ビッグコミック
2018.10.09
祝『ゴルゴ13』連載50周年!【毎週一冊『ゴルゴ13』】このゴルゴがすごい!【第15回】第15巻「モスクワ人形」
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さいとう・たかを先生の普及の名作『ゴルゴ13』は、今年で連載開始50周年という記念イヤーでもあるので、ちょうどいいタイミングなんですね。本企画では、まだ『ゴルゴ13』を読んだことがないという方に向けて、本作の面白いエピソードを単行本ごとに紹介していきます。
第15回目となる「ここがすごい!」ポイントは、ゴルゴのダンディズムとプロの流儀がさく裂する、第15巻「モスクワ人形」より「アクシデンタル」ピックアップ!
SPコミックス『ゴルゴ13』(15)モスクワ人形 (試し読みもできます!)
物語の舞台となるのは、中東・イスラエルにあるアカバ湾から、紅海への出口となるチラン海峡。「アクシデンタル」というタイトルからも察するに、ゴルゴの身に何か起きそうな予感がしますね......。
エピソードによっては、なかなか姿を現さないこともあるゴルゴですが、今回はさっそくの登場。ダイバー装備に身を包み、無駄なく素早い仕草で狙撃の準備に取り掛かります。
静かな水面に浮かぶボート上のターゲットを狙い撃つゴルゴ! しかし、響くのは銃声でも悲鳴でもなく、「カチン」という不発音......。これにはゴルゴも、通常の2倍以上に目を見開き驚きを隠せません。プロフェッショナルの代名詞ともいえる存在のゴルゴですが、ミスファイア(不発)をしてしまうことに。
ところ変わって、エジプトのラムゼス広場。ゴルゴは依頼人には2度会わないというルールを破り、仕事の延期を申し出ます。嫌ならばキャンセルしてもかまわないとも。
事情を聞いた依頼人たちは、不発弾ごときでなぜ作戦を放棄しなくちゃならないのかと慌てて尋ねますが、ゴルゴは「......一発の不発弾が、時には敗北を招く......」とクールに返答。限りなくゼロに近いはずの不発弾混入という「アクシデント」が発生し、プロとして原因の究明をするというのです。
さて、ゴルゴは自ら用意した武器を密輸しようとしますが、厳戒化した中東情勢をかいくぐるためには、次のチャンスまで時間が足りない。そこで依頼人が紹介したのは、カイロ・シティにある「ペルシャ人の店」。ここで片腕を亡くした店主からFN・FAL小銃と弾丸100発ほかを買い上げたゴルゴは、店主からパンとワインをおまけでもらい、仕事の成功を祈られます。
店を出た後に、敵側のイスラエル勢力に襲われるゴルゴたち。見事にかいくぐったゴルゴは、再び依頼を受けることを承諾。その後、イスラエル側は、見事にど真ん中を撃ち抜かれた標的マークを発見します。100発の銃弾のうち、80発を正確無比に試射することで残りの20発の中に不発弾が混入する確率を限りなくゼロにする方法をとっているのだと、長年ゴルゴのことを調べているという博士が断定。そこまでして不発弾を避けているわけなので、混入したということは誰かの意図あってのこと......。
博士たちイスラエル側はゴルゴに仕事を辞めるように要求。銃の無い状況でハッタリとも思える手法で切り抜けたゴルゴでしたが、自ら仕事はキャンセルすることを告げて去っていきます。そんなゴルゴが向かった先は、武器を用意した店主のもと。片腕の店主は、ゴルゴを一流のプロと見込んで、ほんの好奇心から不発弾を忍ばせたと自白します。そんな店主に下したゴルゴの決断とは――? 徹底的なまでにゴルゴのプロフェッショナル魂がさく裂するエピソードの結末を、ぜひその目で確かめてみてください。
【今回のプロ&ダンディーな名言】
ゴルゴといえば、その後ろに立ってはいけないということも有名ですが、普通の人がかわすやり取りすらも拒みます。先ほどご紹介したエピソード「アクシデンタル」には、こんな一幕が。
「......あいさつは親しみ合った人たちの間でかわすものだ.........」
どのくらい親しくなったらあいさつできるのか気になりますが、大事な利き腕を相手に預けることをしないというのも、納得できますね。ちなみに同15巻に収録されているエピソード「残光」にも、こんなシーンが。
体育館で運動中のゴルゴは、転がったボールをとろうとして後ろに回り込まれるのを嫌って、ガラの悪い兵士たちにからまれます。こちらでも、敬礼をするどい眼光で無視。堂々としたゴルゴの魅力を感じることができる場面となっています。
次回は第16巻「九龍の餓狼」より、お届けします!
(文・加藤真大)
【初出:コミスン 2018.10.09】
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