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2015.01.11
脚本家・岡田惠和さん「ドラマのセリフを書くときは、原作マンガの世界観とキャラクターに愛情を持って同化したい」◆屋根の上のマンガ読み
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第66回 岡田惠和
《プロフィール》1959年生まれ、脚本家。連続テレビ小説「ちゅらさん」「おひさま」、連続ドラマ「南くんの恋人」「最後から二番目の恋」「泣くな、はらちゃん」などで知られる。1月12日より、自身初戯曲となる「スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~」が公演。
《プロフィール》1959年生まれ、脚本家。連続テレビ小説「ちゅらさん」「おひさま」、連続ドラマ「南くんの恋人」「最後から二番目の恋」「泣くな、はらちゃん」などで知られる。1月12日より、自身初戯曲となる「スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~」が公演。
「マンガ作品を映像化する場合、意識するのはセリフです」
自分の物書きとしての土台は、あだち充さんと高橋留美子さんです。[タッチ]と[めぞん一刻]には、どんな小説や映画よりも影響を受けていると思いますね。
朝ドラの『ちゅらさん』に出てくる一風館というアパートは確実に[めぞん一刻]の一刻館からいただいているし、ヒロインが出会う兄弟の名前は和也と文也。これは[タッチ]からですね。あだちさんの映画的な絵とか、オフな笑い、間の笑いにはかなり影響受けていますし、あの男ふたり女ひとりの三角関係も強く残ってるし。あと[めぞん一刻]における、家族でないものが狭い空間に集まって他人と共生していく感じが好きで。その2作品が自分のなかでは大きい気がしますね。
独特な切なさ
最近の作品では、野村宗弘さんの[満月エンドロール][うきわ]が素晴らしいなと思ってます。[満月エンドロール]は人が死ぬ直前の走馬灯の中の話なんですけど、独特な切なさがあって、いちばん映像化してみたい作品だと思ってます。[うきわ]は「浮気」っていう言葉とかけてると思うんですけど、社宅の隣同士に住んでいる、それぞれ相方に浮気されているであろう男女がだんだん近づいていくという話なんですけど、ベランダにあるべらべらの仕切り越しに会話をするシーンがすごいなと思って、続きを心待ちにしてる状態です。
それと小坂俊史さんのモノローグシリーズ。中央線サブカル的な人が、いったん遠野に行って、戻ってくるという三部作になっているのですが、全部気が利いていて素晴らしい。[中央モノローグ線]は、沿線に住んでる人の話が各駅それぞれ出てるんですけど、「あるある感」があって面白い。自分が中央線三鷹育ちなもんですから。
山川直人さんの版画みたいな絵も好きなんですよね。ガロ的というか、でも難解なわけでもなく、基本けっこう小さい話が多いんですけど。昭和SFというか。昔、薄暗いジャズ喫茶なんかによく置いてあったなーっていう。なんか喫茶店とマンガって昔から同じゾーンのカルチャーだった感じがあって、そこを頑固に続けられてるところが好きですね。[口笛小曲集]もいいのですが、[コーヒーもう一杯]がおすすめです。
[うきわ] ©野村宗弘/小学館
セリフを意識
映像をつくるとき、「マンガ原作」っていうのは若干低く見られるんですけど、「小説原作」と何が違うんだろうっていうのが正直なところですね。むしろ脚本家としては、マンガ原作のほうが実はやりにくい。マンガにはすでにビジュアルがあるから、当然みなさんがイメージを持っていて難しいんです。カット割りみたいに描く漫画家さんもいますからね。
マンガ作品を映像化する場合、意識するのはセリフです。セリフって基本「キャラクター」から出てくるから、その登場人物のキャラクター性と同化できたらセリフは書ける。この人ならこう言うだろうなと。だから僕が、マンガの世界観とキャラクターに愛情を持って同化できたら、たとえ話が変わっててもその人なりのセリフが書けるんじゃないかなと思ってます。マンガの世界を利用して自分のやりたいことやってやろうみたいな空気はあんまり好きじゃないし、やはりそこには愛情がないと、マンガを作られた方に対して失礼だなっていう想いもありますね。
《こんな作品もおすすめしていました!》
[タッチ]あだち充
[フラワーオブライフ]よしながふみ
[きのう何食べた?]よしながふみ
[坂道のアポロン]小玉ユキ
[α]くらもちふさこ
【「屋根の上のマンガ読み」バックナンバーはこちら!】
(取材構成:ビッグコミック編集部、根本和佳 撮影:松原康之)
関連リンク
ビッグコミック公式
【初出:コミスン 2015.01.11】
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