2014.02.15
ビッグオリジナル

いきなりDEEP!『テツぼん』原作者、高橋遠州先生のテツオタ話連載開始!!

【枕木草子】第1回
タイトル通り〝枕木〟の話題かと思いきや、ペンネーム「遠州」に関するエピソードを紹介!

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高橋遠州自画像

 春はあけぼの、というのは清少納言の『枕草子』の有名な冒頭の一節ですが、今全国の鉄道ファンがこの一節をつぶやきながら嘆いています。この春のダイヤ改正で上野と青森を結ぶブルートレイン『あけぼの』がなくなってしまうからです。北海道新幹線が開通すれば上野と札幌を結ぶ『北斗星』も廃止されてブルトレの歴史は幕を閉じます。そのうち「寝台車」という言葉も死語になってしまって「しんだいしゃ」と入力したら「死んだ医者」と変換されるようになるかもしれません……それはないか。

 それはさておき、初めまして。ビッグコミックオリジナルで連載中の鉄道漫画『テツぼん』の原作を担当しています高橋遠州です。「高橋」は本名ですけど「遠州」というのはもちろんペンネームでして、私の出身地である静岡県西部を指す旧国名からとりました。旧国名って何かがあっていいんですよね。私は今の都道府県名よりずっと好きです。戦前は戦艦の艦名なんかにも使われてました。『大和』、『武蔵』、『長門』……いかにも威風堂々とした響きがあります。この伝統は現在の海上自衛隊にも受け継がれていて、海上自衛隊の主力艦にはひらがなですけど旧国名の艦名がつけられています。

 ところで遠州は正確には遠江(とおとうみ)といいます。遠江とは遠つ淡海(おうみ)のある国という意味で、遠つ淡海とは浜名湖のことです(ちなみに近つ淡海=琵琶湖がある国が近江になります)。遠江から上の一字を取って遠州とした訳ですね。こうした○州という別称を用いるところは他にも信濃(長野県)→信州、甲斐(山梨県)→甲州、長門(山口県北西部)→長州、紀伊(和歌山県と三重県の一部)→紀州など多々ありますが、たいていどちらの呼び方も現在でも親しまれていますし、区別なく使われてたりもします。ところが「遠州」と「遠江」だけはそうではなくて、別称の「遠州」の方は全国的にもわりと認知されているのに対し、本来の「遠江」の方はどうも語呂がよくないのか地元でさえもほとんど使っていません。あの森の石松でさえも遠江森の石松とは言いませんよね。遠州森の石松です。地元を走る私鉄も遠江鉄道ではなくて遠州鉄道という社名になってます。まあ私自身も「高橋遠江」というペンネームにはしなかった訳ですし……

 ところがそんな敬遠されがちな遠江という旧国名をあえて用いていたのが旧国鉄でありました。日本全国には何千という駅がありますから、駅名がかぶるということはよくありますが、そんな時に旧国鉄では後からできた駅の駅名に旧国名を冠することで区別するという方法がよくとられました。時刻表の索引地図でJRの駅名を見てもらえればわかりますが、まさにそうした駅が全国に散らばっています。遠江も例外ではありませんでした。かつて国鉄時代に二俣(ふたまた)線という浜名湖の北側を迂回して掛川と豊橋を結ぶ路線がありましたが、この二俣線には『遠江二俣』、『遠江森』、『遠江一宮』、『遠江桜木』といった遠江を冠する駅が並んでいました。ちなみに『遠江森』駅というのはあの森の石松でおなじみの静岡県森町の玄関駅です。当時、既に広沢虎三の浪曲などで遠州森の石松というフレーズはかなり浸透していたにもかかわらず、旧国鉄は遠州という別称を避けて正規の旧国名にこだわった訳です。

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『テツぼん』取材時の天竜浜名湖鉄道の勇姿!
いつ作品に登場するのか、お楽しみに!

もっともその二俣線もその後民営化されて天竜浜名湖鉄道という第三セクターになってしまいましたが、現在では『遠江森』駅から『遠州森』駅に変えられています。森の石松は地元にとっては今や大切な観光資源でもある訳ですから(森の石松の墓がある大洞院という寺があります)まあやむを得ないのかもしれません。更に『遠江二俣』駅は『天竜二俣』、『遠江桜木』は遠江を取ってただの『桜木』にしてしまいましたので、そんなに遠江という名前が気に入らないのかなと思いきや、『遠江一宮』駅は現在でもそのまま遠江を冠したままですからちょっとチグハグです。まあ一つくらいは遠江を残した駅があっても悪くはないですけど。

 前にも挙げた遠州鉄道などははなから遠江は無視して自社路線の駅に遠州をつけまくっています。中にはどことも駅名がかぶらないのにわざわざ遠州とつけている駅もありまして、これはこれでりっぱなこだわりと言えるでしょう。
 以上、そんなこんなで初回は私のペンネームに関するエピソードをご紹介してみました。

 次回は約2週間後を予定しております。お楽しみに!

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『テツぼん』最新第8集絶賛発売中!!

(執筆:高橋遠州 担当:ビッグコミックオリジナル編集部)

関連リンク
ビッグコミックオリジナル公式

【初出:コミスン 2014.02.15】

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