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2014.04.10

ラーメンズ・片桐仁さん/「四コママンガほど危険なものはない」◆屋根の上のマンガ読み

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ビッグコミック連載の人気コラム「屋根の上のマンガ読み」をコミスンでもお届け!






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第49回 片桐仁
《プロフィール》1973年生まれ、コメディアン、俳優、彫刻家。小林賢太郎と結成したコントユニット「ラーメンズ」として、舞台公演を中心に活動している。2014年4月11日から29日まで、舞台『海峡の光』(東京・よみうり大手町ホール)に出演。








「作家の意図を離れてアートになる瞬間が好きなんです」






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 スピリッツはずっと読んでて、[伝染るんです。]とか[クマのプー太郎][じみへん][サルまん][江戸むらさき特急]とか、ギャグマンガ全盛のあのへんがすごく好きだったんですよね。高校生のときがちょうど[伝染るんです。]の1集が出たぐらいで。なんだこれはと。装丁から何からふざけきってるじゃないですか、何もないページが入ってたりとか。[伝染るんです。]が好きすぎて、真似して描いてましたね。ちょうど美大を受験するころだったんですけど、まわりは絵のうまい人ばかりなので、自分にギャグマンガの才能があったらなあとか思いました。でもあれこそ危険ですよね。四コママンガほど危険なものはないと思います。自家中毒に陥るというか、自分をどこまで信じられるかっていう厳しい道なんです。お笑いもそうですけど、お客さんが笑ってくれなかったら負け、支持してくれなかったら不正解。オリジナリティーがあって、面白くて、なおかつわかるっていうものを作らなきゃいけない。これは危険ですよ、本当に。





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[伝染るんです。]©吉田戦車/小学館







作者が見えてくる






 ギャグマンガ考える人って哲学者みたいなところがあって、面白いと自分で分析すればするほど冷めていく。でも、冷静じゃないと描けないと思うんですよね。冷めた状態で、これがこう面白いでしょ、私はこういうの好きですよというのを見せていくというのを何年もやって。そこで、作家が読者を楽しませるために描いていたはずが、作家の意図しないものになっていく、アートになる瞬間ってマンガにはあって。それを含めて、作っている人間が見えてくるのがマンガの良さだと思います。しかも僕と変わらない普通の人間が描いてるって知るわけじゃないですか。一番尊敬しますよね、職業として。
 [ハレンチ学園]もアートでしたね。第一部の最後、皆殺しじゃないですか。エロ描写がPTAから問題視されて批判されて、そこで永井豪さんという作者の人格が出てくるんです。一生懸命作った世界を自分で壊していったりとか、メタ構造みたいになってきちゃうとか。[デビルマン]の終わり方もショックすぎて、思わず本を隠しましたね。忘れられない衝撃です。
 榎本俊二先生だと[えの素]。下ネタの向こう側といいますか。ちんこを取られて、取られたちんこがほかの家で生活しちゃって、そのちんこを迎えにいくみたいな話があって、もうエロじゃないじゃないですか。着地点がめちゃくちゃなんですね、毎回。





ヤンキー嫌いなのに......






 僕、野球マンガ好きなんですよ。今だと[グラゼニ]が面白いですね~。あれもプロ野球選手という偶像が、完全なる普通の人間になりますからね。プロ野球選手ってお金持ちで、一生安泰じゃないのって思ってたのに、全然違う。10代で大人にさせられて、20代終わりでだいたいクビになって、引退して別の人生を歩まないといけないんですけど、プロ野球選手以上の輝きって絶対無理じゃないですか。
 ヤンキーマンガもなぜか好きなんですよね。[ろくでなしBLUES]とか[疾風伝説 特攻の拓]とか。嫌いな人たちのジャンルですね。ヤンキー、嫌いですから。狩られる側だったから。でも、けっこう体育会系なんですよね、ヤンキーも。上下関係厳しいとか、功績あげて上に行くとか、こういう恰好しちゃいけないとか。アウトローなのに。組織になってくると仕切らなきゃいけないから、ちゃんと規律を守ったりして。え、それは大変ですね、ヤンキーなんじゃないの?って(笑)。そういうの聞くとね、急に人間味が見えてくるじゃないですか。なんか好きなんですよね。独特のアニキ感みたいなのがいいんでしょうね。縦社会で。あれに憧れてるのかなと思いますね。






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《片桐仁さんのおすすめ作品》

 [伝染るんです。]吉田戦車

 [えの素 完全版]榎本俊二

 [新装版 デビルマン]永井豪、ダイナミックプロ

 [グラゼニ]森高夕次、アダチケイジ

 [ろくでなしBLUES]森田まさのり






《こんな作品もおすすめしていました!》
 [ぷりぷり県]吉田戦車
 [土竜の唄]高橋のぼる
 [アイアムアヒーロー]花沢健吾
 [はじめの一歩]森川ジョージ
 [おれはキャプテン]コージィ城倉





■次回予告:第50回 堀江貴文(実業家)

マンガへの新しい入り口を求めて

書評サイト「マンガHONZ」を立ち上げた堀江さん。

花沢健吾氏[ルサンチマン]が、マンガ好きのみならず

バーチャルリアリティ産業界にも与えた影響などを語る!!

<4/25(金)更新予定>






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(取材構成:ビッグコミック編集部・根本和佳(DAN)、撮影:松原康之)

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【初出:コミスン 2014.04.10】

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