ビッグオリジナル
2014.09.01
【連載コラム】『テツぼん』原作者、高橋遠州先生のテツオタ話。第8回は年に一度の新幹線整備工場一般公開日レポート!!
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第8回【新幹線の工場見学に行ってきました】
私の地元の浜松市にはJR東海の新幹線整備工場があります。現役の工場ですから通常、部外者は立ち入れませんが、年一回「新幹線なるほど発見デー」と銘打たれた無料の一般公開がありまして、今年は7月26日、27日の土日の二日間。地元なのにこれまでなかなか行く機会がなかったんですが、今回は帰省も兼ねて出かけてみました。
広い会場内には猛暑にもかかわらず鉄道マニアとおぼしき人たちがたくさんいましたが(彼らはそもそも暑かろうが寒かろうがやってきますが)、それ以上に目についたのが子どもを連れた家族客でした。おそらく子どもたちの一番のお目当ては〝幸せの黄色い新幹線〟ドクターイエローでしょう。正式名は「新幹線電気軌道総合試験車」、走りながら架線や線路の点検を行う言わば新幹線のお医者さんです。人気の秘密はその真っ黄色いド派手な車体とめったに見ることのできない稀少性にあります。私もこれまでたまたま走ってるところを一瞬目撃したことがあるだけで、じっくりと停まった姿を見たことはありませんでした。
幸せの黄色い新幹線〝ドクターイエロー〟展示場所に行ってみると案の定、黒山の人だかりができていました。ちなみにこのドクターイエローは事前にハガキで申し込んで抽選で当たると車内見学ができますが、何百倍もの倍率だったそうです。私などは最初からあきらめて、今回は真っ黄色い車体を間近でじっくり見られただけでよしとしました。
ドクターイエローを堪能した後、今度は広い工場内に入ってみると、ここも見物客でごったがえしていました。特に何か趣向をこらしているという訳ではないのですが、整備中の新幹線が高々と据えられていてふだんは見られない車体の下がのぞけたり、むき出しの車輪やらモーターやらがゴロゴロ置いてあったりして、我々がふだん乗客として接している新幹線と違い、いかにも生々しくて何とも非日常的です。でもこれって考えてみれば、工場にとっては日常の光景ですよね。そういったところを楽しめるのも工場見学の醍醐味と言えるでしょう。
工場内には整備中の新幹線が!
去年、遠州地方の郊外を走っている天竜浜名湖鉄道の車両基地(有料で一般公開されてます)を取材した時にも感じたんですが、そこも特に何か趣向をこらしているという訳ではなくて、ごくふつうに車両基地としての日常的なことをしているだけなんですが、それがふだん乗客としてしか車両に接していない我々にとってはとても新鮮で非日常的な光景に見えました。
観光列車とか各種鉄道イベントとかもいいですけど、乗客がふだん見られないような鉄道の裏舞台をなるべく生々しい形で見せてあげたら、その方がマニアのみならず一般の方たちも意外に喜ぶのではないかなと思ったりしました。
一般公開の終わった翌日、何となく気になって私はもう一度浜松工場に出かけてみました。そこはもう当然ながらいつもの工場に戻っていました。もちろん部外者は一切立ち入り禁止。柵越しに中の様子をうかがうしかありません。公開期間中あれほど人でごった返していた広い構内はガランとしていて、作業員の人たちがチラホラ歩いているのみ。昨日までの喧噪がウソのように話し声もほとんど聞こえず無機質な機械音がかすかに響いてくるだけでした。私には祭りが終わった後のもの寂しさのようなものが感じられましたが、工場の人たちにとっては又いつもの日常に戻ったというだけなんでしょう。私も又、自分の日常に戻るべく工場を後にしました。
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(執筆:高橋遠州 担当:ビッグコミックオリジナル編集部)
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【初出:コミスン 2014.09.01】
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