トップ  >  第9回ヤングスペリオール新人賞結果発表! ( 2023/10/05 )
ビッグスペリオール

2023.10.05

第9回ヤングスペリオール新人賞結果発表!

ビッグスペリオール

才能集まる特異点! スペリオールの旗手となれ!

大賞 賞金100万円+掲載権

大賞 『わたしひとりの部屋』 

udn│茨城県

■ストーリー

「ずっと恥ずかしいよ。当たり前がなんにもできなくて──」
大学四年。就活に失敗した。行きたかった会社も、興味のない会社もぜんぶ落ちた。焦りや虚しさを抱え、ゲームにばかり時間を費やす日々…

●金城宗幸氏評

心情の切り取り方、セリフチョイスが秀逸。コマ割りも面白いし、光るものがいっぱい詰まってる。欲を言えば、ラストのゲーム世界とリンクする主人公のシーン、もっとやっていい。めちゃくちゃにするシーンを、もっと読みたいと感じました。

●池上遼一氏評

生きとし生ける者は、いつの時代にも厳しい現実が支配している。その中で現実を生きる若い女性が感じる虚無や焦燥感がありのままに描かれており、救いがない。しかし、この女性の生き方に共感する人が多いのかもしれない。時代の感受性に強く、非凡な才能を感じる。

 

 

審査員賞 賞金30万円+掲載権

審査員賞『リョータとリョーコとマーモット』 

吉田屋敷│32歳│東京都

■ストーリー

リョーコは弟が嫌いだ。母に似て二重なのも、目が大きいのも嫌い。自分と同じ一重の父も嫌い。美人の母親はもっと嫌い。そんな彼女が、家族で動物園に行くハメに。そこで、マーモットをめぐり弟と言い争いになり・・・!?

●金城宗幸氏評

文句なしに面白かったです。アニメ観てるみたいだった。見開き連発、気持ちよかった。ご自身の絵の特性と、キャラと物語の規模感とのバランス感覚が抜群に良いです。早く連載勝ち取って、アニメ化して、売れてください。

 

 

佳作 賞金20万円

佳作『あの時はありがとう』 

嶋田卓也│27歳│福岡県

■ストーリー

主人公は小学3年生。明日の授業参観を控え作文の宿題が出る。テーマは「家族」。だが、彼女に作文に書けるようなあたたかな家族はいない。ふと点けたテレビの中に自分とは対極にあるような家族の姿を見つけた彼女は…!?

●池上遼一氏評

家庭の事情とはいえ、朝食、夕食を一人で食べねばならない一人っ子の小学生の淋しさは、たとえようもない。その心境を女の子なりに表現するシーンの健気さに思わず涙してしまう。そしてその後の救いのある出会い・・・独特の画風が女の子の心象風景のように見える。

 

佳作 賞金20万円

佳作『運命だと思ってた』 

奥灘幾多│27歳│東京都

■ストーリー

入学したての高校で、男っぽさを感じさせない黒須君に好意を抱いたミサ。ラブレターを渡そうとしたタイミングで黒須君からラブレターをもらい、運命を感じる。しかし交際が始まると、彼女の中で違和感が次第に膨らんでいって…!?

●金城宗幸氏評

大好物です。こちらの性癖が開発される、素晴らしい作品でした。9pの「そんなの関係ないよ!」のとこ芸術点高いです。こーゆーのを待ってました。はやく連載を勝ち取って、世界の誰かの性癖をバキバキにブチ開いて行ってください。

 

 

佳作 賞金20万円

佳作『お盆の上』 

中村明日建│26歳│東京都

■ストーリー

毎年お盆の頃になるとやってくるあの人。しみもしわも増えて、いつの間にかおばあちゃんになった私に会いに。お盆は、二人にとってかけがえのない時間。あの人がまた帰ってしまうまで、今年は何を話そうか?

●池上遼一氏評

夫に先立たれた孤独な老婦人の願望が具現化する話だが、ありえない現象に何の違和感もなく読めるところに作者の工夫が感じられる。寂寥感の中のユーモアがあり、味わい深い作品となっている。

 

 

奨励賞 賞金5万円

奨励賞『月下の恋人』 

丹月 啓│39歳│東京都

奨励賞『掃除の時間』 

平野ジュウイチ│32歳│東京都

奨励賞 賞金5万円 努力賞 賞金1万円

奨励賞『椿髪』 

em│福岡県

奨励賞『かいころす』 

ナシウヒカ│23歳│東京都

●編集長総評

 今回は大賞のほか審査員賞1本、佳作3本、奨励賞3本、努力賞1本と“豊作”の回となりました。数ある新人賞の中からスペリオールの新人賞にご投稿いただいた皆様、審査員を引き受けて下さった池上遼一先生、金城宗幸先生に厚く御礼申し上げます。

 udnさんの『わたしひとりの部屋』は、ストーリーにあとひと展開ほしいという評価だったにもかかわらず、大賞受賞となりました。主人公の描写に抜群の現実味や切実さがあり、他の作品を圧倒した結果だと思います。大学4年生で就活に失敗し、アルバイト先でも辛い扱いを受ける…こう書くと厳しい現実を突き付けられた若者の典型例とも受け取れて、なんの特徴もなくなりますが、なぜ『わたしひとりの部屋』は印象に残ったのか?

 クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』でナチスの将校を演じ、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した俳優のクリストフ・ヴァルツが役作りについて、「“悪者”というのは言葉にすぎない。それはキャラクターではない」。俳優がすべきことは、この男はどんなことをしたら“悪者”に見えるかを考えることだ、ということを映画のパンフレットで語っていました。さらに、ある海辺に転がっている平均的な小石は?と聞かれたら、その海辺の小石を全部集めて重さを測り、その数で割ってみようと思うかもしれないが、俳優はそういうアプローチではなく、どの小石を拾ってくれば、その海辺の小石を表すことになるのか、その一石を見つけるのが役作りだというようなことも語っていました。

 漫画もこれに似ていると思います。具体的にどのようなシーンを描くかによって、「どこにでもいる若者」は「そこにしかいない厳しい現実を生きる主人公」になる。

 『わたしひとりの部屋』は印象的なシーンがいくつもありましたが特に、たった100円玉1枚でバイト先の社員から自分を試されてしまった主人公のやるせなさを描写したシーンに胸を打たれました。とても面白かったです! 主人公を「そこにしかいない主人公」にした素晴らしいシーンでした。

 必ずしも派手な出来事だけでなく、日常の何気ないやりとりでも自分の心が動けば、創作のヒントはあリます。AIと創作は今後、切っても切れない縁となるでしょう。先のヴァルツの話はもしかしたら、集めて割って(学習して)平均を出すやり方がAI、一石を見つけるのが人、ということになっていくのかもしれません。世間ではなく、自分の心が動いた瞬間がより貴重で大切になると思います。新人賞の結果発表を行ったスペリオール13号では、以前にヤングスペリオール新人賞で佳作を受賞された木村きこりさんの新作読切を掲載しました。本誌にて『住みにごり』連載中のたかたけしさんもヤングスペリオール新人賞への投稿から即連載となりました。スペリオールは新人の方にも大きく門戸を開いておりますし、デビューの機会をできるだけ多く作っていきたいと思っております。第10回もすでに受付中です。沢山のご応募を心よりお待ちしております。(編集長・寺澤)

 

次回の新人賞の詳細は、以下のページでご覧いただけます!!↓

第10回ヤングスペリオール新人賞
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