ビッグコミック
2018.05.13
祝『ゴルゴ13』連載50周年!【毎週一冊『ゴルゴ13』】このゴルゴがすごい!【第1回】第1巻「ビッグセイフ作戦」
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それを記念して、コミスンでは、毎週1冊ずつ『ゴルゴ13』の単行本を読み、ゴルゴの魅力や、名シーン名ゼリフ、魅力的な敵キャラクターなど「ここがすごい!」ポイントを紹介! そのダンディズムやプロの流儀を学びたいと思います!
というわけで、第1回は『ゴルゴ13』第一巻「ビッグ・セイフ作戦」!
SPコミックス『ゴルゴ13』(1)ビッグ・セイフ作戦(試し読みもできます!)
ゴルゴ13の全てはここから始まった! その表題作「ビッグ・セイフ作戦」は名作中の名作!
物語の冒頭、西ドイツのハンブルグの娼館で窓の外を見つめるゴルゴが、背後に立った娼婦を、殺し屋としての条件反射で殴ってしてしまうという、あまりにも衝撃的なオープニングシーンから幕を開けます。ゴルゴは一言も喋らないのですが、心に強烈に印象付けられるオープニング。「キャラを立てるっていうのはこういうことか!」と思った人も多いのではないでしょうか。
その後、英国諜報部にあるナチの戦犯の狙撃を依頼されたゴルゴは、難攻不落の"要塞"に潜むターゲットを、思いもつかぬアイデアで狙撃します。
さらに、ゴルゴを利用して別の目的を達しようとする依頼主・英国情報部と、頼まれた狙撃以外は頑としてしないゴルゴの虚々実々の駆け引きもあり、見どころたっぷりです。
その後の50年にわたり活躍し続けている『ゴルゴ13』の魅力が、ギュッと凝縮された第一話は必見です!
しかし、今回はその第1話ではなく、あえて第3話「バラと狼の倒錯」を推したいと思います!!
なんとも意味深なタイトルです。「バラ」と「狼」が「倒錯」してる......って、一体どういう意味なんでしょうか!?
物語は、ゴルゴが、スペインのグラナダで、標的の狙撃に失敗するシーンから始まります。
失敗といっても、ゴルゴが撃ち損じたわけではなく、依頼主から聞いていた時間に、ターゲットとは違う人物がやってきたんですね。依頼人がくれた情報が間違っていたんです。
「ひとつの仕事で おれがスポンサーの前に、二度姿を見せたことはない...説明してもらおうか!?」
再び、依頼人のもとに現れ、詰め寄るゴルゴ。
その依頼人はバラを愛する大富豪。
可愛い一人娘を、「ジゴロ」(いわゆる「女たらし」のことですね)に拉致され、ゴルゴに狙撃を依頼しました。
標的の名は、「黄色いバラ(フォエテイダ)」! 誰も姿を見たことがないという、謎のジゴロです!
ゴルゴVSジゴロ!
謎のジゴロの正体を追って、スペイン・アンダルシア州グラナダから、砂漠を超え、ペルシア(イラン)のイスパハン......
異国情緒をかきたてられる"インスタ映え"しそうな古都や史跡を旅していくゴルゴ。そして、夕日に照らされた古代遺跡の街ペルセポリスで、ゴルゴは敵組織と大銃撃戦を繰り広げます。
ちなみに、直前の第2話「デロスの咆哮」も、エーゲ海・ギリシア神話の太陽神アポロンの島として有名なデロス島が舞台ですが、今日、世界遺産に指定されている地域ばかり。
人類の悠久の歴史や、神話伝説のロマンを感じさせてくれる「舞台」もまた、ゴルゴの魅力。
というのも、連載が始まった1968年は、「海外旅行」が自由化され、東京オリンピックが開催された1964年からわずか4年。当時の読者は、世界を旅するゴルゴに、自らの海外雄飛の夢をかき立てられたのかもしれません。
その後の世界を股にかけたアクション漫画が数多く発表されましたが、その多くは、『ゴルゴ13』の影響を直接的・間接的に受けているのではないかと思います。
ちなみに、1973年の映画『ゴルゴ13』(主演・高倉健)では、ストーリーこそ違いますが、この第3話の舞台となったイスパハン、ペルセポリスが舞台となっています。
さて、このジゴロ「黄色い薔薇(フォエテイダ)」の正体は、大銃撃戦が終わっても、依然、謎のままです。
ある理由によって、世界の全てを憎悪していたジゴロ・「黄色い薔薇」。その正体が明かされるのは、ラスト数ページなのですが、その衝撃の告白に、さすがのゴルゴも「驚愕」の表情を隠そうともしません。
キャラクターがなんともミステリアスで魅惑的、読後に強烈なインパクトを残します。この「黄色い薔薇」を主人公にしたスピンオフ、猛烈に読みたいです!
【今回のプロ&ダンディーな名言】
(1)「おれのうしろに音もたてずに立つようなまねはするな.........」(第一話『ビッグセイフ作戦』より)
やはり、これを外すわけにはいきません。自分の目が届かない点や、弱点になりうる点に常に気配りし、危機管理を気にかけるゴルゴ! そのプロフェッショナルぶりを表したセリフではないでしょうか!
(2)「金庫を爆破するのはことわる。...おれがうけ負ったのは殺しだ。ニセのポンド紙幣はあんたたちで始末するんだな!!」
英国諜報部の女エージェント「キツツキ(ウッドペッカー)」から、標的が保管するニセ札を金庫ごと爆破してほしいと持ちかけられたゴルゴ。
しかし、正義感や人情には流されず、依頼されたこと以外は頑として引き受けません。初期のゴルゴは今より饒舌ですが、このあたりのプロフェッショナルの流儀は変わらない魅力ですね。
次回は、第2巻「檻の中の眠り」より、お届けします!
(文・山科清春)
【初出:コミスン 2018.05.13】
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