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ビッグコミック

2018.10.23

ビッグ&オリジナル第5回合同新作賞――連載作家による緊急アドバイス対談 2

ビッグコミック

11月30日に締切が迫った、第5回ビッグコミック&オリジナル合同新作賞。第一回に引き続き、「審査員」を務める安倍夜郎氏と「第1回大賞受賞者」である鈴木良雄氏による、入賞を目指すための勘所をガチで伝授する、アドバイス対談をお届けします。

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友達には「俺を出してくれ」と必ず言われます(笑)。――鈴木良雄


鈴木 そもそも 『フルーツ宅配便』は、「貧困女子」をキーワードに漫画にできないかな、というところから転がりだしたんで、デリヘルに詳しいわけじゃなかったんです。ネタは、うっすら浮かんだら離さないようにする。思いついた話が、結果的に自分の色だったりする。今のところそんな感じです。

安倍 ボクはネタ探しのために小説は読みますね。「こういう考え方の人がいる。こういう職業がいる」というのが知りたくて。あまりに飲みに行くと身体を壊すので、本を読みます。短編小説を読むことが多いです。映画も行きたいですけど、最近じゃ予約してから行かなきゃいけないのが嫌で。早く行ってもいい席が取れないでしょう。

鈴木 うちの方に来ると、めっちゃくちゃ映画館が空いてますよ。田舎だから。アクアラインに乗って来てくださいよ。

安倍 車の免許を持ってないんですよ。やることがないから漫画を描くんです、趣味がないので。料理はしますけどね。『深夜食堂』の場合、完成図ではなくて、料理途中の絵が必要な時がありますから。

――おふたりにとって、魅力的なキャラクターとはどんなキャラクターですか。

安倍 なんでもうまくいっている人じゃない人ですね。可愛い人なんじゃないでしょうか。おかしいところがある。たとえば、喫茶店でボクがネタを考えている時に、貧乏ゆすりをしているおじさんがいるんです。いっつも本を読んでいる。それも、株の本。面白いなあと思います。多分、金持ちにはなれないと思うんですよね。

鈴木 それは面白い。魅力的だ。僕は、読んでいると登場人物たちが、赤の他人というより、知り合いみたいな感じがしたほうがいいかなあと思います。

――自分の人生で出会った友達を、作品に描き込むことはありますか。

鈴木 丸々はないですけど、ありますね。

――この歳になれば、友達が財産だと思いますが、作家さんがどのように友達を作中に出していくのか興味があります。

安倍 ボクはいっぱい描いてますよ。似せて描いている場合もあるから。彼らは喜びますよ。「自分が出てる!」とかね。「ドラマになったら誰がやる?」と言い出す人とか。逆に、「俺を漫画に出してくれ」という人もいるけれど、それはあまり出したくない(笑)。そういうものですよね。

鈴木 はははははは。必ず言われますよね。

安倍 「面白いネタがある」といってくるんだけど、だいたい面白くない(笑)。

鈴木 はい。「50代漫画家あるある」かもしれない!


最初の3ページが面白くない人はダメですね。――安倍夜郎
いっそ、仕事と思って描くといいですよ。――鈴木良雄


――応募しようとしているこれからの漫画家に対する応援のメッセージをください。

安倍 この記事はいつに載るんですか?

――10月です。応募は11月末の締め切り。

安倍 じゃ、アドバイスはもう遅い。

一同 爆笑。

安倍 手直しするとかなんとか、の時期ですね。読み返してみて、最初の3ページがつまらなかったら直したほうがいい。ほころびが出てきたら、……今回は見送って次に出せばいい。デビュー作には締め切りがないんです。だからボクは40歳までかかってしまった。
だって、今から世に出ようという人が、冒頭3ページがつまらない作品で、よく世に出ようという気になるなあと思いますね。最初の3ページが面白くない人はダメですね。誰が評価しますか? と思うんですけどね。雑誌に載っている新人の漫画が、「必ず人に読まれる」と思って描いちゃいけないんです。だって読まれないもん。飛ばされるんだもん。名前もない、絵柄に馴染みのない漫画なんて、飛ばされるんです。そこを足止めして読まさなきゃならないんです。だから3ページが大事ですよ。

――金言です。

安倍 当たり前だと思います。漫画家は、それができる人だけで戦っているんです。鈴木さんは?

鈴木 僕は……特にないです。でも、最初から、仕事だと思って描くのがいいと思います。本気度が違うというか。趣味で描いていると好きなのを描いちゃうんですよね。仕事だとなれば、読む人のことを考えるんじゃないかな。

安倍 最初の応募作品を描いた時も、読む人のことが頭にあったんですか?

鈴木 んー、そうですね。なんとなく、こうしたほうがいいかなあと。笑ってほしくて描いたので。笑かしたいなあと思いながら描きました。

――応募の直前はドキドキしましたか。

鈴木 ぜんぜん。ポストに入れて、「ダメだろうな」くらいです。

安倍 (しみじみと)郵送はいいね。持ち込みは……ボクは気が弱いし、年がいっていたから。持ち込みで若いお兄ちゃん編集者にあれこれ言われるのが嫌でね(遠い目)。そういうのに耐える自信がなかったので。東京にいながら、持ち込みはせずに賞に応募しました。

鈴木 公募の賞があって、本当に良かったです。

――それでは最後の質問。受賞の連絡を聞いた時のことを教えてください。応募者にもいいイメージトレーニングになると思うんです。

安倍 (思い出している)あの頃は気持ちもすさんでましてね。ふてくされてました(笑)。酒を飲んで「あーあ」といって帰ってきたら、留守電が入っててね、小学館の人からだった。「あー、そういえば! こんなことなら飲まないで帰ってきたらよかったなあ」と思ってた。そうしたら、また電話がかかってきて「大賞に決まりました」と。「最年長ですので、授賞式ではスピーチをしてください」と言われたんです。そして、いつも行く公園まで散歩しがてら、スピーチを考えてましたね。嬉しかったです。それまでの人生で一番嬉しかったかもしれません。

鈴木 僕も似ています。知らない番号の電話があって。番号を見たら「03? 友達じゃないな」と思って。かけ直したら「小学館です」と言ったので、「おお?」と思いましたが、まさか大賞とは思わなかったので。めちゃくちゃ嬉しかったです。平日だったので、飲みにはいかなかった。

――賞金の使い途は?

鈴木 貯金。記念品も買ってない。

安倍 会社を辞めるから生活費に。鈴木さんは、友達はパーティーをしてくれました?

鈴木 そんなのはないです。

安倍 ボクは早大漫研の人が、パーティーをしてくれました。ライターをやっている堀井憲一郎さんが音頭を取ってくれて。学生時代からデビューした人もいて、その頃から、デビューしたら飲み会をする習慣だったんですよ。「店は早稲田通りのドイツパブがいいんですけど」とリクエストしたら「あの店はもうない」って。

鈴木 漫画研究会でもデビューする人は少ないんでしょう?

安倍 学年にひとり、いるかいないか。ボクはとってもとっても遅いデビューでした。

――漫画家になられてよかったですか。

鈴木 よかったです。

安倍 悪いことは何もないでしょう。

鈴木 趣味でやるよりは全然いい。やりがいがあります。間に合わなくなると夜中まで描きますが(笑)。ただ、ひとつ問題が。僕はパソコンで、それもマウスで描いちゃうんです。もともとデザイナーだったからかな。だからペンだこがない漫画家です。それでね、「サインしてください」と言われたりすると、緊張して下書きしちゃったりするんですよ。サイン会をやるなら、マウスがいいですね(笑)。それって新しいですよね?

一同 爆笑。




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