トップ  >  第12回ヤングスペリオール新人賞結果発表! ( 2024/11/01 )
ビッグスペリオール

2024.11.01

第12回ヤングスペリオール新人賞結果発表!

ビッグスペリオール

特例!入選1本!審査員賞2本ほか、輝く才能続出!!!!

入選 賞金30万円+本誌23号(11/8売り)掲載

『ホテルニューヨーク』

丈夫 大(じょうぶまさる)│35歳

■ストーリー

「私達はただ帰り道が一緒だっただけ。」かえちゃんとしーちゃん。小学3年生からの幼馴染の2人だが、中学生になるにつれその関係性も変化し…… バスとホテルを舞台に描く、繊細で幻想的な叙情譚。

●津村マミ氏講評

話のテンポが絶妙で、かえちゃんしーちゃんの関係性も微笑ましく最後まで楽しく読ませていただきました。しーちゃんとお母さんの関係性もクライマックスで少し救いがあったように感じられて良かったです。話のアイテムであるバスやホテルを上手く使いこなしていたと思います。

●山口貴由氏講評

完成している。自分の持ち味と何を省略すれば作品の世界を保てるのかが分かっているのだと思う。人生の応援歌ではなく、誰かの孤独に寄り添うという姿勢が絵とぴったり合っている。

 

津村マミ氏審査員賞 賞金30万円+本誌24号(11/22売り)掲載

『カラッポな場所』

目ノ下 三(めのしたさん)│18歳

■ストーリー

「そもそも田舎は腐っている」東京から地方へと引っ越してきた主人公・颯太(そうた)は、小学校の校庭のベンチで世界を睨みながら悪態をつく。田舎の空気感を瑞々(みずみず)しく切り取った、独白対話劇。

●津村マミ氏講評

優しい雰囲気が溢れた漫画で癒されました。ひねくれている颯太くんですが嫌味がなくて可愛らしく見れるのも作者さんの技かと思います。宇多さんも良い表情をしています。良作なショート漫画を読ませていただきました。

●山口貴由氏講評

大抵の漫画家は男性と女性を描きわけてしまう。女性はまつ毛が長く瞳が大きいとか輪郭線とか。でもこの作品はそうした部分は同じに描かれている。そこが凄く良い。コマを読み進めていくうちに声や柔らかさの違いが伝わってくる。

 

山口貴由氏審査員賞 賞金30万円+本誌24号(11/22売り)掲載

『月の目を見る』

宮内海渡(みやうちかいと)│25歳

■ストーリー

絵を描くことでしか自分を表現することができず、周囲からも浮く主人公・巳月(みつき)。彼女の盗撮に熱中する憎めない友人・黒岩。「母親の絵を描く」という課題に対して2人は…⁉︎ 才能と友情の感情ドラマ。

●山口貴由氏講評

冒頭7 ページでキャラクターを伝えたのは技量がある証。人物の目が読み手の方をがっつり見てくるのが力強いし、やや前のめりで目を合わせてくるのも魅力。雑誌の中に紛れても、この作者の絵だとわかるのはプロとして有利。

●津村マミ氏講評

次へ次へと読ませる画力や話の展開力がある漫画でした。ただ最後、(魅力的なキャラクターなだけあり)黒岩さんは感情を表現できたことで少しは救われたのか、彼女の今後がみえづらく読み切り漫画と考えるともう少しスッキリ感が欲しかったです。

 

佳作 賞金20万円

『りゅうりゅうしんく』

糸川 駆(いとかわかける)│24歳

■ストーリー

ペットの爬虫類を溺愛する彼氏と同棲して3年。主人公・泉さんは、嫉妬で爆発し、彼に自身の秘密を告白してしまう。自分が「龍」だということを…⁉︎ 鮮やかで切ない異種族恋愛譚。

●津村マミ氏講評

価値観の違いについてのお話を龍の女の子と人間の男の子で魅せるのは面白かったです。“自分の行動は間違ってて悠介くんを傷つけてたと解って泣いてしまう泉さん”の見せ場を、モノローグの雰囲気で流してしまったのが勿体ないなと思いました。

●山口貴由氏講評

尻尾のある彼女を受け入れる彼氏だが、異類である彼女の価値観は受け入れ難い。彼女は彼氏の価値観に擦り合わせる努力を決意する。僕が思ったのは、100 年を一瞬と考える彼女の感受性こそ龍の魅力ではないかと。時に冷たく感じることもあるが時に優しく感じられることもあるはずだと。

 

佳作 賞金20万円

『ノット・ゴッドファーザー』

近江顕彰(おうみけんしょう)│29歳

■ストーリー

絵の道に進むことを諦め、風俗嬢として働く主人公・李華。体も心も崩壊してゆく日々の中で、自分の人生を否定した厳格な父親に、遺影を描いて欲しいと頼まれて…

●津村マミ氏講評

最後ゴッドファーザーなお父さんが可笑しくて良かったし、李華ちゃんに遺影をお願いするシーンも泣きそうになりました。李華ちゃんがなぜ実家に帰ろうと思った(思えた)のか、帰った目的はなんなのかそれとも意味なく帰ったのか、そこが解りやすいと見せ場がもっと盛り上がったかもしれません。

●山口貴由氏講評

主人公は性風俗産業で働いているし汚部屋に住んでいるのだが、作品の中では清楚な印象。
その理由が質感の省略という絵の描き方に頼るところが大きい。消臭された絵で表現するならもっと壮絶なトラウマを描いても読み手はついて行けると思う。

 

佳作 賞金20万円

『ドラマツルギー』

たてこ│22歳

■ストーリー

ただ可愛くて、強くて、人を救える「特別」な存在になりたかった主人公・すず。地下アイドルとして若さを切り売りし、理想の自分になれない彼女の、リアルで切実な人生の叫び。

●津村マミ氏講評

ドラマツルギーを題材に少ない言葉でよくまとめていると思いました。1人の女の子(すずちゃん)の心の葛藤の描き方も仮面を使って工夫があったと思います。ただ主人公が自己完結しているせいか、盛り上がりに欠けるストーリーになってしまっていると感じました。

●山口貴由氏講評

アイドルと所属事務所の社長とのやり取りがとてもリアルで、新川すずという人物が「いる」と思わせてくれた。そこが素晴らしい。だが彼女が作られた自分に疑問を抱き、シンガーソングライターを目指す選択や詩の内容が凡庸に感じる。特別な輝きを持つための通過儀礼を済ませた者の決意の眼差しが見たかった。

 

佳作 賞金20万円

『月経ちんちん』

ガチンコバトル│23歳

■ストーリー

「ママがちょんぎらぁ、パパのちんちょぼ。」娘である自分に性的DVを繰り返している父親のことを相談した時に、母親がそう言い放った。壮絶で絶望的な人間黙示録。

●津村マミ氏講評

最初のつかみはダントツです。なかなかグロい内容でしたがデフォルメな絵のおかげで最後まで読むことができました。こんなに読んでいる途中で気分が悪くなる漫画は今までで初めてだったのですが(褒めてます)、最後はスカッとする不思議な魅力がある作品でした。

●山口貴由氏講評

健全に機能していない家庭の一幕、DV父に対する妻と娘の報復なのだが、何か霊長類とは別の哺乳類の生態を見せてもらったような荘厳な趣きがある。エラーではなく自然の理(ことわり)で相方や子孫を噛み殺してしまう野生動物は少なくない。そんな光景に触れたような感動があるのだ。

 

奨励賞 賞金5万円

『それ逝け!呪ラオケ死ンガーズ』

加藤 青(かとうあお)│30歳

●津村マミ氏講評

笑毎(えま)ちゃんも響ちゃんもそれぞれ最初から最後まで生き生きと元気の良い印象でした。その分ストーリーのメリハリに欠けてしまっているようにも感じました。舞台が賑やかなイメージの“カラオケ”であったことも余計にそう感じてしまったのかもしれません。

●山口貴由氏講評

歌うことを楽しむことより、その場を盛り上げることを第一に考えるパリピなカラオケ観 に元気をもらえた。一見、雑に見える絵はノリと勢いを殺さないための調理法なのだろう。丁寧に描くことで失う瑞々(みずみず)しさがある。

『いの中の蛙』

やち坊主│33歳

●津村マミ氏講評

独特な世界観で作者さんの熱量が1ページ1ページから伝わってくるようなそんな漫画でした。ただ度々、ことわざで言い表したり言葉の言い回しが独特であったりした為(それがこの作品の特徴でもありそういう描き方の発想も面白いと思うけれど)少々読み解く難しく大変でした。言葉の意味がわからないとせっかくの感動や面白さも伝わりづらくなってしまいます。

●山口貴由氏講評

カラーアニメ映画にしたら素晴らしいと思う。草木、台風、洪水、魚、水中、坂道、自転車、どんなものでも勇敢に挑み絵にしてしまう。描くことに躊躇しない姿勢は一流の絵師だ。一方で登場人物が読み手である僕と目を合わせてくることは無かった。そこはまだ臆病なのかな。

 

編集長総評

第12回ヤングスペリオール新人賞は良作の揃った回となりました。ご応募ありがとうございました。今回、丈夫 大さん『ホテルニューヨーク』を「入選」としました。応募の際にはなかった賞ですが、大賞には届かないまでも審査員お二人の評価も高く、審査員賞と同じくらいの評価をしてもよいのではないかということで入選となりました。個別作品の講評については審査員お二人のコメントとインタビューをご覧ください。各作品コメントは先輩作家から新人作家への厳しくも優しい応援歌だと思います。一言一言を大切に受け取って次に繋げて頂ければと思います。
編集部としては、個別作品の出来栄え、完成度についても審査していますが、それと同じくらい、どこか1ページ、あるいは1コマでも、その作家だけがもっている「輝き」を探しています。一瞬の輝きの奥にある作家のポテンシャルや個性を見ています。スペリオールは表紙に「価値観ゆさぶるオモシロさ!」と銘打っていますが、それは作家の個性が純度高く発揮されたときに爆発すると思っています。トレンドや流行ではなく、作家個人の爆発、マンガは爆発です。次回から新人賞を「スペリオール新人作家大賞」としてリニューアルし、大賞に連載権をつけたのも「作家の爆発」=「作家の個性」を大切にすることを強く進めて行きたいと考えたからです(詳しくは募集ページを)。今回、審査員を務めて頂いた津村マミさんも本誌新人賞のご出身ですし、その他多くの方がスペリオールの新人賞から連載デビューされています。多数のご応募をぜひお待ちしております。(編集長・寺澤)

 

次回の新人賞は、「スペリオール新人作家大賞」にリニューアル!

審査員は押見修造先生です。以下のページでご覧いただけます!!↓

>>第1回スペリオール新人作家大賞 詳細はこちら