宇宙世紀0079、地球連邦とジオン公国が戦った一年戦争の末期…
サイド4のスペースコロニー群「ムーア」はジオン公国軍の攻撃により
大きな被害を受けて、多くの住人が命を落とした。
破壊されたコロニーや、撃沈された戦艦の残骸が無数に漂う暗礁宙域では
ぶつかり合い帯電したデブリによって絶えず稲妻が閃くようになり、
いつしかそこは“サンダーボルト宙域”と呼ばれるようになっていた。
ムーア市民の生き残りで構成された地球連邦軍所属部隊、
ムーア同胞団は、故郷であった“サンダーボルト宙域”の奪還を悲願とし、
宙域のジオン公国軍を殲滅せんとしていた。
一方、連邦軍の進撃を足止めせんとするジオン公国軍も
義肢兵の戦闘データ採取を目的に設立されたリビング・デッド師団を展開。
ムーア同胞団に所属しながら、故郷や自身の出自に束縛されることを
疎ましく思うイオ・フレミング…
過去の戦闘により両足を失って、今はリビング・デッド師団で
エーススナイパーとして活躍するダリル・ローレンツ…
イオとダリル。
ふたりの男は戦場で対峙した時、
互いに悟るのだった…
自分たちは、殺し合う宿命なのだと。
アニメ版イオ・フレミング役
中村悠一 氏
香川県出身。2001年に声優としてデビューし、多数の作品で人気を集める。代表作は『マクロスF』早乙女アルト役、『機動戦士ガンダム00』グラハム・エーカー役、『呪術廻戦』五条悟役ほか。
■収録の機会がある2年に一度はイオのことを考えています
─ 漫画が連載10周年を迎えましたが、現在の中村さんと『サンダーボルト』の関係は?
アニメ版に直接関わっていたのは約2年間、収録開始からは7年ほどが経ちますね。その後も続けて漫画は読んでいます。ガンダムシリーズの特徴として、絶えずゲームなどの展開があるのでイオの声を収録する機会は多くて。2年に1回ほどのペースで演じているので、そのたびにキャラクターのことを考えますね。
─ ゲームなどの収録では、どんなことを意識されているんでしょう。
アニメになっているエピソード部分なら、シーンや演出、イオの感情を思い出せます。難しいのが、漫画で先を知っていても僕が演じるイオはアニメで描かれているエピソードまでの彼なので、演技や感情を膨らませきれないことですね。
シリーズ作品をまたぐクロスオーバー型のゲームなどを除くと新しいセリフをいう機会はごくわずかで、過去に自分がやったのと同じセリフをどう演じるかの判断が本当に難しくて。完全に一緒でよければ、過去の使い回しでいいわけで(笑)。思い出しながら演技するにしても、前の言い方を再現するのか、新たなものにするのか、過去に演じたパターンをもとにしつつ、また違った言い方にするのか。最近イオを演じる時に難しさを感じているのはそこですね。
■“禁じ手”も取り込む、先生の想像力と発想力に驚かされる
─ 漫画に話を戻して、現時点の漫画の展開を読まれていかがですか?
宇宙に出てから恐ろしい速度で時間が進んでいる気がしていて、終わりそうな気配はないけど、もしかして終わるのかな……? みたいな(笑)。きっと最終決戦というか、大きな戦いが待ち受けているんだろうとは感じています。『ガンダム』作品には組織や政治的なものとか、人の考え方のぶつかり合いを描く部分があり、「この敵を倒せば明確に平和になる」という世界観ではない難しさがあると思っていて。
そのなかでイオは、戦場で眼の前の敵を倒す兵士として、それほど政治的な思想などを持たずに、ある種、行き当たりばったりで戦っているので、これからの最終決戦に向けて何が彼のゴールになるのか注目しています。ダブル主人公のダリルと戦ってどちらかの死で決着がつくのだとしたら、ファン目線ではちょっとモヤモヤした気持ちにもなりそうだし……。太田垣先生が、どう2人の戦いに決着をつけていくつもりなのか、めちゃめちゃ気になります。
─ ファンの間では『機動戦士Zガンダム』のMSの登場も大きな話題です。
僕はコミックスで読んでいるんですが、19巻の最後でZガンダムが出てきた時は「ここまで話を進めるのか!」と驚きました(笑)。ガンダムMk-Ⅱが展示物扱いで、Zガンダムまで開発されているシーンを見て物語の展開がかなりのスピードで進んでいるのに気づいて、これはストーリーも最終局面に向かい始めたのかな? と思ったんですよね。
─ 一年戦争後の舞台裏のようなシーンは、やはりワクワクしますよね。
『サンダーボルト』の設定自体が、MSのデザインも含めて元々の『ガンダム』をかなりアレンジしているじゃないですか。オリジナルMSのアトラスガンダムなども「まあ、一年戦争の範疇でやっているんだよな」と思っていたのに、実はそうじゃなかった。MSの開発が『Z』に行きついていたり、ガンダムとジオングの陣営を入れ替えて出してきたりとか、いろいろな、ある意味“禁じ手”を取り込んでファンを楽しませてくる先生の想像力や発想力は、本当にすごいなと思います。
■『サンダーボルト』は「求めていたものがここにあった」という感覚
─ 中村さんは『サンダーボルト』のどこに魅力を感じていますか?
『ガンダム』には、つくり手が作りたい『ガンダム』と、ファンが見たい『ガンダム』が必ずしも一致しない難しさがあるんですよね。つくり手側は今までの『ガンダム』とは違う、まったく新しいものを目指すんですが、そうしたものには、従来のシリーズが大好きなファンから「求めていたものと違う」という意見が多少なりとも出ます。
初めて『サンダーボルト』を読んだ時、「自分たちが頭の中に想像していた宇宙世紀の拡がり」を感じて、正しい意味での「ファン視点での作品」になっていると思えたんです。それだけでなく新たに音楽のエッセンスを入れるとか、連邦とジオンの両サイドの視点からそれぞれの考えを描いているとか、MSに新しい解釈を加えるとか、旧来からのファンの人たちが受け入れやすく、かつ新しいものも取り入れている。ちょっと不思議な作りで、そこによさを感じます。
─ 従来の『機動戦士ガンダム』ファンも支持しやすい?
僕は『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』でグラハム役を演じた時に、『ガンダム』という作品の難しさを実感していました。それから『サンダーボルト』のアニメで初めて、宇宙世紀が舞台のガンダムファンの方々と対面したんです。『00』では、ファンの方たちも『機動戦士ガンダムSEED』から入った新しい世代が多かったんですが、宇宙世紀ベースの『サンダーボルト』の舞台挨拶では来ている層がまったく違った。
─ いわゆる「ファーストガンダム」世代の層が多そうですね。
そうなんです。トークショーでも歓声とか笑いとかは一切起きず、黙々とメモを取っている人も多くて、この人たちは本当に『ガンダム』という作品が好きなんだと感じました。それはまったく悪いことじゃなく、僕自身楽しかったし、その場にいた方たちの気持ちもすごくわかる。それだけの熱量が『ガンダム』にはあると思いますし、それを目の当たりにできたのは貴重で、とても面白かったです。
─ ガンダムファンとしての中村さんは『サンダーボルト』をどう感じているのでしょう。
「求めていたものがここにあった」という感じがすごくありました。「ファーストガンダム」から続くテイストかというとそうではないんですが、「従来のガンダムファンが想像する、理想の『ガンダム』の先を作っている」感じというか。それが、アニメ化で宇宙世紀作品を手がけていたベテランのスタッフ陣によって描かれたことで、いよいよ『ガンダム』の歴史の中に溶け込んだような感じがして。できあがった映像を見た時は、ちょっと熱いものを感じました。
■イオは自分の本心に非常に正直に生きているキャラクター
─ アニメ版の収録時、なにか思い出深い出来事はありましたか?
『サンダーボルト』は松尾衡監督の意向でプレスコ形式(プレスコアリングの略。台詞を先行して収録する手法)の収録が行われたんですが、『ガンダム』はずっと会話しているだけでなくMS戦などもあるので、そこが難しかったですね。絵の情報が少なく、どんなアクションをしているのかがわかりにくい中で、僕もダリル役の木村さんも「どういう息を入れて、どういう声を発するんだろう?」と考えながら芝居をしていました。しゃべりのテンポに制約がないというプレスコのいい点と、逆に難しい点が明確に出ていたのはすごく覚えています。第1シーズンの最後の、ダリルと激突するあたりのセリフの応酬などはとても面白かったです。イオはやっぱり感情的なキャラクターなので、演じていて面白いキャラクターだなとは思います。
─ 物語が進むにつれてイオの内面も変化しますが、演技のうえでそれを意識されたりは?
イオは、第1シーズンの最後で挫折を知り、第2シーズンで仲間ができてちょっとずつ大人に変わっていくんですよね。でも、やはり根底には「戦闘狂」的な部分があって、MSに乗った時に冷静さを失うわけではないけれど、戦いに集中しすぎるきらいがあるのは感じます。漫画で先の展開を読んでいても、その性根はあまり変わらないみたいだなと(笑)。第19集に、新しいMSや新技術を見せられて「すげぇ!」とはしゃぐシーンがありますが、ああいった場面からも戦いや兵器に対する純粋さを感じますし。大人になっている部分と、全然ブレない、変わらない部分がしっかりある面白いキャラクターですよね。もし第3シーズンがあるなら、もっとそうした内面も考えながらやれる機会があるのかなと思います。
─ イオの自分勝手というか、ちょっとダーティな面についてはいかがですか。
イオを悪いやつにしてやろうってつもりはないんですが……(笑)。連邦が優勢のなか、フルアーマー・ガンダムみたいないい機体をもらえて、つい調子に乗って敵を見下すような気持ちもすごく出ているだろうと考えつつ演じていました。そうでないとダリルに対する「義足野郎!」のセリフも出ないと思うし。相手が義足だと知れば同情する気持ちも湧きそうですけど、イオはそこで「俺はそんな身体の相手に負けてんのか!」という、そこだけに気持ちが行く。エゴが強いというか、自分の本心に非常に正直に生きているキャラクターだと思うんです。考えてしゃべるのではなく、瞬間的に全部に反応していくのがイオなんだと考えてやりましたね。
─ 逆に、ダリルについてはどのように捉えてらっしゃいますか?
イオは五体満足で良家の出身という立場でありつつ、クローディアをはじめ仲間を次々と失っていく。一方でダリルは唯一守りたいものが今まさに壊れかけていて、自分の身体を傷つけながらもそれを守らなきゃいけない。破滅に向かっている感じがしつつも、ある意味ヒロイックな立場だと思います。実は、オーディションではダリルとイオの両方を受けていて、僕としてはダリルのほうが行動理念が受け止めやすいし、感情的に共感できる部分が多くて演じやすかったんです。でも、イオ役に決まったんですよね。逆に、ダリル役の木村良平くんはイオの気持ちがわかると言っていて「逆なんじゃないの!?」みたいな話をしていました(笑)。
■ファンの方は連載10周年から先も一緒に歩んでいただけると嬉しい
─ アニメの続編は今のところ未定の状況ですが、中村さんが期待していることはありますか。
自分が出演したいのはもちろんですが、これまでと同じスタッフの方たちに制作していただけるといいなと思います。第1シーズン、第2シーズンでイオを演じてできあがった映像を観た時、宇宙世紀作品を手がけてきたベテランの方々によって『サンダーボルト』が『ガンダム』の歴史の中に溶け込んだような、ちょっと熱いものを感じたんです。できのよさは確実に保証されているので、次もぜひ同じスタッフ陣でやれると嬉しいですね。
─ 最後に太田垣先生にメッセージをお願いします。
コミックスで太田垣先生が腱鞘炎になられたのを知って驚いたんですが、それから本当に短期間で元以上の作画を取り戻されたことにはもっと驚きました。描くことに対する先生の熱量をすごく感じさせる、さらに気迫ある絵になっていると思いますし、人間の気持ちがむき出しになったようなキャラクターの表情も、より色濃くなっているように思います。最近ではさらに『Get truth 太陽の牙ダグラム』まで並行して描かれていて「相変わらずめちゃくちゃ漫画描いてる!」と、太田垣先生のすごさに圧倒されるばかりで(笑)。『サンダーボルト』もどんどん描き続けていただいているので、僕らが再びそこに声を吹き込むことができれば嬉しいと思いつつ、この先を楽しみに応援させてもらっています。
─ ファンの方に向けても、ひとことお願いします。
ストーリー漫画で連載が10年続くのもすごいですし、特にガンダムシリーズではすごい長く愛されている作品だと思います。今の状況を予想できていた人はほぼいないだろうと思うくらい想像がつかない展開ですし、ファンの方もずっと最終決戦が続いているようなクライマックス感を味わいつつ、引き続き応援していただければと。『ガンダム』はファンの応援の声しだいでどんどん可能性が広がるコンテンツですし、『サンダーボルト』もこれからさらにさまざまな方面に広がっていくはずです。ファンの方は声を出して作品を支えていただき、今回の連載10周年から先も一緒に歩んでいただけると嬉しいです。
アニメ版ダリル・ローレンツ役
木村良平 氏
東京都出身。幼少時から子役として活躍。声優活動開始後、2009年の『東のエデン』滝沢朗役で注目を集める。代表作は『黒子のバスケ』黄瀬涼太役、『ULTRAMAN』早田進次郎役ほか。
■文字以外の部分から伝わってくる情報量の多さが漫画の魅力
─ 木村さんが最初に触れたガンダムシリーズはどれでしたか?
家に最初の『機動戦士ガンダム』のビデオがあって、それを小学生か幼稚園ぐらいのころに観たのが最初だと思います。アムロがガンダムに乗って、使える武器もわからず分厚い説明書を読みながら頑張って戦う部分は覚えていましたが、それ以降、シリーズ作品をきちんと観たことはありませんでしたね。
─ となると、しっかりシリーズに触れたのは『サンダーボルト』が初めて?
そうなります。ただ、歴代のガンダムシリーズをカバーした対戦ゲームをプレイしたことがあって、どんなシーンか具体的には知らないけれど、キャラクターやMS、シリーズの名セリフはなんとなく知っていました。
─ ダリル役が決まって、『サンダーボルト』の漫画はお読みになりましたか?
芝居に影響がない範囲で読みました。僕は漫画原作つき作品に出演する時、あまり漫画を読み込まないようにしているんです。というのも、アニメ化の時に、漫画原作から少し変わっていることもあるんですよね。特に、時系列が入れ替わっているようなケースだと、芝居をしながら「あれ? このキャラクターはあのできごとを知ってるんだっけ?」とか、混乱する瞬間があるんです。
─ 確かに、漫画原作の序盤がアニメで回想シーンになっている作品などもありますね。
僕は、収録現場でのライブ感というか、反射で芝居をすることを大事にしています。芝居の途中で、渡されたシナリオと漫画が違っているのに混乱して方向性がズレてしまうと台無しですよね。そういったところで影響を受けたくないので、漫画は演じる部分に目を通すくらいにして、あえてしっかりとは読まないようにしているんです。
─ あくまで、脚本を元にキャラクターを作っていく?
その方が、作品に対してフェアな気がするんです。でも『サンダーボルト』はしばらく録っていないし、そろそろ漫画も読んじゃおっかな、なんて……(笑)。実際のところ、収録当時も結局やるところは面白くてついつい読んじゃっていましたし。
─ 最初に漫画をお読みになった時の印象はいかがでしたか?
音楽が「鳴っている」感じがすごく好きでしたね。ダリルとイオは戦場という緊迫した世界で生きていますが、それぞれ音楽を大事にしていて、ふとした時にそこに安らぎや気晴らし、あるいは集中とか、いろんなものを求めています。そうした僕たちにも理解できる感性を持つキャラクター性にものすごく親近感が湧いたし、観る側に寄り添ってくれている気がして、いいなと感じました。ちょっとした表情や、一瞬の沈黙で語られる感情の動きも音楽があるお陰でより深く、立体的に感じられて。文字以外の部分から伝わってくる、情報量が多いところに魅力を感じました。
■収録から上映会まで『サンダーボルト』と駆け抜けた公開当時
─ 第1話の配信から7年が経ちますが、『サンダーボルト』に対する想いや印象の変化はありますか?
まだまだ連載中の漫画がベースだったこともあり、収録中はお話の終着点はわからないし、アニメもどんな画になるか全然わからないまま録っていました。仕上がってようやく観られたかと思うと、すぐ上映会の舞台挨拶に出ることになり……と、当時はひたすら『サンダーボルト』と一緒に駆け抜けた気がします。あれから7年経って、今やっと、たくさんある『ガンダム』作品の歴史の一部になれたんじゃないかなと思えるようになりました。日常のふとした瞬間に『ガンダム』の名前を聞き、『サンダーボルト』に関わった事を思い返して「自分もその歴史の一部になれているのかも」と思えることに嬉しさを感じています。
─ 『サンダーボルト』はシリーズ中でも独特の空気感を持っていますが、収録でそれを感じられたことは?
ロボットアニメのパイロット役の経験はありましたが、やはり普通のバトルとは違う感覚があるんですよね。作品ごとに重力のかかり方、攻撃する時の勢い、それらをどれだけ声や音に乗せるかが違ってくるのですが、そのなかでも『サンダーボルト』はかなり生々しかったと思います。コックピット内の息苦しさとか、戦闘直前のピリピリした状況であえて軽口を叩くような雰囲気、そうした戦場の温度感をひとつひとつ感じられる空気のなかで演じていたように思います。収録がプレスコ形式(プレスコアリングの略。台詞を先行して収録する手法)だったこともあり、キャラクター同士の会話もよりお互いを感じながら収録しました。全編を通して、演出まで含めて実際に戦場という場所に身を置いている感覚をものすごく大事にしながら作っていた気がします。
─ プレスコ収録では出演者同士の距離感、空気感は変わるものなのでしょうか?
ものすごく違います。松尾衡監督は役者の会話を大事にする方で、テンポ感を作りながらやらせてもらえることが嬉しかったし、やりがいもありました。中心人物による掛け合いのシーンもなるべくみんなが一緒にスタジオに入って録れるよう配慮されていて、それも楽しかったです。ただ、プレスコだとバトルシーンがキツいんですよね。映像がないと何が起きているかわからない部分が多いので(笑)。キャストと監督、スタッフ間でのコミュニケーションがとても良好だったので、「これ、どのぐらいの距離を走ってるの?」とか、話しあいながらやっていました。
─ イオ役の中村悠一さんとはどんなやりとりを?
中村さんは『ガンダム』にめっちゃ詳しいんですよ! だから空いた時間があると、中村さん、松尾監督、小形尚弘プロデューサーの3人に『ガンダム』について教えてもらっていました。設定で少し疑問に思ったことを3聞くと、そこに200返ってくる感覚でした(笑)。中身が濃くて歴史もある『ガンダム』を大好きな人たちが語ってくれるだけで楽しいのに、さらに自分が関わっているとなると余計に面白くて。「なんでこのMSはこんなに扱いが悪いの?」「いや、この時はもっとすごいのがいっぱいいて……」とか、そんな話をよく聞いていました。
■ダリルには憧れを感じつつ、どこか憧れてはいけない危うさを感じる
─ ダリルという人物に初めて触れた時の印象はどんな感じでした?
イオとはまた違ったストイックなかっこよさがあり、彼自身が打ちのめされる場面も含めて、ヒーローらしさを感じさせるキャラクターだと思いました。一方で、単純に「かっこいい」という印象だけでは済ませられない、憧れを感じるけれどどこか憧れちゃいけない面も持っている。今の日本に住む僕から見ると、彼の戦争への向き合い方には、やはり危うさや恐ろしさを感じます。でも、彼のような存在を描けるのがフィクションの醍醐味でもあり、芝居でそれを演じられるのが役者や声優の面白さなんですよね。自分で演じることを意識して漫画を読んだ時は、胸のあたりがヒヤッとする気持ちを覚えましたが「こんなにかっこいいヤツを演じるんだ」という喜びもありました。
─ 第1シーズンと第2シーズンで、演技に違いは出されたのでしょうか?
続けて演じることで僕自身の心境が変化した部分もありますが、それ以上に芝居はかけあいでつくっていくものなので、相手によって演技が変わった部分がありました。序盤で普通に会話をしていた相手が後半では部下になっていて、立場が変われば空気も変わるというか。ダリルの身体にも大きな変化があったことで、腹が据わって性格が変わった部分もありますし。とはいえ、イオのことになると途端にムキになったり、青臭い部分が強く出たりする瞬間もあって、第2シーズンではそういったダリルのひとつひとつの変化や表情が描けていたと思います。
─ 乗るモビルスーツもサイコ・ザクからアッガイに変わりました。
僕、アッガイ好きなんですよ! 中村さんや監督にも話したんですが、ファンのなかでアッガイがかわいいという人はわりと多いらしく「俺、ガンダムわかってるじゃん!」って気持ちになりました(笑)。そんなアッガイに乗れたのは嬉しかったですし、戦ってちゃんと成果を挙げるのも、いち兵士として誇らしかったです。ガンダムやサイコ・ザクの激しい対決はもちろん見どころなんですが、アッガイのような特別強い扱いではないMSで、いち兵卒の戦い方を見せられるのも『サンダーボルト』の世界に合っている感じがして、いいですよね。
■「ダリルが“アレ”に乗る」ってウワサを、聞いてはいるんです(笑)
─ アニメの新シーズンがあるとしたら…?
もちろんやりたいです! 『サンダーボルト』は漫画も当然面白いですが、アニメでもすごくいいものづくりができていたと実感できた作品なんです。信頼のおけるスタッフや大好きな役者さんと一緒に仕事ができましたし、映像も、監督はじめスタッフの方が「すごく信頼しているアニメーターさんやスタジオのメンバーが頑張ってくれた」とお話していたのが強く印象に残っています。視聴者の反響も本当によかったですし、あんなにいい座組でものづくりができるのは貴重なので、次があればぜひやりたいです。
─ 漫画の物語も佳境に入り、いろいろすごいことになっています。
アニメ化されていない部分はまだ読んでいないんですが、実はちらっと「ダリルが“アレ”に乗る」ってウワサを聞いてはいるんです(笑)。第2シーズンで、今後はこういった集団と戦っていくんじゃないかという部分が見えたことも、すごく気になっていて。僕が漫画原作を読まないスタイルを取っているのには、ちょっと“願掛け”みたいな面もあるのですが、もう7年経つし、続きを読んでもいいかな……と思ってしまいますよね(笑)。アニメの続編が発表されれば悩まずに漫画の続きが読めるので、第3シーズンが制作されることを僕自身、いち読者、いち視聴者として本当に願っています!
─ 最後に、太田垣先生と『サンダーボルト』ファンのみなさんにメッセージをお願いします。
連載10周年おめでとうございます! あれだけ濃密なものを10年続けてきたことは本当にすごいですし、大変だったと思います。ここまで描いてきてくださってありがとうございます。いずれ、僕も漫画を最後まで楽しませていただきますので、最高のゴールを目指して、描ききっていただけたら嬉しいです! がんばってください!
それからファンのみなさまへ。漫画を含めてエンタメは、楽しんで、触れて、応援してくださる方がいないと続けていけません。今回『サンダーボルト』が連載10周年を迎えられたのは、きっとファンのみなさんの力が大きいと思いますし、アニメに関わった者としても本当に感謝しています。アニメの方も、面白い漫画を非常にいい形で表現できていると思いますので、まだ観ていない方はぜひこの機会に触れていただいて、漫画とともに最後まで応援していただけたら嬉しいです。
アニメ版音楽
菊地成孔 氏
千葉県出身。1984年、サキソフォニストとして音楽家デビュー。以降ミュージシャンとしての演奏、各種の音楽制作のみならず、著述、批評、音楽講師といった幅広い分野で精力的に活動を続けている。
■プレイリストを作るなんて初めての依頼だったけれど面白し、いいなと思った
─ 菊地さんは『ガンダム』自体をご存知でしたか?
ほとんど知りませんでした。といっても『ガンダム』だけを知らないとかじゃなく、アニメとかゲームとか、いわゆる「クールジャパン」的なもの全般をあまり知らないんです。『機動戦士ガンダム』が放送されたのは中学校の時でしたが、その時、僕はすでにジャズマニアで、ジャズ喫茶に行ってジャズを聴いたりすることに夢中で『ガンダム』や『宇宙戦艦ヤマト』を観る余地も、興味もなくという感じで。それは今も同じなんですが(笑)。
─ 当時、流行していたような記憶も…?
学校のクラスの中ではアニメのグッズを持っていた子がたくさんいたし、自分が観ていなくても存在は目や耳に入ってきたので、ポップカルチャーとして知ってはいました。衝撃を受けたのは『ガンダム』はフィギュアか、プラモデルかを学校に持ってくる子がいて。『仮面ライダー』のソフビ人形とかも流行りましたが、学校にまで持ってくる子はいなかったので、「ああ、これはすごいムーブメントなんだ」と思いましたね。一方でジャズの世界は、地下の薄暗い店に行って、ドアの前で暗号をいうとドアが開いて、みたいな感じでアクセスする状況でしたから(笑)。
─ そんな菊地さんが、なぜ『ガンダム』の曲を手掛けることに?
聞いたところでは、プロデューサーさんも監督さんもジャズは不案内で、誰に頼めばいいかもわからず、検索して多く名前が出てきた僕をご指名いただいたとかで……(笑)。2人の主人公が戦闘中に自分をアゲるために音楽を聴いているという設定で、ひとりはジャズ、もうひとりは50’sのポップスを聴いている。それらの曲を既成の曲のような形でつくれないか、というお話でした。『サンダーボルト』は大人向けのストーリーで、劇中で流れるジャズも「スタンダードではなく、けっこうえげつない感じのものがよい」というざっくりしたご希望でした。せっかくお話をいただいたことだし僕で構わないならとお引き受けしたんです。
─ いわゆる劇伴を……という依頼ではなかったんですね。
アニメの劇伴の仕事は『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』で経験していて、最初に連絡をいただいた時は数十秒くらいの長さの、エモーション1、2とか、バトル1、2とかシーンのイメージに合うような曲をたくさん納品するのかと思ったんです。でも『サンダーボルト』はそうでなく、主人公たちのiPodのようなプレーヤーのプレイリストに入っている曲を5~6曲ずつ、がっちり最初から最後まで音楽のアルバムのような形でつくってくださいという依頼で。そうした依頼を受けたことはなかったけれど、面白いし、いいなと思いました。
■イオの戦いにはハードコアなフリージャズが似合うと感じた
─ 作品の雰囲気をつかむ上で、どんなことをされたんでしょう。
漫画やアニメの設定をもらって、キャラクターの絵、プロトタイプの映像、「ジャズが聞こえたら、俺が来た合図だ」みたいな名セリフといった要所をチェックして、手探りでつくっていった感じです。ストーリーそのものは細かく確認するみたいなことはせず、対照的な2人の主人公がいて、それぞれこういった特徴と性格で、みたいな基本的なところからイメージを膨らませました。漫画だと、ジャズ側のイオ・フレミングが聴いている曲では、ジョン・コルトレーンの『ジャイアント・ステップス』とか、ガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』とか明確にアーティスト名と曲名が出ているんですよね。ダリルの方は特には書いていなかったけれど、歌詞は出ていて、大雑把にオールディーズ、50年代の甘いアメリカンポップスらしいとあたりをつけて。
─ でも、名前が出た曲をそのまま使っているわけではありませんよね。
『ジャイアント・ステップス』などは曲名もすごそうだし、ハードな曲ではあるんですが、敵の命に拘泥しない撃墜王的な、オフェンシブな性格のイオが戦場で聴いているにしてはちょっと弱いというか……。巨大な爆発が起きて、人が情け容赦なく死んでいく殺戮の戦場で聞こえる曲としては優しすぎると感じたんです。そこで監督さんとプロデューサーさんに、イオのプレイリストはハードコアなフリージャズにしたほうが、彼の戦いのスタイルとバランスが取れるんじゃないかとプレゼンをしたんです。そこで「こっちのほうがイメージに合いますね!」という話になり、先生に相談していただいたら数日で「フリージャズでGOしてください」となったんです(笑)。ダリルの方は、特に違和感はなかったので、50年代ポップスのまま進めました。
─ フリージャズは、どんなものをイメージのベースにされたんでしょう。
第1シーズンの曲である「サンダーボルト・メインテーマ用」に限っていえば、エリック・ドルフィーという人の『G.W.』をイメージのリファレンスにした部分があります。とはいえ、その曲はフリージャズとはいえ、それほど激しい曲調ではないクールでソリッドな感じの曲ですから、だいぶ雰囲気は違うように感じると思いますが……。そこに、ものすごくハードコアな、リズムもなくただの騒音に聴こえるようなものも取り入れつつ、という感じです。
─ 逆にポップスのイメージのベースは……?
具体的な曲名を挙げるのは難しいですね。ただ、アメリカンオールディーズポップスって曲調が確立されているので、このくらいのリズムで泣けるもの、みたいにテーマを決めてしまえばわりとつくりやすいんです。ですから、イメージとしてのアメリカンオールディーズをいろいろ頭に浮かべつつ、楽しくつくりました。
■音楽制作だけでなく「貼りつけ」までやった作品はほかにない
─ サウンドトラックのポップス側は、1枚目は英語のボーカル曲、2枚めは日本語ボーカル曲になっていましたが。
それは制作チームからのオーダーでした。1枚目は、ダリルもイオも、架空の50~60年代のアメリカのレコードからプレイリストをつくるというテーマがあったので、どちらも洋楽でシンガーも英語を喋れる人ばかりにしています。それで2枚目は一転して昭和歌謡みたいな。1枚目に関しては、劇中の映像にどう曲を当てはめるのかの指定も僕がしています。
─ 楽曲を制作されただけではなかったんですか?
一般的な作品だと、音楽の流れるシーンでも音のボリュームや、曲のどの部分を使うのかなどは整音を担当される方が決めるもので、僕ら音楽家は納品した曲が実際でどう使われるかはわからないんですよね。時にはできあがったものを見て、ブーブーいってたりすることもあるんですが……(笑)。それが『サンダーボルト』では、監督から曲をどう使えばいいかとご相談をいただいたので、興が乗って「僕がやりましょうか?」と申し出たんです。激しい戦闘シーンなどだと大きな爆発音が連発されますが、ジャズはフリージャズのような激しい曲調でも演奏がアコースティックなので、曲よりも爆発音に意識が持っていかれがちなんですよね。そこで、曲をどう合わせるかに加えて、音量なんかの調整まで比較的丁寧に決めさせてもらいました。自分が作った曲を本編の映像に貼らせてもらえる機会は初めてだったし、これからもたぶんないでしょうから、貴重な経験でした。
─ できあがった映像をご覧になった時のご感想は?
めちゃめちゃ嬉しかったですね。整音や貼り付けを自分でやるなんて経験も初めてでしたし、「これはいいな…!」と(笑)。映像もかっこいいし、音楽もかっこよく聞こえるし、いい気分でした。その後も、実写ドラマや映画などで劇伴の仕事はしてきていますが、『サンダーボルト』ほどの手応えを感じるものはやはりないです。
■『サンダーボルト』は自分の仕事のベスト10に確実に入る作品
─ 公開後、周囲の評判はいかがでしたか?
僕個人はSNSのようなものをやらないので、スタッフの方から視聴者の方の評判がとてもいいと聞いて安心しました。驚いたのは、モダン・ジャズ界やフリージャズ界にも『ガンダム』の熱狂的なファンがいて、僕が『サンダーボルト』の音楽をやったと話すと「なんで自分に頼んでくれなかったんだ!」という人がたくさんいたことです(笑)。普段彼らとはジャズの話ばかりしていますから、『ガンダム』が好きだなんてまったく知らなくて(笑)。「子供の時から見ているし、いってくれればタダでやったのに!」という人が男性にも女性にもたくさんいて。そのなかのひとりがスガダイローさんで、2016年の『ガンダム LIVE EXPO~ジオンの世紀~』ではライブに参加してもらいました。あ、もちろんギャラはしっかりお支払いしましたよ(笑)。そこで改めて『ガンダム』ってすごい作品なんだと実感しました。
─ 想像以上の反響があったんですね。
僕が小さい頃のアニメの劇伴って、正直、多くの音楽家にとってはあまり誇らしく感じる仕事ではない、という扱いでした。でも現在はそんな意識もまったく逆転していて、かけられる予算も大きいし、世界に通用する日本発のメディア、カルチャーとして認められている。アニメやアイドルのカルチャーが広まることで、ファンの方の間にも「推し」に対してどうふるまうべきかみたいなエチケットがしっかり確立されていて、すごく礼儀正しいのもいいですよね。『サンダーボルト』では何回もライブをやり、ニューヨークのアニメコンベンションなどでは海外のファンの方とも交流できましたが、どこに行っても本当に嫌だと感じることがまったくなかった。こんなにいい仕事はないなと、今でも思っています。
─ 海外でのライブの手応えはいかがでしたか。
僕はニューヨークのフリージャズの有名レーベルであるインパルスレーベルから、合衆国民以外で唯一レコードを出しているんですが、そんな僕でもジャズだけをやっていたとしたらニューヨークで演奏をする機会はたぶんなかったと思うんです。これは自己卑下とかではなく、ニューヨークというのはそれだけ一流のジャズクラブが集まる場所だという話なんですが……。でも、『ガンダム』の音楽をやったことで、赤子の手をひねるようにニューヨークで演奏することが決まった。会場ではガンダムのコスプレをしたアフロアメリカンの人が客席のまんなかにいたりして、そこはちょっとリージョンが違うんだな、とも思ったんですが(笑)。ただ、日本人とアメリカ人で相撲の見かたが違うみたいに、コスプレをしている人でも本場のジャズの聴き方が身についているんですよね。拍手のポイントや声のかけ時とかが本場のノリで、やっぱりニューヨークのお客さんなんだと思いながら演奏を楽しめました。その後も、海外の有名なジャズアーティストが公開したプレイリストに『サンダーボルト』の曲が入っているのを見つけたりとか、『ガンダム』をはじめ日本のアニメの影響力のすごさを感じることが何度もありました。
─ 最後に太田垣先生にメッセージをお願いします!
この生き馬の目を抜く世界で連載10周年を迎えられて、おめでとうございます! 太田垣先生には、今後もずっと連載を続けていただければと思います。『サンダーボルト』はたくさんの人が観るだろうし、ファンの方から「漫画のイメージと違う!」といったクレームもあるだろうと覚悟していたんですが、それが一通もなく、多くの方から良かったという声をいただいて本当に嬉しくて、素直に喜んでいます。僕自身、自分の仕事からベストの10本を選ぶとなったら『サンダーボルト』のオリジナルサウンドトラックは絶対に入る出来映えだと思っています。もし次があれば喜んでやらせていただきますし、僕のようなアニメやゲームに疎い人間に、素晴らしい出会いをもたらしてくれたみなさんに感謝しています。
アニメ版プロデューサー
小形尚弘 氏
神奈川県出身。『サンダーボルト』以外に『Gのレコンギスタ』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』など数々の『ガンダム』作品でプロデューサーを担当。現在も『ガンダム』関連作品のエグゼクティブプロデューサーを務める。
─ アニメ版『サンダーボルト』はどういった経緯で制作が決まったのでしょう。
企画が動き出したのは、僕が担当していた『機動戦士ガンダムUC』が終わって、『ガンダム Gのレコンギスタ』をやっていたころでした。『UC』では「手描きアニメーションの『ガンダム』で、やれるところまでやる」ことをひとつのテーマにしていて、その流れが続いているなかでスタジオ内から「新しい、宇宙世紀系の『ガンダム』をつくってもいいんじゃないか?」という話が出ていたんです。そんな時、劇場版『機動戦士Zガンダム』の作画監督だった仲盛文さんが、「コレ面白いからやってみたいんだよね」と持ってきたのが『サンダーボルト』でした。
─ 仲さんのお話を聞いた時の印象は……?
『サンダーボルト』のことはもちろん知っていたんですが、プロデューサーという立場からすると率直に言って「大変そうだな……」と思いました(笑)。だから仲さんには「面白いと思いますけど、本当にこの絵を手描きでやるんですか?」と何度も聞いたんですが、「描くよ!」と(笑)。そこで小学館さんと本格的にやり取りをはじめて、アニメ化の企画が動き始めたんです。
─ 松尾衡監督を起用されたのはどういった理由だったのでしょう。
『サンダーボルト』を読んで真っ先に思い浮かんだのが、松尾監督がアニメ映像部分を担当したゲームの『機動戦士ガンダム戦記』だったんです。その映像にもモビルスーツデッキのシーンがいろいろあって、『サンダーボルト』にもイメージが合うんじゃないかと思ってオファーしました。制作がスタートしてみると、脚本も画づくりも非常にうまく料理をしてもらえました。最初の仲さんの提案があって、松尾監督がいたから『サンダーボルト』の企画がしっかりとしたものになったんだと思います。
─ 小形さんご自身は『サンダーボルト』を読んだ時にどう感じましたか?
ストーリーがだいぶハードな内容ですし、太田垣先生が描くビジュアルの質感を2Dのアニメで表現するのは、正直ちょっと大変すぎるかなあと……。フルアーマー・ガンダムやサイコ・ザクが装備するたくさんのバーニアや追加アームを手描きで動かすとか、まあ普通だったらやらないです(笑)。とはいえOVAに近い形で、ある程度映像の尺(長さ)をコントロールしていけばギリギリ行けるかなと判断して。仲さんをはじめ、キャラクターデザインの高谷浩利さん、玄馬宣彦さんなど、それまでに『UC』やほかのロボットアニメを数多く手がけた作画スタッフが近くにいて、ちょうど参加してもらえたことが大きかったですね。
■イオのような人物を主役にできて『ガンダム』の幅がさらに広がった
─ ストーリー自体の印象は?
イオはすごく嫌なやつで(笑)、ダリルの方が感情移入しやすいな、と思いました。でも、それまでの『ガンダム』のアニメの主役でイオのようなタイプはいなかったので、あのタイミングで彼をアニメの方でも描けたことで、『ガンダム』という世界の幅がさらに拡がったと思います。特にアニメの第1話ではガンダム自体も悪く、怖く見える方向性でやろうと松尾監督をはじめスタッフ全員で意思を統一していて。アニメではそうした方向性でガンダムを描くこともそれまでやってこなかったので、とても刺激的でした。
─ ダリルの義手・義足など、ハードな展開を描くことについて議論はあったんでしょうか。
最初からスタッフ内で「まずはサンダーボルト宙域編をやりきろう」という意識が統一されていたので、そこはフルスロットルで。まあ『ガンダム』なので、全年齢対象にしたいと思いつつ、ハードな部分には少し規制がかかっても仕方ないかなとも思っていました。でも結果として、各種のレーティングにひっかかることもなく公開できましたね。
─ 最初は配信専用という形で公開されたのも新しかったです。
ガンダムシリーズでデジタルセル配信(EST)を行った初めての作品になりました。あの頃はちょうどアニメのメディア販売がパッケージからオンライン配信に移行する過渡期で、配信がだんだん伸びてきた時期だったんです。加えて、『サンダーボルト』をTV放送でやろうとするとどうしても表現や物語の面でどこかに妥協が必要な部分が出てきてしまう。それではもったいないし、配信や映画なら漫画の表現を思い切り活かせると思って。それで、第1、第2シーズンの各話配信と、映画館で『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』『BANDIT FLOWER』というディレクターズカット版が上映される形になりました。
─ 漫画のよさを活かす上でもマッチするやり方だったんですね。
『UC』の時にOVAで販売するものをイベント上映として劇場でかけるフォーマットをつくったのですが、その時にのちの『機動戦士ガンダムNT』や『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』といった劇場向け作品の制作も決まっていました。それもあって『サンダーボルト』は、劇場と配信を絡めてやっていく流れをビジネス的に試す、いい機会でもありましたね。
■業界からも「やりすぎ」といわれた、振りきった手描き描写
─ 公開後の反応で、記憶に残っていらっしゃることはありますか?
アニメ業界の関係者から「ここまでのクオリティはやりすぎだよ」みたいな事をいわれたことですかね(笑)。アニメ製作では緻密な動きを見せるために膨大な枚数の原画が必要なので、大量生産がきくようキャラクターやモビルスーツのパーツやディテールをうまく省略して、絵柄のクオリティをコントロールするものなんです。その点『サンダーボルト』は、『UC』の流れからかなり振りきったクオリティになっていて、手描きアニメで今同じことをやれといわれてもたぶん難しいんじゃないでしょうか。7年前に作画をやってもらった方たちも、あの頃が結構ギリギリのところで、体力や集中力、視力とかそういった面で今はさらに厳しくなっているんじゃないかと……(笑)。『閃光のハサウェイ』も同じスタッフでやっていますが、ほぼ3Dをベースにしたつくり方になっていて、バトルに関してはあの頃のような手描きでつくる部分は少なくなくなっています。その意味でも『サンダーボルト』は、タイミング的にいちばんいい時期にできた手描きの『ガンダム』だったと思います。
─ つくり手の側でも、すごく手応えを感じた作品だったんですね。
手応えというか、よくこんなの動かしたな! と。現場の人間からするとひどいことをさせたかなと……(笑)。手描きでこのクオリティが永続的に続くのはちょっとありえないな、と思うぐらいで。実際に、フルアーマー・ガンダムとサイコ・ザクに関しては、今の制作システムから考えると動画のスタッフが追い付かない気がします。メカの動画さんはもう絶滅危惧種みたいなところがあって、原画がギリギリ描けたとしても、それを動かすための中割りを描ける人がいないんじゃないかと思います。
─ 公開7年を経て、ファンからは続編を期待する言葉も大きいようですが。
『サンダーボルト』のころは僕自身がいちプロデューサーで、やりたいものをやっていられたんですが……(苦笑)。ここ数年でアニメ界の状況が変化して、簡単に作品を量産することができなくなりましたし、『ガンダム』自体もバンダイナムコグループ全体で、よりしっかりと戦略を立てて進めるコンテンツになっています。以前のように、単純に「これがやってみたい」では決められない、なかなか難しい部分もあって。ただ、メカ担当もキャラクター担当も、関わったスタッフはみんな『サンダーボルト』をとても大事な作品だと思っていますし、個人的には彼らがしっかり関われるうちに続編をやっておきたいという気持ちがありますね。
─ もし続編をつくるとなったら3Dと2Dをうまく取り入れるような形に?
さすがに、前のように全部手描きでというのは無理でしょう。ただ、『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』などを見ていただけるとわかりますが、今はもう3Dとか2Dとかは単なる手法の違いになっていて、観る側にとっては、2Dの手描きであろうと3Dであろうと関係ない時代が、そう遠くない将来くると思います。他作品でもフル3Dでキャラクターを描いても違和感のない作品が登場して来ています。
─ 技術の進化でアニメ制作も大きく進化しているんですね。
次に『サンダーボルト』をアニメ化するとしたら、海外での受け入れられ方も意識しながら、その時にしっかりしたクオリティを感じさせられる技術やノウハウを活かしたものになると思います。そういえば『サンダーボルト』は、海外への波及効果がすごくあった作品でもありました。ストーリーの内容もそうだし、菊地成孔さんの音楽まで含めて、海外のコンベンションなどに出展した時もすごく好評でした。今、ちょうどハリウッドで実写版の『ガンダム』が制作中ですが、その監督のジョーダン・ヴォート=ロバーツさんもすごく『サンダーボルト』の影響を受けていて「『サンダーボルト』のこのシーンが……」みたいなことをすごいアピールしてきますよ。
■『サンダーボルト』のアニメ化はスタジオにとっても大きな財産になった
─ アニメ制作側として、太田垣先生に対する印象はいかがでしたか?
すごく熱い方ですよね。アニメ化の時のことも含めて、クリエイティブな面に関してすごく真摯に『サンダーボルト』に向き合ってらっしゃると思います。アニメ化の際は松尾監督やカトキハジメさんを交えて、太田垣先生といろいろディスカッションさせていただいたのですが、内容もメカデザインも「お互いに負けないぞ!」的な、漫画側もアニメ側も切磋琢磨しながらやっていくような関係性が感じられたのが今も印象深いです。
─ 漫画のストーリーもだいぶ大きく動いています。
連載をリアルタイムで追えてはいないんですが、コミックスは新刊が出るたび、その都度読んでいます。パーフェクト・ガンダムとか、ああいった展開を読んでいると、やはりアニメでもやりたくなります。元のパーフェクトガンダムもちょうど僕らの世代ではありますし。展開もすごく太田垣先生らしいというか、うねりがありますよね。連載途中で腱鞘炎になられた時は僕らもすごく心配していたんですが、ここ数年で、より発展的な作風になっていると感じています。『サンダーボルト』以外のお仕事でも太田垣先生のお名前をいろんなところで聞きますし、本当にすごいと思います。
─ 最後に、太田垣先生とファンのみなさんにメッセージを。
太田垣先生、ならびにファンの皆さん、10周年おめでとうございます。僕らが制作したアニメが、連載が続くことに少しでもお役に立てていたら、すごく嬉しいです。先生とがっちり組んで『サンダーボルト』を映像化できたことは、今現在『閃光のハサウェイ』などをつくっているスタジオとしても、大きな財産になっています。アニメ版がまだ途中であることも忘れておりませんので、またいつか、みなさんのご期待に添えるよう僕らも頑張りたいと思っています。
俳優・彫刻家
片桐仁 氏
1973年生まれ。多摩美術大学在学中にコントグループ・ラーメンズを結成後、俳優として数多くの作品に出演。彫刻家として全国各地や海外での個展を行うなど幅広い分野で活躍中。
■主要クルー以外のパイロットやメカニックもしっかり描かれているのがいいんです
─ 片桐さんと『ガンダム』の出会いはいつ頃だったのでしょう。
『ガンダム』を観始めたのは『機動戦士Zガンダム』からなんです。最初の『機動戦士ガンダム』はガンプラから入った世代で、きちんと全部まとめて観たのは、確か96年くらいの再放送でしたね。
─ 初放送から20年後にして原点に触れたんですね。
当時『機動戦士ガンダム』は劇場版3部作しかレンタルビデオになくて、TVシリーズは簡単に観られなかったんです。でもガンプラブーム絶頂だった82年の劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』は「ストーリーはよく知らないけど、とにかく流行ってる!」って、父と姉と映画館で観ました。満席だったので、入口で渡されたダンボールを通路に敷いて観ました(笑)。それからガンプラを中心に『ガンダム』との付き合いがはじまって、中学時代は『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダムZZ』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』。高校時代はTVシリーズが谷の時代に入りましたけど、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』『機動戦士ガンダム 第08小隊』といったOVAも含めて、以降のシリーズはほとんど観ています。
─ かなりヘビーなファンなんですね。
高校時代ぐらいに、僕の周りのみんながオタクを辞める時期が来て、プラモデルも作らなくなったんですよね。共学校に行った友達が「女の子にモテないからもうやめる」と言ってたりして。僕は男子校だったんで別に平気でしたけど(笑)。
─ 『サンダーボルト』のことはご存知でしたか?
「スペリオール」の連載で読んでいました。最初は「一年戦争・残酷物語」的な部分がある『機動戦士ガンダム MS IGLOO』シリーズに近い雰囲気かと思っていたんですが、それともまた違って。主役のパイロットや艦長みたいな主要クルーだけじゃなく、それ以外のパイロットやメカニックもしっかり描かれているのがいいんですよね。現実の空母を考えてみれば、軍艦や兵器を運用するためにはパイロットや艦長の何倍も、場合によっては何百人、何千人も必要で戦場にもそれだけの人が関わっている。『サンダーボルト』はそうしたところまで突き詰めて描かれているのが面白いと思います。
─ 今回『サンダーボルト』を改めて読んでいただいたそうですが?
連載で追っていたつもりでしたけど、コミックスでまとめて読み直すと読めていなかった部分がいろいろあるのに気づきますね。クローディアが南洋同盟に加わるくだりなんかも、読み直してなるほどと思い返したりして。あとは、ちょいちょい「こういうの、『ガンダム』でもあったな!」みたいな要素が入っていて、ともかくガンダム好きが欲しいとこを押さえてくれているスゴい漫画だな~!と改めて思いました。
─ 読み直して気づくことの多い作品ですよね。
大気圏突入とか、好きな相手を殺してしまうシーンとか、最初の『ガンダム』を髣髴とさせるシーンがいくつもあって、その上でお話の組み立てもちゃんとしているのがすごいですよね。第3集までは、サイコ・ザクは出てくるけどニュータイプの存在にはほとんど触れずに、すごい密度とスピード感で一気に読ませてくれる。その後、一年戦争後に南洋同盟の教祖のレヴァン・フウが元強化人間でサイコ・ザクを狙って……みたいに先の展開に向けていろんな要素がつながってくる。太田垣先生が連載開始時にどこまで見越して描き始めたのかなって考えたりしますよね。
■あくまでも兵器として描かれるモビルスーツの魅力
─ ガンダムファンの片桐さんでも驚かされたと。
ガンダムマニアと、『MOONLIGHT MILE』みたいなハードSFのマニアの両方に「読ませる」作品というところで、すでにすごく難しいですよね(笑)。特に『ガンダム』は、40年以上もいろんな人がいろんなことをやってきて、ある意味ひとつの産業として成長し続けています。そんな中で他にはない直球ハードSF路線の物語が10年も描き続けられて、しっかり人気を集めているのはホントに嬉しいことですよ。
─ 確かに、ハードSF的要素も人気の要素のひとつになっています。
僕らが知るモビルスーツの概念に「関節はカバーで覆ったほうがいい」とか「盾は4個持ってアームで操るほうがいい」といった要素を加えて、より納得感のあるものにしていたりとか。「かゆいところに手が届く」じゃないですけど、宇宙をよりリアルに感じさせてくれるSF的な要素が『ガンダム』の世界観を壊さないバランスで取り入れられていると「おおっ!」となりますよね。『MOONLIGHT MILE』でも、ISSとか今できているところから続く形で月生まれのムーンチャイルドの話につなげていったりとか、同じようなワザを感じます。
─ ガンプラでも「サンダーボルト版」は独自に発売されています。
マスターグレードのフルアーマー・ガンダムのガンプラは自分でも作ったんですが、装備を全部取って素体として見た時に全体のラインが直線的なところに新鮮さを感じました。『ガンダム』のモビルスーツは、安彦良和さんの「セル画的なキャラクター感」がベースにあるので、それぞれアムロのような、キャラクター性を持っていると思うんです。でも、『サンダーボルト』のフルアーマー・ガンダムは、あくまでも「兵器」として描かれている印象があって、そういうリアルさにグッとくるんですよね!
─ ちなみに『サンダーボルト』に登場するメカでお好きなのは?
最初に登場するビッグ・ガンを装備したザクには「これを出したか!」と思いましたね。ビッグ・ガンみたいなでっかいビーム砲に似たものだと、『Zガンダム』の百式がメガ・バズーカ・ランチャーを持ってましたけど、たいして活躍しなかったですもんね(笑)。モビルスーツに巨砲を装備させてもろくなことがないイメージがあったんですが、『サンダーボルト』のビッグ・ガンでそれが逆転しました。ほかだと、ガンキャノン・アクアも理由はよくわからないけど好きですね。アトラスガンダムは、ちょっと関節が多すぎてどうしても好きになれないんですけど(笑)。
─ パーフェクト・ガンダムについては…?
ビックリしましたね! ダリルがどうやって連邦軍の包囲網を抜けるんだろうと思ったら、ガンダムになって、さらにルナツーでブラウ・ブロを奪うっていう……。まさか『0083』のデンドロビウムみたいになるとは想像もしてなかったし、太田垣さんはあの合体をあらかじめ考えていたんですかね? あれが出るまで鹵獲されたフルアーマー・ガンダムのことなんてすっかり忘れていたけど、「ここでつなげてくるのか!」と思いました。ただ、パーフェクト・ガンダムの動力パイプはいらないんじゃないの? と思ったりもしましたけど(笑)。考えてみると、ザクのアイデンティティですからね。顔はガンダムにしつつ、そこを残したのはいいなぁと思います。ザクみたいなモノアイのガンダムも見てみたかったですね(笑)。
─ そういった意外性も本作の人気のポイントです!
それでイオのほうもリリーとタンデムでパーフェクト・ジオングに乗るという。胸元に連邦のマークがついたジオングってすごいインパクトですよね。そうそう、ダリルがスパルタンを墜とした時も驚きました。ガンダムの母艦ってお話の最後あたりでやられがちですけど、丸裸のサイコ・ザクMk-IIのヒート・ホーク2本で墜としたのは「そんなバカな!」と思いました(笑)。ああいった勢いのある展開はやっぱり連載のライブ感があるからこそできるんだと思いますが、『ガンダム』というルールに縛られがちなコンテンツで、「らしさ」を残しつつオリジナルキャラクターを活躍させるのは本当にスゴいですよ。
■ダリルとイオ、どちらかに肩入れして読みたくない気持ちがある
─ ダブル主人公のイオとダリルについての印象はいかがですか?
イオもダリルも、言っちゃうと両方バトルジャンキーなんだけど(笑)、二人とも人を惹きつける魅力を持っていて、その塩梅がいいですよね。なんとなくダリルのほうがいろいろ苦難があって主人公的というかヒーローっぽいんですが、イオもすごく可哀想な面があって。親友のコーネリアスや恋人のクローディアも敵側になっちゃうし。でも、次第にそんな彼の純粋さがわかる人たちが周りに集まってくることで成長していって。
─ 片桐さん的にはダリルとイオ、どちらに感情移入しますか?
どっちもですね! 両手両足を失ってまでサイコ・ザクに乗って頑張ってるダリルも、エリートの坊ちゃんなのに大事な友人たちを自分の手で失い続けるイオも、どちらかに肩入れして読みたくないという気持ちになるんですよね。ダリルが義手にシュシュを巻いているところに可愛さみたいなものを感じたり、イオがクローディアを殺してしまった時に「ああ、この感じ、ガンダムだな~」と思ったりしました(笑)。また、ライバル同士が通じ合ってる感じがあるのは『ガンダム』らしくていいですよね。シャアとアムロじゃないですが、イオとダリルがお互い意識して高めあいつつ、周囲を巻き込んで大変なことになっていく。これも『ガンダム』ならではですよね。
─ 主人公以外も人間味を感じさせる人物が多いです。
南洋同盟にダリルが加わる時に一緒にドミトリーとかのメカニックの面々がついてきてくれるところとか、泣けますよね。地球の仏像をいっぱい盗んで集めてるガレ中佐みたいな小悪党とか、愛すべきキャラクターもたくさんいて。一方で、連邦軍もジオン軍も腐っているので(笑)、嫌な感じの人がどちらの陣営にもいる構図もたまらないですよね。アニメだとジオンの軍人とか敵対勢力の現場の人たちは純粋な愛国者が多いみたいに描かれがちですけど、その中で派閥があったり政治的な駆け引きがあって、その中から「どうかしてる人」というのも出てくるんですよ。レヴァン・フウを生み出したモニカ大佐とか、エグいことをするババァって感じですけど(笑)、そういうキャラクターが二人の戦いの背景にあって、話に厚みが出ているんですよね。10年以上もそれぞれに立場がある人物を描き分けてドラマを作る、太田垣さんのストーリーテラーとしての上手さには脱帽します。
■魅力的なキャラクターの「いい死にざま」を見せてほしい
─ これから、ストーリーはクライマックスに向けて盛り上がっていききます。
細かなキャラクターの関係がどうなるかはわかりませんが、読んでいる側はみんなキャラクターを愛してますからね。やっぱりいい“死にざま”を見せてほしいです。
─ “死にざま”ですか!?
僕は『ガンダム』をチャンバラものや任侠ものとして観ている部分があって。キャラクターが「どう死ぬのか」っていう“死にざま”が大事だと思ってます。最近は暗い展開のお話って嫌がられますけど、『ガンダム』では最初から人の死が描かれてるし、素直に明るい展開だったりすると「なにか違うような?」と思っちゃうんですよね。『サンダーボルト』のキャラクターたちの行く末は一読者としてハラハラしていますが、物語のラストに向かって、もしイオやダリルが死ぬなら、納得のいく“死にざま”が見られるといいなと思います。
─ 最後にメッセージをお願いします!
とにかく太田垣先生には健康でいて欲しいです! 漫画家って激務ですし、命を削ってやられているでしょうから。イオとダリルの宿命の戦いはどんどん盛り上がるでしょうし、この先が楽しみで仕方ないです。ガンダムファンにとってすごく気持ちがくすぐられる作品ですが、『ガンダム』に触れてこなかった人にも読んでもらいたいですね。ページをめくった時に「うわっ!」と声が出てしまう、漫画ならではのケレン味とダイナミックさ、そして太田垣先生の圧倒的な画力といった魅力が詰まった『サンダーボルト』の面白さをぜひ体感して欲しいですね。
Book/ Volume20+ARTWORKS
決戦の口火を切るのはサイコ・ザク!
マイトレーヤ作戦、始動!!
月面フォン・ブラウン市で束の間の休息を得たイオは、
アナハイム・エレクトロニクス社執行役員アンディー・ウェリントンから
次世代MSを見せられて、迫り来るダリルとの決戦に高ぶる。
一方、ソーラ・レイ奪取を狙う南洋同盟は、巨大MAビグ・ザムを操ってジオン共和国に侵攻。
迎え撃つ構えの連邦軍に対して、遂にマイトレーヤ作戦の火蓋が切って落とされる…!
単行本第20集 通常版
定価:880円(税込)単行本第20集 限定版
価格:2500円(税込)
“モノクロ+銀蒸着”B5ポスターBOOK付き
機動戦士ガンダム サンダーボルト
太田垣康男 ARTWORKS
連載10周年記念!
これまでの歩み、凝縮。
圧巻のフルカラー240ページ!
豪華画集、降臨。
美麗B2判ポスター2枚封入!
太田垣康男氏ロングインタビュー収録
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Present
『機動戦士ガンダム サンダーボルト』連載中
コミック誌「ビッグコミックスペリオール」にて
読者プレゼント企画、実施中!!
月2回刊コミック誌「ビッグコミック スペリオール」では
現在、連載10周年を記念して10号連続×MS10体=計100名
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[12月9日(金)発売号まで]
ぜひ誌面で内容をご確認ください!!
Exhibition&Event
遂にこの“刻”が来た…!
[サンダーボルト]連載10周年を祝して
これまでの歩みをたどる記念展を開催します!!
記念グッズの物販や[サンダーボルト]ガンプラ展示も!
この10年間をお台場に集まって皆で祝おう!!
<会場>
ガンダムベース東京 東京都江東区青海1-1-10 ダイバーシティ東京 プラザ7F
<会期>
9月30日(金)~10月31日(月)
<営業時間>
11:00~20:00(平日)
11:00~21:00(土日祝)
※混雑時には入店制限や整理券対応をする場合がございます。
また今後の情勢により営業時間が急遽変更になる場合もございます。
ご来店前にガンダムベース東京の営業案内を必ずご確認ください。
<入場料>
無料
<アクセス>
Googleマップへ
→ ガンダムベース公式サイト
協力:株式会社BANDAI SPIRITS
プラモデル協力:ホビージャパン
想像してきた“理想の先”を
描いてくれる作品です。