トップ  >  【連載コラム】『テツぼん』原作者、高橋遠州先生のテツオタ話。第11回は鉄道車両の第二の人生のお話!! ( 2014/11/17 )
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2014.11.17

【連載コラム】『テツぼん』原作者、高橋遠州先生のテツオタ話。第11回は鉄道車両の第二の人生のお話!!

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第11回【第二の〝電〟生】






 人間、ある程度長く生きてますと、第二の人生を送ることもあります。職人さんとか農家の方、芸能人のようにその道一筋という人生もいいですけど、それまでとは全く違う世界を生きてみるというのもある意味人生の醍醐味かもしれません。かくいう私自身、ふつうのサラリーマン生活を経て、現在は漫画原作者という第二の人生を送っている訳ですけど、私のことはともかくとして、今回は鉄道車両の第二の人生のお話です。
 日本の鉄道車両はそもそもの作りがいい上にメンテナンスも行き届いているために耐用年数を越えてもまだまだ十分使えるという車両が大半です。しかも次から次へと最新車両が登場するために更新時期が早まって、まだ全然現役バリバリなのに引退を迫られる車両も数多くあります(何となく日本のサラリーマンに似てますね......)。
 一口に鉄道車両と言っても現在は電気で走る〝電車〟と燃料で走る〝ディーゼル車〟に大別されますが、大都会や幹線といった第一線で活躍した後にローカル線で第二の人生を送っている車両の多くは電車になります。そんな電車たちの第二の〝電〟生をいくつか見てみましょう。
 まずはSLたちが第二の人生を送っていることで有名な静岡県の大井川鐵道ですが、ここでは普通車に近鉄や南海、京阪といった関西系私鉄の旧車両が使われていて鉄道マニアたちの人気を集めています。写真はかつて近鉄の特急として使われていた16000系ですが、車体のカラーリングは当時の近鉄特急そのままです。ある程度の年齢の関西人の方なら懐かしく感じることでしょう。シートも特急時代のものがそのまま使われていますがあくまでも大井川鐵道では普通車として走っています。




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大井川鐵道の16000系






 もう一つ、静岡県の鉄道になりますが写真は岳南電車の車両です。この車形を見てかつて京王井の頭線を走っていた3000系だとわかった方はなかなかのものです。渋谷と吉祥寺を結ぶ京王井の頭線はレインボーカラーと呼ばれる七色に塗り分けられた電車が走っていることで有名ですが、この3000系も京王井の頭線を走っていた当時は七色のうちのどれかに塗り分けられていたはずです。この3000系の前には通称"青ガエル"と呼ばれた東急初代5000系(実際の色は緑。静態保存された車両が渋谷の駅前にハチ公像と並んで置かれています)を赤く塗り直した"赤ガエル"が走っていました。下ぶくれの丸っこい車体は何とも愛嬌がありましたが、今はもう完全に姿を消してしまい、ちょっと残念です。




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岳南電車の3000系







 この他ではロマンスカーで知られる小田急10000形が長野電鉄、レッドアローで知られる西武5000系が富山地方鉄道、かつて山手線などで使われた国鉄101系が秩父鉄道と日本全国で第二の〝電〟生を見ることができます。
 しかし第二の〝電〟生は日本国内に留まりません。日本の中古鉄道車両は海外からも引く手あまたで、東南アジアや南米などに大量に輸出されています。特に有名なのは南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの地下鉄で、ここには真っ赤な車体に白帯のカラーリングが印象的な東京メトロ丸ノ内線の車両が100両以上も走っているそうです。『車掌室』や『非常口』といった日本語表示までそのまま残っているそうで、このあたりはラテン系のおおらかさなのかもしれません。もっとも地下鉄そのものの歴史はブエノスアイレスが1913年、東京が1927年とアルゼンチンの方が日本よりも14年も先輩でして、当時の日本人は地下鉄建設のためにアルゼンチンの地下鉄を視察したりもしています。彼らもまさか100年後に東京の地下鉄車両がアルゼンチンで第二の〝電〟生を送るようになるとは想像もしなかったでしょうね。




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(執筆:高橋遠州 担当:ビッグコミックオリジナル編集部)

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【初出:コミスン 2014.11.17】

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