいですね(笑)。

鈴木 本当に大人の話ですね!

安倍 いくらたくさん描きたくても、「この先生が落ちそうだな」というのと、同じページ数で描くことをお勧めします。狙って描かないとね。冗談みたいに聞こえるかもしれませんが、カットして、22ページに圧縮してみるのは悪いことではないと思います。いらないところを削るのはいい訓練になります。プロの人から見たら、「ここがいらない」ってすぐにわかるんですけど、アマチュアはプライオリティがわからないですから。

鈴木 削れなかったから70ページもいっちゃったんだなあ(遠い目)。

安倍 人物やエピソードを取らないと減らないですからね。新人には難しい。


――おふたりはどこからネタを探すのか。誰しも知りたいことです。面白い話が毎回出てくるのはどうしてですか?


鈴木 それはもうひたすら想像。

安倍 え、取材じゃないんですか? いま、鈴木さんがお描きになられている『フルーツ宅配便』だったら、取材をするとなると毎回、デリヘルを呼ばなきゃならない。けど、実際に彼女たちを呼んだからって、いいネタを拾えるかはわからないですよね。

鈴木 はい。話は、友達から聞いたりして「そんなもんなんだ」と。想像で描かないとお金が続かなくなっちゃう! それに体験談を描くと、もっとつまらなくなっちゃうと思うんです。

安倍 ボクは飲み屋で聞いた話とか、自分の過去の体験だとか。「話」というよりも「シーン」が浮かぶかどうかですかね。今度の話で車椅子の同級生が出てくるんですけど、そのきっかけは、夏に同窓会がありまして、昔、散々不良だった人が車椅子で来ていたんですよね。それが「あ…」と心に残っててね。そこから想像するというようなことですかね。

――ちなみに、飲みに行くのは重要ですか?


安倍 重要だと思うけど(笑)。

鈴木 ははははは

安倍 何かを拾えると信じて。何かありそうだ、と。

鈴木 わかります。

安倍 「だめだ、もうダメだ。飲みに行くと何かあるかもしれない」と飲みに行きます(笑)。でも、おんなじ店に行くと、同じ話しか聞けないですよね。コの字カウンターや、大きなテーブルがあっていろんな人が来ている店がいいんですけど、都合のいい店はなかなかないし。大きな居酒屋に行くのは億劫になってきますし。

鈴木 そうですね。スナックに行ってカウンターに座ると見ず知らずの隣の人と話すことになって、「へぇ~そうなんだー」って。そういうのもありますね。

安倍 そういうの、いいですね。

鈴木 僕は人見知りなので、他人と口をきくまで時間がかかるんですけど。酒が入っちゃうと、楽しくなっちゃう。店の人が、「この人、漫画家でね」なんて水を向けてくれて、そうすると打ち解けて。だいたい、「デリヘル好きなんでしょ?」的な質問が最初に来ます(笑)。

安倍 ははははははは。



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[ビッグ&オリジナル第5回合同新作賞――連載作家による緊急アドバイス対談 2] へ続く