トップ  >  奇跡のアニメ化!硬く、重く、冷たいようで熱い...太田垣康男『機動戦士ガンダム サンダーボルト』/アニメ評論家・藤津亮太のアニメな?マンガ【第2回】 ( 2015/12/29 )
ビッグスペリオール

2015.12.29

奇跡のアニメ化!硬く、重く、冷たいようで熱い...太田垣康男『機動戦士ガンダム サンダーボルト』/アニメ評論家・藤津亮太のアニメな?マンガ【第2回】

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原作の映像化や、その逆のコミカライズなど、近年とても密な関係にある漫画と映像作品。でも、メディアが違えば表現方法やその内容も変わってくるもの。アニメ評論家・藤津亮太氏ならではの切り口で、アニメやドラマ、映画と関りの深い作品を紹介する漫画レビュー。観てから読むか? 読んでから観るか!? 第2回のレビュー作品はこちら......!






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『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男 原案/矢立肇、富野由悠季






『機動戦士ガンダム サンダーボルト』は硬くて、重く、冷たいようで熱い。硬くて重いのは登場するモビルスーツの存在感。冷たいようで熱いのはドラマ。最新刊の第7集もその通りの内容だった。




 題材となっているのは、人類の多くがスペースコロニーに住むようになった『機動戦士ガンダム』の世界。『サンダーボルト』は第4集までが宇宙を舞台にした第一部。第5集から第二部が開幕している。
 第一部は宇宙世紀0079年12月の出来事。スペースコロニー・サイド3がジオン公国を名乗り仕掛けた独立戦争も終結が見えつつあった。地球連邦軍は、ジオン軍にとって重要な補給線であるサンダーボルト宙域を制圧しようと進軍する。ジオン軍は連邦軍に対し狙撃を仕掛け、連邦軍の進軍を許さない。連邦軍のパイロット、イオ・フレミングとジオン軍のダリル・ローレンツはこの最悪の戦場で邂逅を果たす。そして第二部は戦後の地球が舞台。こちらは地球連邦の弱体化に乗じて独立を謀る南洋同盟と連邦軍の秘密作戦が縦軸。イオは、連邦軍のパイロットとしてアトラスガンダムに搭乗。一方ダリルもまたかつて搭乗したサイコ・ザクの行方に絡んで、南洋同盟との接点があった――。




 本作にはさまざまなモビルスーツが登場する。太田垣康男独自の解釈で描かれたモビルスーツはアニメで描かれるモビルスーツとも、プラモデルのモビルスーツとも異なりかなり非常に個性的。そんな個性的な機体のモビルスーツが宇宙で、地上で、水中で、ハードなバトルを繰り広げる。
 たとえば第5集でダリルが操るアッガイと、それを追う南洋同盟のジム改陸戦型(フロート装備)のチェイスでは、窮地のダリルがまさかのアイデアで反撃をする。第7集では、陸戦型ガンダムに乗ったイオが、サブフライトシステムと協力して、想像を絶する空中戦(しかも肉弾戦)を展開する。機体の性能と己のパイロットとしての技量を極限まで振り絞っての殺し合いは、まさにガチンコの言葉がふさわしい。このあたりの殺陣の魅力は、ロボットものというより格闘マンガの延長で読んだほうがわかりやすかもしれない。




 そしてドラマ。第一部は「勝つためにはなんでもやる」という全編を貫く戦場の論理に圧倒される。命を燃料に戦うような激しさは、冷酷を越えた不思議な熱狂を帯びていた。そして第二部。第一部で宿敵同士だったイオとダリルが、それぞれ南洋同盟が隠し持つサイコ・ザク(と脳波コントロールを行う技術「リユース・サイコ・デバイス」)を求めて行動を始めている。7巻までは静かな緊張を孕みながら、それぞれの熱い戦闘が進行してきた。果たして二人の直接対決はいつ、どんな形で果たされるのか。




 12月25日からアニメ版も配信スタート。第一部を全4話でアニメ化するという。『機動戦士Ζガンダム A New Translation』でシリーズ演出を手がけた松尾衡監督の下、高谷浩利、仲盛文、中谷誠一という強力な作画陣が、『サンダーボルト』の世界を見事に描き出している。実は純粋にマンガ発の『ガンダム』がアニメ化されるというのは本作が初。アニメのストーリの先が気になるなら原作をどうぞ。





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『機動戦士ガンダム サンダーボルト』第7集 太田垣康男 原案/矢立肇、富野由悠季
(ビッグコミックスペリオール連載)




南洋同盟に奪われた「リユース・P・デバイス」を巡って激化する、連邦とジオン残党を含めた三つ巴の争い。そんな中、連邦と同盟がついに開戦! 白兵戦の中、イオが目にした衝撃の光景とは...!?

宇宙世紀0079年のサンダーボルト宙域で死闘を繰り広げた、イオとダリルのライバル物語は、0080年の地球を舞台に、第3勢力「南洋同盟」を交え、より激しいものに...!!

第7集では、ついに連邦軍と南洋同盟が本格的に開戦。よりスケールの大きくなっていく戦いの行方と、続々と登場する新デザインのモビルスーツにご注目ください!!



オリジナルストーリーのガンダム漫画作品としては異例のアニメ化も実現!!
12月25日より【第1話】が、ガンダムファンクラブ、バンダイチャンネルをはじめとする各種動画配信サービスでセル版(EST)、レンタル版(TVOD)が販売開始しています。

単行本第7集[限定版]には、豪華特典(第1~5話初期ネーム集、メタル仕様イラストカレンダー)と併せて、2016年1月31日までの期間限定でアニメ【第1話】を無料視聴できる「プレミアム STREAMINGカード」を同梱!!

『機動戦士ガンダムサンダーボルト』特設サイト







(文:藤津亮太)

1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメゼロ年代アニメ時評』がある。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜に「アニメの門チャンネル」でアニメの楽しみ方を紹介するネット番組を行っている。






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機動戦士ガンダムサンダーボルト 1 太田垣康男
機動戦士ガンダムサンダーボルト 2 太田垣康男
機動戦士ガンダムサンダーボルト 3 太田垣康男
機動戦士ガンダムサンダーボルト 4 太田垣康男
機動戦士ガンダムサンダーボルト 7 太田垣康男


【初出:コミスン 2015.12.29】

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